[日本と韓国の交差点] 秋の風物詩?それとも迷惑?銀杏の臭い対策に取り組むソウル市

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東京にはイチョウの木が多い。「都の木」もイチョウだ。実は、ソウルにもイチョウの木が非常に多く、ソウル市も「市の木」にイチョウを採用している。ソウルにいても東京にいても、銀杏の臭いで秋の到来を感じる。

 今年のソウルは春から夏にかけて雨が少なかったせいで、イチョウの葉がいつもより10日ほど早く黄色くなり始めた。それに応じて、悪臭も例年より早くたち始めている。銀杏の黄色い実を踏まないよう気を付けて歩かないといけないので、イチョウの木があるところではみんな下を向いて歩いている。

 ソウルをはじめ韓国全土にイチョウの木が多いのは、公害や病虫害、火に強く、寿命が長いので街路樹に適しているからだ。ソウル市とその周辺の首都圏の人口は約2500万人、人口の半分が首都圏に密集しているだけに、公害から都市を守るためにもソウル市の街路樹はイチョウがぴったりなのだ。ソウル市や山林庁の資料によると、1986年10月に行われたアジア大会と1988年9月に行われたオリンピック大会の際に、ソウルの街を秋らしくきれいに見せるためイチョウの木をたくさん植えたそうだ。

 さらに、韓国国立山林科学院の調査によると、胸高直径 20cmのイチョウの木1株が年間約147Kgの二酸化炭素を吸収し、約107Kgの酸素を生成するという。ソウル市のオープンデータサイトで検索してみると、2013年末時点でソウル市の街路樹は28万4498株あり、このうちイチョウは11万4198株を占めた。その割合は40.1%で、種類別に見て最多だった。

 街路樹には、銀杏を落とさない雄株を植えるのが一般的だが、雌・雄の識別はイチョウの木を植えて15年以上経たないと難しいという。そのためソウル市内には雌株も多い。2011年になってやっと、イチョウの葉から雄株にだけ存在するDNAを識別する「イチョウの性鑑別DNA分析法」を韓国山林庁が開発し、植えて1年未満の苗木の性別も判別できるようになった。これ以来、人通りが多い道路沿いには雄株を、公園や山には雌株を選別して植えられるようになった。

ソウル市が雌株の植え替え政策を推進

 ソウル市は2014年4月、ソウル市の中心部に植えられている雌株のイチョウすべてを雄株に植え替える計画を発表した。地面に落ちた銀杏がクルマや歩行者に踏み潰されると悪臭が発生する。これが強すぎて生活に支障を来すほどの地域もある。銀杏の臭いで困っているという苦情の多い地域、バス停前や地下鉄駅の出口付近など歩行者の多い地域から順に進める考えだ。銀杏を見て雌株の位置を正確に把握することが計画の第一歩である。

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By 趙 章恩

 

日経ビジネス

2014年10月6

 

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141006/272200/

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