[日本と韓国の交差点] 韓国2015年からコメ市場全面開放を決定

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韓国政府は2015年1月1日からコメ市場を全面開放する。現在は年間40万9000トンのコメを義務的に輸入するだけでよいが、2015年からは輸入する量の限度がなくなる。韓国政府は輸入コメに対する関税の修正案を決めて2014年9月末までにWTOに通知し、2014年末までにコメ輸入関連の法律を改正する。WTO加盟国の中でまだコメ市場を全面開放していないのは韓国とフィリピンだけだった。

 韓国は1986~94年の関税と貿易に関する一般協定(GATT)のウルグアイ・ラウンドの交渉で農産物市場を開放した。しかしコメだけは例外で、一定量を無関税で義務的に輸入することを条件に開放しなかった。WTOが決めたコメの義務輸入量は1994年には5万1000トンだったが、2014年には40万9000トンに増えた。

ミニマムアクセス拡大よりも関税引き上げが得策

 韓国政府は、「韓国のコメ市場開放の猶予期間が2014年末で終わる。コメ市場を開放せずにおくためには義務輸入量を今の2倍に増やす必要がある。それよりはコメ市場を開放して、韓国のコメ産業を発展させるきっかけにすべきである」と説明する。人口1人当たりの年間コメ消費量は、1980年には132キログラムだったが2013年には67キロに減少した。コメの消費は少ないのにコメの義務輸入量が増えると、消費しきれずコメの価格が下がるなど韓国のコメ農家にとって大きな負担になる。

 韓国政府は、コメ市場を全面開放しても輸入コメに高い関税を賦課すれば問題ないという立場だ。農林畜産食品部(部は省)は2015年から、今まで無関税だった義務輸入量分には5%の関税を、それを超えた分に対しては300~500%の関税を賦課して韓国産コメより価格を高くすることを検討しているという。農林畜産食品部は関税の根拠について、「韓国産コメの価格は中国産の2.1倍、米国産の2.8倍高いので、関税が300%以上であれば、輸入コメの価格の方が高くなるので大丈夫」と説明した。

 韓国政府の報道資料を見ると、「韓国より先に1999年コメ市場を開放した日本は、コメ1キロ当たり341円の関税を賦課したことで輸入コメの価格が高くなり、輸入量は少ない。市場を開放したことでコメの義務輸入量も年間75万8000トンだったものが68万2200トンに減った」と書いてある。コメ市場を全面開放しても関税を高くすれば韓国産コメの販売量が減ることはないという説明だ。

 韓国政府は、いざとなれば特別緊急関税(special safeguard)を賦課すればいいとしている。コメの輸入が急激に増えた場合、直近3年間の平均輸入量を超えた分にはさらに高い関税を賦課できる。

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By 趙 章恩

日経ビジネス
2014年9月8

-Original column

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