[日本と韓国の交差点] 韓国地方選挙、「事前投票制度」で投票率向上目指す

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6月4日は、韓国の地方選挙の投票日である。市長または都知事、教育監、区長、地方議会議員(市議会、区議会など)などを選ぶ選挙で、投票用紙が7枚もある。

 韓国では今回の地方選挙から、全国単位で初めて「事前投票制度」を導入した。これに伴い、従来の不在者投票制度は廃止する。事前投票は、不在者投票と同じく、本来の投票日に自分の住所地にある投票所で投票ができない人のための制度である。しかし不在者投票と違い、事前投票はとても楽に投票できるようにした。


 不在者投票は、投票日の28日前までに、中央選挙管理委員会に郵便で申し込む。郵便で届く投票用紙を持参して、滞在先の不在者投票所で選挙日6日前に投票する。不在者投票所は、役所と一部の大学が当てられていた(2013年は413カ所)。主に、徴兵で軍にいる軍人や大学進学のため都市にいる大学生、警察官、障害のある人や長期入院している人、選挙管理委員会の職員が利用していた。不在者投票は28日前には申し込まないといけないため、投票日の直前になって急用ができた場合は投票を諦めるしかなかった。


 一方、新たに導入された事前投票は、事前の申し込みは必要ない。選挙日直前の金曜と土曜日の2日間(今回は5月30~31日)、朝6時から夕方6時まで全国どこの事前投票所でも、身分証を持っていくだけで投票できる。事前投票所の数は全国3506カ所に及ぶ。役所に限らず、仁川空港など人が集まる場所にも事前投票所を設けたので、旅行に行く前に空港で投票できるととても好評だ。


 日本の期日前投票制度は、選挙期日の公示日または翌日から投票日前日まで、選挙人名簿に登録されている市区町村と同じ市区町村の役所・役場にある期日前投票所で投票する。韓国は選挙人名簿を地域別ではなく全国統合選挙人名簿で管理しているので、全国どの事前投票所でも投票できる。


投票率を高める効果


 韓国は投票日が臨時公休日となるので、6月4日は休日だ。6月6日も公休日(顯忠日)なので、6月5日に休暇を取れば4~8日まで5連休になる。


 6月6日は顯忠日(ヒョンチュンイル)といって、日本による植民地支配から独立するために戦い亡くなった人や、朝鮮戦争で亡くなった軍人を追悼する日である。この日は半旗を掲げ、騒いだり派手なことをしたりするのを慎む。クラブでも静かな曲しか流さない。最近は、顯忠日が本来持つ意味を忘れ、ただの休みの日としか思わない若い世代も多い。


 このため今回の地方選挙は、連休の影響で投票率が史上最低になるかもしれないと懸念する声があった。しかし事前投票制度の導入により、連休でも投票率低下を食い止められそうだ。


 中央選挙管理委員会が公開した5月30~31日の事前投票率は11.49%、2010年地方選挙の不在者投票率は1.87%だったので、かなり高い数字を記録した。年齢別に見ると、20代が15.97%、30代が9.41%、40代が9.99%、50代が11.53%、60代以上が12.22%だった。20代が最も多いのは、軍人と警察官の事前投票率が高いためと見られる。


 2010年の地方選挙における最終的な投票率は54.4%だった。中央選挙管理委員会は今回、事前投票率が高かっただけに、2010年より5ポイントほど高い60%を目標としている。



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2014年6月3日



趙 章恩=(ITジャーナリスト)



日経パソコン

 



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