ユーザーの教育も不可欠 法的処罰だけでは限界
米国とのFTA(自由貿易協定)締結の前提条件として、Webにおける著作権の保護を強力に打ち出してきた韓国政府。その余りにも厳しい処置に、ポータルサイトなどから猛反発が巻き起こっていることを先週号で報告した。
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今回、韓国政府が打ち出した著作権法改正では、違法コピーをしたユーザーのサイト利用の停止まで政府が命令できるようにしようとしているところに特徴がある。一方、米国の連邦通信委員会(FCC)は、ファイル共有サイトへのアクセスを制限するのはユーザーの権限を侵害するもので、プロバイダは加入者の権利を制限できないというネットワークの中立性を支持する決定を行っている。つまり、韓国政府が著作権法改正によってプロバイダやサイト運営者側にユーザーのID利用停止・解約を命令するのはネットワークの中立性を損なうのではないかという懸念があるわけだ。
韓国は処罰規定を強化することで著作権を保護する立場を示しているが、どんなに強力な法律があっても技術的に保護できる処置がなければ意味がないとも言われている。まず簡単にコピーできないよう防止し、違法コピーされた著作物をすぐ削除できるモニタリング方式を導入し、著作権侵害を罪悪感なく気軽にやってしまうユーザーへの教育も不可欠である。
著作権者もユーザーもサービス側も、みんなが納得できる改正案でなければ必ずどこかで再び問題が発生する可能性がある。さらに環境が違うため、オフラインの著作権法とオンラインの著作権法を同じ規定にしてしまうのは無理があるのではとも考えられる。処罰も強化するが、その前にコピーされないために必要なことは何かを考えるべきだ。保護よりも活用を重視して、コンテンツビジネスを推進できる策は何かを探るべきというユーザーの声にも耳を傾けてほしい。
著作権を保護しようとするあまり、インターネットビジネスそのものが萎縮してしまっては、著作権者にとっても好ましくないことだろう。
今回の著作権法改正案は9月まで業界や専門家からの意見を募り、その後国会に上程されて、2009年の初めには施行される見通しである。(趙 章恩●取材/文)