グラミー賞にも期待 BTS新譜は“爆発の年”締めくくる作品

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米ビルボードチャートで韓国アーティストとして初の1位を獲得するなど、今人気絶頂のアイドルグループ「BTS(防弾少年団)」。彼らの最新アルバム『BE (Deluxe Edition)』が11月20日、世界同時リリースされるとあって、音楽特番などが増える年末年始に向けてさらに注目が集まっている。この1年のBTSの活躍について、ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

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 BTSの最新アルバム『BE (Deluxe Edition)』は、音楽だけでなく、コンセプトからデザイン、構成、ミュージックビデオ(MV)に至るまで、メンバーが制作全般に参加するなど、これまでに無い力の入れようとなっている。初回の特典も太っ腹で、韓国で初回限定版としてCDとセットで販売されるのは、92ページのフォトブックに32ページのメイキングブック、フォトブックサイズの額縁、ポスター、フォトカードなど、全部で重さ1kgの超豪華版。これで3万9400ウォン(約3700円)はお買い得だ。前回のアルバム『Map Of The Soul : 7』同様、予約販売サイトによっても異なるオリジナル特典が用意されているというから、どこで買おうか悩んでしまう。

 アルバムの発売に先立って、11月1日から公式SNSで新アルバムのコンセプトフォトも公開。1日目はメンバー全員、2日目はV、3日目はジミン、4日はRMとリレー形式で公開し、指折り数えて発売を待つ「ARMY(BTSファンの名称)」の心を離さない仕掛けを用意した。どの写真も美しい作品に仕上がっており、メンバーがそれぞれ録音したオーディオガイドも付いている。どんなコンセプトの写真なのか、自分らしさを表現するためどこにこだわったのか、本人が解説してくれるのだ。

 アルバムとは別に、年末恒例の「シーズングリーティング(略してシグ)」も予約販売を開始した。K-POPアイドルらが毎年発売する「シグ」はカレンダーやダイアリー、フォトブック、メイキングDVDなどで構成されたグッズのことで、「BTS 2021 SEASON’S GREETINGS」は90年代を彷彿とさせるレトロコンセプトで制作された。メイキングDVDの一部が先行公開されたが、BTSメンバー自らが考えたという自身の“サブキャラ”の説明がとにかく笑える。今韓国のバラエティー番組では、芸能人らがサブキャラを作り本人でないふりをして登場するのが流行っている。BTSもその流行りにのってARMYを楽しませようとしているのだ。

 BTSが最新アルバムやシグに力を入れるのは、もちろんアルバムを売るためということもあるが、2020年という年の締めくくりとして、特別な思い入れもあるからではないだろうか。2020年は、多くの人にとってコロナで全てが思い通りにいかない年であったが、コロナ禍にデビュー7周年を迎えたBTSと、彼らを支えるARMYにとっては、最も団結した1年であり、これ以上ない飛躍の年となったからだ.

今年2月、2年3か月ぶりにリリースしたアルバム『MAP OF THE SOUL : 7』は米ビルボードのアルバムチャートで1位を獲得し、全世界で417万枚のセールスを記録。8月に発表した新曲『Dynamite』でも、米ビルボードシングルチャート「Hot100」で初登場1位を獲得し、3週連続で首位をキープ。不動の人気を獲得した。

 9月から10月にかけても、毎日のように『Dynamite』のパフォーマンス動画を公開。米国の有名番組が企画した動画だったため米国のテレビやラジオで放送され、その後YouTubeにも毎日アップされた。同じ曲なのに、パフォーマンス毎に新しいBTSが見られるため、ARMYたちは毎日その動画を心待ちにした。おかげで世界中のARMYが家にいながらBTSにどっぷりハマることが出来た。

 10月10日から2日間にわたり開催したオンラインコンサート『BTS MAP OF THE SOUL ON:E』も凄かった。所属事務所によると、世界191か国99万3000人がチケットを購入する異例の盛況ぶりで、全員が最も安いチケット(4万9500ウォン)を購入したとしても売上は491億ウォン(46億円)超えと、凄まじい売上を叩き出した。コンサートの内容も、4つのセットにAR(拡張現実)を駆使したダイナミックな舞台演出や、6つのアングルを選択できるマルチビューに対応するなど、リアルのコンサートと遜色ない、配信だからこそ楽しめる仕掛けが多数施されていた。

 曲名通り、“ダイナマイト”が爆発したかのような1年を駆け抜けたBTS。ARMYも、PCやスマホの画面などからYouTubeやSNSで追いかけ続け、自宅にいながらまるで全てのライブに参加したかのような疲労感と達成感を味わえた、といった声が多く見られた。それほど応援に没頭し、団結していたのだろう。応援するだけでも大変だが、メンバーはいつ練習していたのか、彼らの体力にも感服する。

 新アルバム『BE (Deluxe Edition)』のリリースから3日後の11月23日(日本時間)にも、米国の栄誉ある音楽賞の一つであるアメリカン・ミュージック・アワードで、収録曲『Life Goes On』を世界初披露する予定だ。また、1月にはグラミー賞も控えている。米ビルボードでシングルチャート1位を獲得した際、メンバーのSUGAは「グラミー賞を受賞し、BTSの単独公演をしたい」と抱負を語っていた。コロナ禍を共に乗り越え、数々の記録を打ち立ててきたメンバーとARMYに、グラミー賞受賞という喜びを味わって欲しいものだ。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

NEWSポストセブン》

2020. 11.

-Original column

https://www.news-postseven.com/archives/20201119_1614115.html?DETAIL

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