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韓国教育部(部は日本の省に相当)が8月27日に発表した「2015年教育基本統計」によると、4年制大学に在籍する学生数は約211万人(2015年4月時点)で、前年同月の約213万人から約2万人減少した。この数は、1970年には約15万人だったものが1990年には100万人に到達。2010年には200万人を突破し、なお増え続けていた。
大学に在籍する学生の数が減少したのは、教育部が1965年に統計を作成し始めて以来、初めてのことである。韓国メディアは「奇異な現象が起きた」「史上初めて大学生の数が減った」と大々的に報道した。
4年制大学を出ても就職できない
教育部は大学生が減少した理由は2つあると分析する。一つ目は少子化による人口減少、もう一つは就職難である。4年制大学を出ても就職が難しいことから、高校を卒業してすぐ就職する学生が増えたとの見方だ。高卒者の大学進学率は2009年の78%から2015年の71%に減少している。
4年制大学を出ても就職はますます厳しくなっている。統計庁によると、2015年7月時点で大卒20代の51%が親と同居し、親からお小遣いをもらって生活する「カンガルー族」だという。1年以上求職活動をしたにもかかわらず就職できず断念した人は、統計を取り始めた2014年1月の24万人から2015年7月の49万人に増えた。
韓国でも高校を卒業してまず就職し、経済的に余裕ができたら大学に進学するという考え方が広がっている。また、大学進学ではなく就職を目指す特性化高校(商業高校・農業高校といった職業教育を行う高校)、マイスター高校(工業高校・IT高校など産業界と連携し授業を行う高校)に進学する学生も少しずつ増えている。
大学生のさらなる減少を見込み、大学をリストラ
教育部は2018年から高校卒業者が減少し、大学生も減少すると見込み、2014年から大学のリストラを始めた。高校卒業者は2013年の63万人が、2023年には40万人に減少する見込みなので、それに合わせて大学の入学定員を56万人から40万人に減らすのが教育部の目標だ。実際には3年前倒しで大学生が減少し始めたので、大学のリストラを一層強化する見込みである。
教育部の大学リストラは、大学をA~Eの5段階にランク付けし、Aレベル以外の評価点数が低い大学は入学定員を減らすとともに、政府からの補助金も減らす。教育部は、学生も補助金も減った大学は経営を断念するしかなく、自然に大学の数が減ると見込んでいる。評価点が最も低いEレベルの大学は新入生に対して奨学金を支給することも、学資を融資することもできないようにする。
ただし、外国人留学生の人数は制限しない。教育部は大学が外国人留学生専用の講義を開設することを許可、複数の大学が外国人留学生専用の寮を共同で運営することも認めた。
こうした政策の影響なのか、韓国の大学に在籍する外国人留学生は2015年4月時点で約9万人、前年比約6000人増加した。留学生の国籍は中国が62.6%と最も多く、ベトナム4.6%、モンゴル3.9%、米国3.0%、日本2.6%が続く。
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