三星コーニング精密ガラスに吸収合併
液晶とプラズマに資源を集中
【ソウル発】LCD(液晶)TV用ガラス基板を製造している三星コーニング精密ガラスは、ブラウン管用ガラスを製造している三星コーニングを2007年末までに吸収合併すると発表した。これにより三星はブラウン管ガラスの生産を中断する。
三星コーニングは73年、米国のコーニング社と三星電子の合弁で発足した会社で、三星コーニング精密ガラスはLCDTV用のガラス基板を専門的に生産するため95年に設立された。両社が合併を決めたのは、世界規模でのブラウン管TV市場の衰退による実績悪化を打開するための策としてである。
三星コーニングの事業を一部整理し、関連事業を三星コーニング精密ガラスに統合することで中長期的な競争力を確保するための戦略と分析されている。
三星コーニング精密ガラスはLCDパネル用基板ガラスを主力事業としながら三星コーニングのPDP(プラズマディスプレイパネル)TV用フィルターなど部品事業部門を吸収し、ブラウン管用ガラス事業は中国とマレーシア法人を中心に「ビッグスリム」といった市場競争力のある製品の生産力を引き上げることで、グローバルの競争力を高めることにした。
三星コーニングはすでに07年7月、ブラウン管TVとモニター用ガラス基盤を製造しているドイツのチェルニチ工場の稼働中止を決定している。この工場の年間売上高は三星コーニングのブラウン管とガラス基板売上高の7-8%を占めていた。現地の労使協議を経て最終決定を下すと説明しているが、TV市場がPDPとLCDに再編されながらカラーブラウン管(CRT)ガラスの需要は急減しているのが実態で、06年にはソウル郊外の京畿道(キョンギド)、水原(スウォン)にあったブラウン管用ガラス基盤ライン2か所も製造を中断している。
三星コーニングは06年に続き07年も経営悪化の可能性を念頭において総額2090億ウォンの減損処理を実施していた。事業部門別にはガラスを生産するディスプレイ事業部門が1290億ウォン、LCDTV用バックライトユニットを生産するBLU事業部門が720億ウォン、PDPTV内フィルターなどを生産するDIM事業部門が80億ウォンだった。
減損処理の内訳では三星コーニングの売上高の60%を占めているガラス部門だったことから、三星グループの全体の成長のためにもブラウン管ガラス事業からは手を引くしかない。
三星コーニングは、04年には987億ウォンの営業利益をあげていたが、05年、創業以来32年ぶりに111億ウォンの営業赤字に転換、06年も66億ウォンの営業損失を記録し、低迷から抜け出せずにいる。
三星電子が2社の合併を決めたことに関して、業界では「ブラウン管TV事業の本格的なリストラが始まった」と囁かれている。事業の業績悪化で連続赤字を計上している三星SDIも救済策として本社土地約14万平方メートルと建物10万平方メートルを三星電子に売却すると発表したことも、この噂を裏づけている。
三星SDIは、今回の売却でブラウン管関連施設をすべて手放したことになる。釜山のブラウン管生産ラインも運営中断の決定が下された。
三星コーニング精密ガラスの関係者は「リストラにより人員削減の問題は残っているが、今回の合併でLCD用ガラス事業だけだった事業分野をITO(酸化インジウムスズ)のターゲット材やPDPTV用フィルターなど平板ディスプレイ部品および素材事業を多角化できるようになった。専門企業としての競争力をより一層強化できるチャンス」と述べている。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)