「韓国スマートヘルスケア最前線」 Samsungの医療機器事業、救急医療分野への特化を打ち出す [2014年11月05日]

.

韓国Samsung Electronic社は今、注力事業として掲げる医療機器事業の中でも、救急医療分野に特化する姿勢を打ち出し始めた。同社 医療機器事業部のチョ・スイン社長は2014年9月に韓国で行われた講演で、「インターネットにつながり持ち運びできる救急医療分野に特化したい」と語った。

 先進国で使われている高度な医療機器の分野では、既に米GE Healthcare社、ドイツSiemens社、オランダRoyal Philips社が市場シェアを確保している。一方で、新興国では中国の医療機器メーカーの存在感が高い。

 こうした状況に対してチョ・スイン社長は、「(韓国の医療機器メーカーは)世界の先進企業に追い付く前に中国企業に追いかけられ、世界市場で居場所がなくなるかもしれない。韓国の医療機器産業の発展は遅れているが、我々が持っている技術を応用すれば、他の国にはない医療機器を作れる」と発言。伝統的な医療機器よりも、ディプレイやネットワーク技術を生かした救急医療機器で勝負するとした。

Samsung Electronics社の新しいレントゲン装置「GM60A」
[クリックすると拡大した画像が開き


スコットランドの救急車に採用

 救急医療分野に関してSamsung Electronics社は、救急車の中で超音波検査をし、その映像を医師に送信できる移動型超音波検査器や移動型X線CT(コンピューター断層撮影)装置、救急車の中で血液検査をして医師にデータを送信できる移動型血液検査器を持っている。このうち移動型血液検査器は、スコットランドの救急車に採用され、急患を助ける時間と費用を節約できることが立証された。

 さらに、Samsung Electronics社の新しいレントゲン装置「GM60A」は、患者がレントゲン室に行って撮影するのではなく、レントゲンを病室や手術室に持って行って撮影できるようにした。レントゲンの映像品質はそのまま、持ち運びできる移動性を追加したことで急患を助けるのに役立つと見られる。

 最近では韓国でも、試験的に救急隊員に「Google Glass」を装着させている。病院にいる医師に患者の映像を送信して、より早く適切な処置を採るためだ。韓国では病院側も積極的に新しい技術を取り入れようとしている。

 ITなど新たなテクノロジーと医療を融合したヘルスケアや医療機器市場は急成長すると話題にはなっているものの、Samsung Electronics社をはじめとする韓国勢はまだこれといった実績を残していない。救急医療分野への注力は、その突破口を探ろうとする動きの一つと言えそうだ。


By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」

日経デジタルヘルス
-Original column
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20141104/386539/?ST=ndh

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *