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韓国LG Chem(LG化学)の電池部門を分社したLG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)が2020年12月1日、創立総会を開催し事業を始めた。電気自動車(EV)用新型電池を米Tesla(テスラ)などに前倒しで供給し、市場シェア1位を維持するための勝負に出る。
航続距離を600kmに
同月16日、LGエネルギーソリューションがEV用新型電池を21年第2四半期に量産するとの報道があった。その新型電池は、ニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム酸リチウム正極(NCMA正極)を採用したリチウムイオン電池(NCMA電池)だ。ニッケルの比率が90%と多く、価格高騰や児童労働といった問題が付きまとうコバルトは5%以下に抑えた。アルミニウムを加えることで、安定性を強化している。このNCMA電池をEVに使えば、航続距離を600kmまで延ばせるという。
NCMA電池の供給先は、テスラと米General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)である。NCMA電池の生産開始は22年前後とみられていたが、EVの航続距離に対する要求が高まったことでLGエネルギーソリューションが量産前倒しを決定した。電池メーカー間の争いが激化していることも背景にある。
韓国の市場調査会社SNE Research(SNEリサーチ)によると、20年1~9月に世界で車両登録されたEVの電池搭載量(容量ベース)は80.8GWhと、前年同期から1.3%減少した。新型コロナウイルス感染症の世界的流行で需要が伸び悩んだ中、LG化学は前年同期比127%増の19.9GWhと供給量を大幅に増やし、シェア1位だった。しかし、2位の中国・寧徳時代新能源科技CATL(同12.0%減の19.1GWh)や3位のパナソニック(同22.8%減の15.8GWh)との差は小さい。韓国勢のSamsung SDI(サムスンSDI)とSK innovation(SKイノベーション)も追い上げている。さらに、電池内製化を打ち出して22年に100GWhの生産目標を掲げるテスラの存在も、競争に拍車を掛けている。
LG化学とGMが合弁で設立した米Ultium Cells(アルティウムセルズ)でもNCMA電池の開発を進めており、やはり21年中の量産開始を目指している。同社は20年11月、技術者約1100人の採用告知を出した。同社の工場で生産したNCMA電池は、GMの新型車(EVピックアップトラック)に搭載するという。当初計画では22年の量産開始だったが、韓国メディアは、GMがテスラを意識して前倒ししたのではないかと見ている。
NCMA正極材の調達ルートを確立
LGエネルギーソリューションはNCMA正極材を2社から調達する。テスラ向けは韓国L&F、GM向けは韓国Posco Chemical(ポスコケミカル)である。