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ソウル市は8月から、午後1~6時の間で1時間、市庁職員が昼寝をしてもいいことにした。職員の午後1時以降の業務効率を高めるための制度である。政府機関が公式に昼寝タイムを導入するのはこれが初めてなので、韓国で大きな話題になっている。
ソウル市は、職員がゆっくり昼寝できるよう睡眠室を設けることにした。「短時間でも確実に休んで仕事に集中できるようにしたい」というパク・ウォンスン ソウル市長の指示によるものだという。これまでは、昼休みになると机にうつぶせになって昼寝をしたりする職員がいた。だが、これは逆に不便で疲れる。
眠いのを我慢するより、短い昼寝をした方が能率が良くなる、という説は日本の厚生労働省も認めている。日本の厚生労働省は2014年3月、『健康づくりのための睡眠指針』を11年ぶりに一新した。睡眠指針は、「午後の眠気をやりすごす短い昼寝でリフレッシュ。仕事や生活上の都合で夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合、 午後の眠気による仕事の問題を改善するのに昼寝が役に立つ。午後の早い時刻に 30 分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善につながる」とした。
韓国でも色々な医療機関が「午後の眠い時間に無理して働くと、仕事のミスにつながるだけでなく心臓血管にもよくない影響を与える。少し昼寝をして体の調子を整えた方が仕事の能率が上がる」と指摘してきた。ソウル大学病院精神健康医学科の医師らも、「脳も休憩が必要である。現代人はストレスを受けた方が仕事のパフォーマンスが良くなるとして過労となる傾向がある。過度なストレスは健康に良くない影響を与える。少し昼寝をすることでストレスを軽減できる。脳にとっての休憩は寝ること、いつもしている仕事とは関係ない遊びやおしゃべりをすることである。脳は休憩することでさらに活発に動く。これからは社員の脳を休ませるのが企業の競争力の根幹になる」として、「企業のリーダーは社員を働かせることだけでなく、どう休ませるかも考えないといけない」とアドバイスした。
外資系企業の事例を紹介する報道が続々
韓国メディアは、ソウル市の昼寝タイム導入をきっかけに、社員の昼寝を認める企業や海外の事例を紹介し始めた。「東京には短時間利用できる睡眠室『お昼寝カフェ』がある」「午後は社員が一斉に昼寝をするIT企業がある」など、日本の事例を紹介する記事もあった。韓国にはサウナの仮眠室やチムジルバン(健康ランドのようなところで、お風呂の他に睡眠できる床暖房のオンドル部屋がある施設)はあるが、短時間利用できる昼寝カフェのようなものはまだないので、「日本は面白い」というコメントが多く寄せられた。
外資系企業の韓国オフィスでは、既に業務時間中に昼寝をしたり、ゆっくり横になって休憩したりするスペースを設けているところが多いようだ。韓国メディアは社員をうまく休ませる企業は業績も良いと紹介している。
韓国メディアは全体的に韓国の労働環境を以下のように評価する。「韓国人の労働時間は年間2092時間に上り(2012年時点)、OECD加盟国平均の1705時間より387時間も多い。効率よりも会社に何時間いたのかを評価する雰囲気がある。サービス残業も多く労働時間は長くなるばかりである。昼寝タイムを導入すれば社員は少しでも休めるので、健康被害も減る」。
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