[日本と韓国の交差点] 日本のベストセラー『嫌われる勇気』が韓国でもバカ売れ

2014年の話題作として日経ビジネスでも取り上げられた『嫌われる勇気』が韓国でも5週連続でベストセラー1位になった(関連記事「『嫌われる勇気』を持てば、幸せになれる~対人関係に悩まない生き方~」)。『嫌われる勇気』は日本で出版された当初から「日本でベストセラーになっている」と韓国でも話題になった。2014年11月に韓国語版が出版され、今年2月あたりから販売部数が伸び、著者の岸見一郎氏と古賀史健氏が3月に入って韓国を訪問したことで再び火が付いた。

 韓国の新聞、週刊誌、女性ファッション誌、テレビ番組、ラジオなどあらゆるメディアが韓国語版の『嫌われる勇気』の書評を掲載し、若者に一読を勧めた。韓国では「~する勇気」という言葉が流行語になり、「勇気」に関する本が次々と書店に登場している。『嫌われる勇気』が紹介した心理学者アルフレッド・アドラーが提唱する個人心理学を取り上げる新聞の特集記事やテレビ番組も続出した。

 3月14日には地上波放送のSBS(ソウル放送)がニュースの時間に「嫌われる勇気、アドラー心理学に熱狂する人々」と題した特集を、EBS(教育放送)ラジオが『嫌われる勇気』の内容を精神科医が解説する2時間番組を放送した。ケーブルテレビ局のMBN(毎日経済新聞)も「嫌われる勇気を持つこと」についてニュースの時間に大きく取り上げた。韓国最大手新聞の朝鮮日報も同日、『嫌われる勇気』の著者インタビューを大々的に掲載し、アドラーの心理学について紹介した。

 『嫌われる勇気』の著者である岸見氏と古賀氏が3月11~13日に韓国を訪問し、抽選で選ばれた読者向けにサイン会や講演を行った。定員300人の有料講演会はあっという間に受付終了。SNSは抽選に落ちて嘆くつぶやきで埋め尽くされた。著者講演会を主催した韓国最大手書店のキョボ文庫はあまりの反響に驚き、講演内容を別途紹介すると読者らに約束したほどだ。

30~40代の女性の間で特に人気

 『嫌われる勇気』は嫌われてもいいから自分勝手にしろとか、人に嫌われろという内容ではない。「自分のことをよく知り自分から変わろう、幸せになるために勇気を出そう」「人生は他者との競争ではない」「人の期待を満たすために生きてはいけない」というのがテーマだ。

 韓国の読者は、この本が発するメッセージに共感している。
「自分の悩みのすべてがこの本に書いてあって驚いた」
「他人が下す評価に落ち込むことはない、自分らしく生きる勇気を出そうと応援してくれる本なので好き」
「この本の内容に100%賛同するわけではないが、自分の人生がうまくいかないのは親のせいだと思っていた自分を反省した」
「子供に読ませたい」

 朝鮮日報によると、『嫌われる勇気』は20~50代の幅広い世代に読まれている。中でも30~40代の女性に人気だという。仕事も結婚も育児もがんばっている30~40代の女性は、みんなに対して良い人でいたい、がんばっていることを認められたい、その一心で努力するが結局うまくいかず人間関係に悩むことが多いからかもしれない。

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By 趙 章恩
 日経ビジネス
 2015年3月17
-Original column

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