[日本と韓国の交差点] 司法試験がないと鳶が鷹を生めなくなる?

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 この頃、韓国を騒がせているのはロースクールである。韓国の法務部(韓国の「部」は日本の「省」)は12月3日、「2017年に廃止が予定されている司法試験を2021年まで継続。廃止するかどうかは2021年以降に決める」と発表した。

 司法試験は、普通の人にはあまり関係なさそうな存在だ。だが、法務部のこの発表を受け、韓国社会が揺れに揺れている。ロースクールに通う学生らは退学届を出して法務部に抗議。ロースクールの教授らは司法試験の出題委員になることを拒否。大韓弁護士協会は法務部長官に辞職を求めると騒ぎ始めた。

 専業主婦向けの料理コミュニティにおいてすら、「司法試験を残すべきか、司法試験を廃止してロースクールを修了した人だけ弁護士試験を受けるようにすべきか」を巡り、熱い議論が繰り広げられている。韓国は教育熱の高い国だけに、いずれ自分の子を弁護士に、と思っている母親が多いせいかもしれない。

司法試験と弁護士試験の二本立て

 韓国では2009年から法学専門大学院(ロースクール)の設立が始まった。これを受けて、2012年以降、法曹人になるために2種類の試験が行われている。1つは「司法試験」。大学で法学関連科目を35単位履修した人なら誰でも受けることができる。もう1つは「弁護士試験」。ロースクールを修了した人だけが受けられるものだ。弁護士試験はロースクール修了生ならだれでも合格できるレベルだという。

 法務部が司法試験を維持したいと言い出したのには、ある世論調査が影響している。法務部が成人1000人を対象に電話調査したところ、司法試験を続けるべきという意見が85.4%に上った。国会議員の7割も司法試験を継続すべきと答えた。法務部はロースクールがまだ完全には定着していない、すなわち公正だと認められていないので、司法試験を廃止するかどうかを改めて検討するという。

 法務部が「まだ完全には定着していない」と言う理由の1つに、ロースクールを取り巻く「縁故」問題がある。法務部が新方針を発表する数日前、野党・新政治民主連合の議員が、ロースクールで落第した自分の子供をなんとかしようと大学に押しかけ影響力を行使したとして問題になった。

 某国立大学の総長の娘がロースクールを修了する前に大規模法律事務所から内定を得たという報道も注目された。本来ならロースクールを卒業し弁護士試験に合格してからでないと内定は得られない。この女性は、その後、弁護士試験に落ちたため、内定も取り消しになった。そのほかにも、こんな報道が相次いでいる。大規模法律事務所にいる新人弁護士の7割は父親が法曹人か大手企業の役員、医者、教授だ。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
-Original column

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