韓国が狙う「28年に6G商用化一番乗り」、米中分離は追い風か

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 米国と中国の分離が加速する中、2020年6月1日に米国のドナルド・トランプ大統領が電話会談で主要7カ国首脳会議(G7サミット)に韓国を招待し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「喜んで招待に応じ、新型コロナウイルス防疫と経済の両面で韓国にできる役割を果たす」と答えたそうだ。トランプ大統領は、G7に韓国やオーストラリアなどを加えて、G11またはG12に拡大する構想を文大統領に説明したという。

 この構想に対して、韓国内では「韓国の発言力を高め、米中間で葛藤を仲裁できる位置に立つことでアフターコロナ時代の経済危機を克服するためにも、G7の拡大版に参加すべきだ」との声が大きい。G7拡大版への参加は、文大統領のアフターコロナ対策である「デジタルニューディール」「グリーンニューディール」にも良い影響を与えるとみられている。

 デジタルニューディールは、政府や公共機関によるIT・デジタル分野への優先的な投資で経済を回す政策である。以前も取り組んでいた「D・N・A(Data/Network/AI)普及戦略」を中心に、各企業が保有するデータを匿名化した上で売買できるようにする取引仲介プラットフォームを拡大する。現在は金融および流通分野のプラットフォームが稼働中だが、これを15分野に増やす。

 データの蓄積・加工・流通を促すデータ3法(個人情報保護法、情報通信網法、信用情報法)も改正した。豊富なデータからサービスや製品のイノベーションを起こせる環境の整備を目指す。公共データに関しては、新たに14万件を公開した。政府はスタートアップ向けに、AIアルゴリズム開発用の会話音声データや医療映像データなどの学習用データセットを提供しているが、これについても700種類を追加する。「非接触」に重点を置いた支援も実施する。

 さらに、以下の施策も進める。

  • 中央省庁と自治体の業務ネットワークを5Gに切り替える
  • 全国の小中高校38万教室と国立大学39校のサーバーやネットワーク設備を最新製品に切り替える
  • 地方の役場や村会館など4万1000カ所の公共Wi-Fiを高性能なものに交換する
  • 各地域の保健所で慢性疾患者の遠隔健康管理や、画像診療システムを使った呼吸器クリニックを始める
  • 自治体が保有する建物1562カ所に中小企業が共同利用できるテレビ会議室を設ける
  • 中小企業16万社を対象に在宅勤務を支援する
  • 社会間接資本(SOC)のデジタル化を進める

 官民連携のAIプロジェクトも進んでいる。感染病の予後予測や製造業の工程・品質管理、軍病院における医療映像判読、犯人検挙サポート、エネルギー効率化、税関違法コピー商品判読、海岸警備、地雷探知といった分野でAIを活用する。人口20万人以上の都市では5G(第5世代移動通信システム)やIoT(Internet of Things)を利用した交通・防犯・防災の統合管理プラットフォームを早期構築する。自動運転テスト地区を増やすほか、システム半導体設計支援センターを新設し、ファブレスメーカーが起業して軌道に乗るまでを支援するワンストップサービスを提供する。韓国政府とサムスン電子(Samsung Electronics)、LG電子(LG Electronics)が18年から力を注ぐ「6G」投資も進める。

 一方、グリーンニューディールでは、太陽光・風力・水素の3大再生エネルギーの普及や、公共施設のゼロエネルギー化、製造業のエネルギー効率化、スマートグリーンシティー造成を目指す。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 6.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00008/

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