[日本と韓国の交差点]「完全に新しい韓国」、文在寅大統領への期待

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朴槿恵前大統領が弾劾、罷免されたため7カ月前倒しで行われた韓国大統領選挙で、文在寅(ムン・ジェイン)候補が当選した。文氏は「完全に新しい韓国」をスローガンに掲げ、「不正腐敗を繰り返してきた積弊勢力を清算する」「原則と常識が通じる国らしい国を作る」と強調してきた。

 文氏の得票率は41%、朴前大統領を擁護し保守票を集めた自由韓国党のホン・ジュンピョ候補(24%)に558万票の差をつけて勝った。世論調査はずっと、文氏が40%以上の支持を得て当選すると予測していた。1位と2位の票差は歴代最多である。2012年12月の大統領選挙で文氏が朴氏に敗れた時の票差は約108万票差だった。

 今回の大統領選に出馬した候補は15人(2人は途中棄権)。そのうち、主な政党の代表者である5人が票を争ったため票が割れた。今までの大統領選挙は保守派の代表と進歩派の代表、2人のうちどちらかが当選するパターンだった。

20 ~40歳代で強い支持

 中央選挙管理委員会の発表によると投票率は暫定77%。前回(76%)より1.4%ポイント上昇した。史上初の事前投票(身分証さえ持っていれば全国どの投票場でも投票可能。指紋認証も併用する)と補欠選挙のため投票時間を2時間延長したことが投票率を上げた。

 地域別開票結果をみると、朴前大統領の地元である大邱市、慶尚北道はホン候補の得票率の方が高かった。慶尚南道も、わずかではあるがホン候補が優勢だった。ただし、その他の地域では文氏が1位だった。

 地上波放送局3社が共同で実施した出口調査結果によると、全国の20~50代が文氏を支持した。文氏の得票率は、20代(19歳含む)48%、30代57%、40代52%、50代37%、60代25%、70代以上23%。ホン氏は60代46%、70代以上51%とシニア層からは圧倒的に支持された。

 韓国では複数のメディアが「20~30代の若者がろうそく集会と弾劾、今回の大統領選挙を通じて、国民が政治に関心を持って声を出せば国を変えられることを経験した。1987年民主化運動を経験した50代とろうそく集会を経験した20~30代が韓国を変える改革勢力になるだろう」と分析した。

「国民だけを見て正しい道に進みます」

 文氏は9日深夜、当選確定を受けて、以下のあいさつをした。

 「本当にありがとうございます。国らしい国を作るため一緒に歩んできた偉大な国民の偉大な勝利です。新しい大韓民国のため他の候補とも手をつなぎ一緒に前進します。私は国民すべての大統領になります。私を支持しなかった国民も大事にする統合の大統領になります」

 「尊敬する国民の皆様。国民の切実な望みと念願、絶対に忘れません。正義の国、国民が勝つ国を必ず作ります。常識が通じる国らしい国を必ず作ります。渾身の力を込めて新しい国を必ず作ります。国民だけを見て正しい道を進みます。偉大な大韓民国、正義の大韓民国、堂々とした大韓民国、その大韓民国の誇らしい大統領になります」

「何よりも雇用を大事にし、同時に財閥改革もします」

 5月10日午前8時、中央選挙管理委員会は全体会議を開き、文氏の当選確定を公式に発表した。今回の大統領選挙は補欠選挙に当たるため、大統領就任式や大統領間の引き継ぎはない。

 文氏の大統領としての任期は中央選管の発表直後から始まった。8時10分頃には韓国軍の最高位であるイ・スンジン合同参謀議長が文大統領に軍の状態を電話で報告。文大統領は「大統領としてわが軍の力量を信じている。国民の安全のために万全を期してほしい」と応じた。

 午前9時には自宅がある西大門の住民に見送られ家を出た。午前10時には歴代大統領の墓地がある国立ソウル顕忠院(国立墓地)を参拝。その後、国会に到着して国会議長と歓談。野党になった自由韓国党のほか、国民の党、正しい政党、正義党を訪問して党代表と歓談し、「野党と随時議論し、協治する。国政に協力してほしい」と伝えた。

 正午には国会で大統領就任宣誓を行った。その後「国民への言葉」として以下のように述べた。

 「2017年5月10日は真正な国民統合が始まった日として歴史に残るでしょう」

 「旧時代の間違った慣行と決別します。権威的大統領文化を清算します。国民とコミュニケーションします。国民と目線を合わせる大統領になります」

 「安全保障に関わる問題を急いで解決します。必要ならすぐワシントンに飛んでいきます。北京と東京にも行きます。条件が整えば平壌にも行きます。韓米同盟はより強化します。THAAD問題解決のため米国および中国と真摯に交渉します。自主国防力強化のため努力します」

 「分裂と葛藤の政治も変えます。国内外は厳しい経済状況です。何よりも雇用を大事にし、同時に財閥改革もします。文政府の下では政経癒着という言葉が完全に消えてなくなるでしょう。差別のない世の中を作ります。機会は平等に与え、選抜課程は公正に、結果は正義に満ちたものにします」

 「この大統領選挙は前任大統領の弾劾によって行われました。不幸な歴史は終息すべきです。私は大韓民国の大統領の新しい模範になります。清廉な大統領になります。国民の誇りになります。約束を守る正直な大統領になります。公正な大統領になります。特権と反則のない世の中を作ります」

 「2017年5月10日、大韓民国は新たなスタートを切ります。私は命を注いで働きます」

By 趙 章恩

 日経ビジネス

 2017年5月

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/051100063/

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