サムスン電子、LG電子よりも一歩先をいく斬新な機能とデザインで人気を集めた携帯電話メーカーのパンテック(PANTECH)。日本ではKDDI向け端末を販売し、韓国では安くて面白い機能がたくさんある携帯電話として人気を集めていた。
パンテックは1991年に設立。携帯電話メーカーとして順調に成長するが、2005年中小携帯電話メーカーを買収して大きく育てるはずがうまくいかず、「すぐ故障する」「アフターサービスがよくない」といった顧客の不満が出始め、2007年には上場廃止となった。
2010年にはスマートフォンVEGAを発売して、150万台を販売するほど人気を得るが、デザインはいいのにアフターサービスがよくない、という不満が再び顧客に蔓延した。挽回するために、端末購入補助金を出して安く端末を買えるようにした。だが、これが裏目に出て赤字が積み上がり、パンテックの経営状況は悪化してしまう。
サムスンでもLGでもない携帯会社
ここから、さらなるパンテックの苦戦が続く。どんなに最悪な状況でも、諦めず再起しようと奮闘するパンテック社員の物語がドキュメンタリー番組で放送されたのが2014年。それから韓国内では「サムスン電子とLG電子しか選択の余地がないなんていやだ。パンテックもがんばってほしい」と応援する人が増えた。
ただしそれでは業績悪化に歯止めはかからず、2015年いよいよ残された道は破産しかなくなったところに、パンテックを買収したいという会社が現れた。
生き残ったパンテックは2016年6月30日、ほぼ2年ぶりに新機種を発売した。機種名は「IM-100」で、韓国語読みするとアイアムバック「戻ってきた」とも読める。KTとSKテレコムの代理店で販売している。発売から10日ほどで3万台が売れ、全国の代理店からIM-100の注文が殺到しているという。稼働中止状態だったパンテックの工場は、IM-100生産のためフル稼働して、毎日3000台を製造している。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
2016.7.15
-Original column
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/071300099/