[日本と韓国の交差点] 国慶節にらみ韓国版ブラックフライデー開催

.

2014年11月に行われた米国のブラックフライデーセールは韓国中が大騒ぎになった(関連記事米国の「ブラックフライデー」に沸く韓国消費者)。ブラックフライデーは11月第4週目の金曜日のこと。米国ではこの日からクリスマスセールが始まる。大騒ぎになったのは、米国のショッピングサイトで家電や洋服などを購入して韓国に海外配送してもらう方が、韓国で購入するより断然安い――という逆転現象が起きたからだ。

 そして今年はなんと、韓国政府が「韓国版ブラックフライデーセール」を企画した。企画財政部(部は日本の省に相当)は9月22日に「コリアブラックフライデー推進計画」を発表し、セールを行うよう韓国の大手流通業に対して協力を要請した。

 コリアブラックフライデーセールは、10月1日から2週間の予定。韓国中のデパート、免税店、ショッピングモール、アウトレット、ディスカウントショップなど、全国の小売店2万6000店舗が参加し、大々的にセールを行っている。国慶節の連休を利用して韓国を訪問する中国人観光客の爆買いを狙った企画だ。もちろん、韓国全体の消費を伸ばして内需を復調させる目的もある。

 しかし、政府の発表から10日間しか準備期間がなかったため、メーカーは参加せず、流通事業者だけが参加することになった。何を安く売ればいいのか、セール品目をめぐり、流通事業者とメーカーの間でトラブルなどが生じた。このため、流通事業者だけが自社の販売手数料を安く抑える形でセールを実施することになった。割引幅が大きくないので、本当に盛り上がるだろうか、懸念する声もあった。

 企画財政部は、地域ごとにある市場の流通業者にもコリアブラックフライデーセールに参加するよう求めていた。開始から2日目に当たる10月2日になって、中小企業庁の担当者が全国に200以上ある市場を訪問し、「コリアブラックフライデーセール宣伝用の垂れ幕や懸賞イベントにかかる費用として500万ウォン(約55万円)を支援するので申請せよ。その代わりセールは7日以上続けないといけない」と説明して回っているそうだ。当然、市場で働く人々からは「今からではセール品目を用意できない」と不満が漏れ、セールをする店舗としない店舗に分かれるようになった。

3大デパートは20%を超える売り上げ増

 米国のブラックフライデーセールは企業が自ら行う安売り。定価から7~8割を割り引く商品もあるため人気が高い。消費者はみな、「買わないと損をする」と考えている。一方、コリアブラックフライデーセールは政府の指示でやるしかないセール。果たして消費を伸ばす効果はあるのだろうか。

 今のところ、効果は出ている。複数の韓国メディアによると、韓国の3大デパートである、ロッテデパート、新世界デパート、現代デパートの売り上げが伸びた。ロッテデパートは10月1~3日の売上高が前年同期比23.6%伸びた。特に靴、バッグ、アウトドアファッションがよく売れた。同社は創業者の長男と次男の間で起きた経営権紛争が「ロッテ王子の乱」と報じられ、ビジネス以外の面で注目を集めていたが、ブラックフライデーを機にイメージの挽回を狙ったようだ。どのデパートよりも積極的に値下げし、セール品目も豊富に用意した。

 新世界デパートは10月1~3日の売り上げが同36.7%伸びた。衣類、ジュエリー、時計が特によく売れた。現代デパートはおなじ期間の売上高が同27.6%伸びた。現代デパートも衣類、雑貨などファッション部門が好調だった。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年10月5
-Original column

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *