韓国の物価がどうもおかしい。日本も原材料やオイルの値段が高騰したことから食料品の値上げが続いているが、韓国の物価の上がり方も尋常ではないのだ。
小麦粉の値上がりによって、ラーメンやお菓子が10~20%ほど値段を上げており、最も安い外食メニューだったジャージャー麺(韓国ドラマによく登場する黒い豆板醤をかけた中華麺)も10年前には2500ウォンだったのが、今では4500ウォンに上がった。野菜やお肉なども毎月値段が15~20%ずつ値上げされている。ほかにも、ガソリン代は1リットル当たり150~160円なのにまだ値段が上がり続いているし、地下鉄運賃は1000ウォン(10年前は350ウォン)になった。芸能界では、韓流ブームの影響で俳優のギャラも高騰している。
韓国銀行が発表した今年3月の生産者物価指数は昨年比で8%上昇し、IMF経済危機のあった1998年と変わらない状況となっている。統計庁の3月の消費者展望の調査結果では、景気の先行きに対する期待度を表す消費者期待指数が、先月よりも3.4ポイント下落して99.7となり、約1年ぶりに100を下回った。期待指数が100を下回ると、今後6カ月間の景気や家計状況が今よりも良くなると答えた人よりも、良くならないと回答した人の方が多いことを表す。不動産バブルがまだ根強く続いていることから、1998年のIMF経済危機の頃と比べると絶対に景気は良くなるという楽観的な意見もあるにはあるが、今の物価急騰がいつまで続くのか予想もつかないといった雰囲気が大勢を占めている。
このように経済の先行きが不透明なのに、VIPよりもさらにワンランク上の超VIP向けメンバーズサービスが流行しているだの、子供の文房具を有名ブランドでそろえる親が少なくないだの、高額の私立幼稚園に入るためにまだ胎児のときから入学の予約をしている親がいるするだのと騒いでいるテレビを見ていると、値上がりしないのは自分の給料だけという現実を切実に感じる今日この頃。そんな中で唯一、希望を持てるのは、デジタルデバイドが徐々に解消されてきていることぐらいだろうか。
行政安全部によると、2007年9月から12月までの間に1万5000人を対象にした「2007情報格差指数及び実態調査」を実施した。その結果、インターネットや放送の利用、関連機器保有率といった情報化レベルを、農漁村に住む人や身体障害者、高齢者、低所得層といった人たちとそうでない一般国民を比べてみると、一般国民を100とした場合、2006年62.0%から2007年には65.9%と3.9%改善されたそうだ。この調査を初めて実施した2004年に比べると20.9%と大幅に改善されている。
また、2008年3月時点での韓国でのインターネット利用率が80%を超えたという数字が出ており、赤ちゃんと70代以上のお年寄りを除くほぼ全国民がインターネットを使っているということになる。インターネットに関しては政府や民間の支援があって、貧富の差があっても自由にアクセスできる環境になりつつある。
例えば、政府は生活保護対象で両親を亡くし祖父母と子供だけがいる世帯に無償でパソコンを贈呈し、インターネット加入費や電気代も免除している。若い両親とは違って祖父母はインターネットや情報化に興味を持たず、子供たちも機会を与えられないことが多いからだ。全国の小中高校にはパソコン室はもちろん教室ごとにインターネットにつながるパソコンがある。また全国の郵便局、市役所、区役所、町ごとにある会館には誰でも無料でインターネットを利用できるパソコンが数台置いてあるので、お金がなくてもインターネットの利用には困らない。
また、ある大手通信会社はボランティアを結成し、農漁村や障害者、低所得層の子供たちのためにパソコンを寄付し、高速インターネットも無料で使えるようにしている。また、農漁村の景気を活性化するためにインターネットショッピングモールの構築を助けたり、コミュニティサイトへの参加方法や写真を撮ってネットに載せる方法といったウェブサイトの使い方を教えてあげたり、という活動をしている。
電気や水道と同じように、インターネットも生活に欠かせない存在になっている。貧富の差が食べるものや着るものに差を生み出すのは資本主義ではやむをえないのかもしれないが、社会的機会まで差をつけられないようにしたいものだ。
(趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
2008年4月10日
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080410/1000759/