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韓国で4月24日、全国民主労働組合総連盟の主導で、各界の労働組合――金属労働組合、運輸労働組合、建設労働組合など――が一斉にストライキを実施した。6月まで続く韓国の春闘の始まりである。
同日午後から、組合員約1万人(韓国メディア推算)が集まり、ソウル市庁前広場で集会を開いた。全国16都市でも同組合員が集会を開いた。同連盟は全体で、組合員の3分の1に当たる26万人が参加したと発表した。これほど大規模なストは3年ぶりである。農民や自営業者団体もストを支持する声明を発表した。
今回の総ストライキは、政府が進める労働市場構造改革案に反対している。同改革案は、雇用主が労働者をより容易に解雇できるようにする措置を含むものだ。現在の労働環境の何が問題なのだろうか。
公務員や専門職――医療関係者、教師、大学教授――らは「教育や命よりお金を優先する成果主義賃金制度の導入をやめるべき」として総ストライキに参加した。彼らは、組合員が一斉に休暇を申請する方法でストを行った。24日に組合員の総会を開く、といった方法を取る組合もあった。教師や公務員がストに参加すれば解雇すると政府省庁が発表したからだ。
経営側が従業員を容易に解雇できるようにする目論見
全国民主労働組合総連盟は総ストライキを行う理由として次の4つを挙げた。(1)韓国政府による労働市場構造改悪を阻止する――政府は、雇用主がより容易に労働者を解雇できるようにし、より少ない賃金で働く非正規職をより多く生み出そうとしている。(2)公務員年金の改悪を阻止する。(3)最低賃金を時給1万ウォン(約1100円)、月給209万ウォン(約23万円)にする。(4)すべての労働者の労働基本権を保障するため勤労基準法と労働組合法を改訂する(非正規職が差別されている問題を解決する)。
(1)について。雇用労働部(部は省)は、「雇用主は労働者に対して職務・勤務地・賃金など勤労条件の変更を要求できる。労働者が変更を拒んだ場合、条件付きで解雇できる」という内容の一般解雇ガイドラインの導入をもくろんでいる。現在の勤労基準法は、会社の経営上の理由や懲戒処分など正当な理由がある場合にのみ、手続きを経て従業員を解雇できるとしている。
全国民主労働組合総連盟のハン・サンギュン委員長は4月22日CBS放送(基督教放送)のラジオ番組に出演し、以下のように主張した。「韓国の企業は今でも、経営上、必要として大規模なリストラを自由に繰り返している。一般解雇ガイドラインは企業に『解雇免許』を与えるようなもの。雇用労働部は労働組合の存在意義をなくそうとしている」。
加えて、雇用労働部は、就業規則――採用や人事、解雇などに関する会社内の規則――を雇用主が自由に変更できるようにすべきとしている。例えば「雇用主から見て成果を上げられなかった人は解雇し、その分若い人を採用すればいい。青年失業問題を解消できる」という立場を取る。
現在は、労働者側が不利になるよう規則を変更する際には、労働組合または従業員過半数の同意が必要だ。全国民主労働組合総連盟は、「就業規則を労働者に不利な方向へ労働組合の同意なく変えることは認めない。労働者を守るのが労働組合の役割である。」として反発している。
(2)について。韓国の公務員の給料は会社員に比べて安い。ただし、退職後、亡くなるまで年金をもらえる。政府は、公務員の毎月の給料の7%を天引きし、それに政府の予算を足して年金を積み立てる。しかし、高齢化により公務員年金を受け取る人が増加する一方、納付する人は減っていることから、赤字に陥っている。政府予算をさらに補てんして運用せざるを得なくなった。
政府は補てんにかかる財政負担を減らすため、公務員の年金支給額を減らす改革を実施しようとしている。公務員らは、給料から天引きして積み立てた分は年金を払えと反対している。
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