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韓国の新聞は1月18日、台湾出身の韓流アイドル「ツウィ(本名:周子瑜)」が起こした旗騒動が台湾の総統選挙に大きな影響を与えたと一斉に報じた。台湾出身で、韓国と中国で活躍する女性アイドルが、テレビ番組の収録中に台湾の旗を持っていた。その行為が中国、韓国、台湾を巻き込む大問題に発展している。
ツウィは、新人韓流アイドルグループ「TWICE」のメンバーで、現在16歳。TWICE は、韓国の大手芸能プロダクションJYPが、中国市場で売り出すべく2015年秋に企画したユニットだ。
韓国の地上波放送MBCが2015年11月に放映した番組「マイリトルテレビジョン」の収録前、番組スタッフが演出のため出演者らにそれぞれの出身国・地域の旗を手渡した。ツウィは台湾の旗を手にしていた。
韓国では、ツウィは台湾出身だから台湾の旗を手に取るのが当たり前だと思われ、何事もなく番組は放映された。マイリトルテレビジョンは、インターネットで先行して放送。これを録画・編集した番組を2週間後にテレビで放送している。編集の過程で、ツウィが台湾の旗を手に持っている場面はカットされ、テレビには映らなかった。この編集は旗を問題にしたからではなく、単に放送時間を短くするためのものだった。
ところが2016年1月8日、台湾が中国から独立することに反対する台湾の芸能人や中国のネットユーザーがインターネット上での放送に目を留めた。ツウィが台湾の旗を手に持つ場面をキャプチャーした画像に、「台湾の独立を支持するなら中国で活動するな」といった内容の文字が書きこまれたものがSNS経由で拡散した。そして、16歳のアイドルに「台湾の独立を支持する政治活動家」というレッテルが貼られることになってしまった。
中国のネットユーザーは反発。TWICEはもちろん、JYPに所属する他のアイドルも中国での活動をやめるべきだと主張するようになった。韓国の芸能界にとって中国は莫大な額のギャラを払ってくれる大事な市場である。
誤った発言と行動をお詫び
JYPは1月15日、自社のホームページや中国語のSNSに、ツウィが謝罪する動画を掲載した。ツウィは一人でカメラの前に立ち、「中国人として海外で活動しながら、誤った発言と行動を取り、会社と両岸(中国と台湾)のネットユーザーを傷つけてしまいました。申し訳ありません」「中国での活動を中断して反省します」「中国は一つ」「私は中国人であることを誇りに思います」などと謝罪の言葉を述べた。
JYPの代表であるパク・ジンヨン氏も同日、「傷ついた中国のファンの皆さんに心から謝罪する」という内容の謝罪文を発表した。
「(台湾の旗を手にすることが)どれほど深刻なことなのか社内で誰も理解していなかった。申し訳ない」
「ツウィは13歳の時、親元を離れて韓国に来た。親代わりである私がよく教えるべきだった」
「韓国と中国の友好関係と両国の文化交流に寄与するため努力する。ツウィは反省している」
「この事件によって影響を与えてしまったパートナー会社との関係を上手く解決していきたい」。
などなど、中国ファンの機嫌を損ねないよう精いっぱい謝罪の言葉を書いた。
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