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電気自動車(EV)用電池で高シェアの韓国LG Chem(LG化学)が試練を迎えている。同社製電池を搭載するEVが相次いでリコールとなり、さらに顧客の米Tesla(テスラ)が電池の内製化に本腰を入れ始めた。電池需要は増加が見込めるものの、戦略の見直しが必要になるかもしれない。
充電率を90%に制限
米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)は2020年11月13日、17~19年モデルの5ドアハッチバックEV「Chevrolet Bolt EV」のリコールを発表した。火災事故防止のために、電池の充電率を90%以下に制限するソフトウエアを配布する。対象車両は、LG化学の梧倉(オチャン)工場で生産した電池を搭載していた。
Chevrolet Bolt EVでは、20年11月までに米国で火災事故が5件発生していた。米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が調査を進めており、原因はまだ明らかになっていない。ただし、電池がある後部座席から発火したと推定する報道もあり、事故防止の観点からGMは自主的にリコールを決めたようだ。
LG化学はGMのリコールに合意しており、両社は21年1月までの事故原因究明を目標としている。充電率を90%以下に制限するのはあくまで一時的な処置であり、原因究明後に所有者に対して最終的な解決策を提示するという。
GMとLG化学は合弁で米国オハイオ州に世界最大級のEV用電池工場を建設している関係でもある。そのため、今回の問題についても積極的に協力して解決していくとみられる。
LG化学の電池を搭載するEVでは、韓国Hyundai Motor(現代自動車)の「Kona Electric」も20年10月にリコールとなった。同車でも複数件の火災事故が起きていた。対象は17年9月~20年3月に製造したモデルで、電池管理システム(BMS:Battery Management System)をアップデートする処置を取った。アップデート後もセル間電圧の過度な偏差や急激な温度変化が認められれば、電池を交換するという。20年11月22日時点で、対象の約9割がアップデートを完了した。Kona Electricの火災事故も原因は調査中であり、火災の原因が電池であるという結論は出ていない。
11月12日、Kona Electricの所有者173人は、現代自動車を相手に代金払い戻しまたは電池パックを含めた電池システム全体の無償交換を求める訴訟を起こした。原告は、「BMSアップデートはリコールといえない」と主張している。
こうした苦境にありながら、LG化学の株価は最高値を更新した。11月13日に70万5000ウォンだった株価は、GMがリコールを発表した後の同月16日に67万7000ウォンまで下がったものの、同月26日には81万6000ウォンと、終値基準では初めて80万ウォンを超えた。時価総額も、韓国企業ではSamsung Electronics(サムスン電子)、SK hynix(SKハイニックス)に続く3位となった。