EVリコール問題も意に介さず、韓国電池3社が打倒CATLへ積極投資

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韓国Hyundai Motor(現代自動車)の電気自動車(EV)「Kona Electric」が電池の発火でリコールとなった件で、費用分担は現代自動車が3割、電池のサプライヤーである韓国LG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)が7割とすることで合意したと韓国メディアが報じた。費用総額は1兆4000億ウォン(約1360億円)前後と見込まれている。

 この件では、韓国国土交通部(韓国の部は日本の省に相当)がKona Electricで発生した火災事故の調査に乗り出し、電池セルの製造不良(負極タブの折り畳み)による火災発生の可能性を確認したと発表。電池を製造したLGエネルギーソリューションの責任が問われ、費用分担の割合が注目されていた。

 費用分担が報じられた2021年3月4日、LGエネルギーソリューションの親会社であるLG Chem(LG化学)と現代自動車はそれぞれ、リコール費用に基づいて20年の営業利益を下方修正した。責任や費用分担を巡って双方が争った時期もあったが、今回の合意で協力関係は継続することになり、今後は現代自動車からの発注量も増えるとみられている。

テスラ向けに米国の生産能力増強か

 それから約1週間後の同月12日、LGエネルギーソリューションはリコールのニュースを打ち消すがごとく大規模な投資計画を発表した。25年まで5兆ウォン(約4850億円)以上を投資し、米国に少なくとも2カ所の電池工場を新設することで、年産70GWh以上の生産能力を追加で確保する。さらに、米国での生産品目に、急成長しているEV用円筒型電池を加えることも明らかにした。従来は、エネルギー貯蔵システム(ESS)用ラミネート型電池を生産していた。

 米国でこれから生産する円筒型電池については、同月10日に英Reuters(ロイター)が「LGエネルギーソリューションは、米Tesla(テスラ)の『4680』電池セル生産のために米国と欧州で工場新設を検討している」と報じており、テスラ向けの可能性もある。ただし、LGエネルギーソリューションは投資計画の中で4680に関しては何も言及していない。4680は、テスラが20年9月に発表した、直径が46mm、長さが80mmの円筒型電池だ。既存の「2170」よりも大きく、EVの航続距離を伸ばせるという。

 米国に工場を新設するのは、バイデン米政権のEV転換政策に合わせて米国内での生産能力拡大を急ぐためである。米国は「Buy America」のスローガンの下、米国産EVを優遇する方針を打ち出している。米国産EVとして認められる条件に「電池セルが米国製であること」があり、北米市場で大手自動車メーカーやEVスタートアップ、ESSメーカーから大量に受注したことから、LGエネルギーソリューションは生産能力拡大を進めているという。米国では、テキサス州の大寒波で停電が続いて大混乱が生じており、ESSの需要増も見込まれている。

 LGエネルギーソリューションによれば、電池の需要は旺盛で、毎年3兆~4兆ウォン(2910億~3880億円)を投資して工場を新設していかないと生産が間に合わない状況だという。資金確保は問題ないとの見通しを示した。米国内での安定したサプライチェーンを構築することで、リコールを乗り越え米国のEVやESSの需要を取り込む。従来は受注してから投資していたが、今後は需要を見越して投資を先行する戦略に転換したという。

 LGエネルギーソリューションは、米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)との合弁会社である米Ultium Cells(アルティウムセルズ)でも追加投資を検討している。既に米国オハイオ州に年産35GWh規模の工場を建設しているが、次世代技術を適用した電池を生産する第2工場の建設も21年上期に決めるという。第2工場の稼働は、23年を予定している。GMは25年までEVの販売割合を最大40%に引き上げる計画を打ち出している。GMのEV向けに電池を安定供給すべく、第2工場の生産能力も同じく年産35GWh程度の規模になるという。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 3.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00028/

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