アップルカー生産受託か、LGとマグナ合弁会社が注目される理由

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 米Apple(アップル)が開発中の電気自動車(EV)「アップルカー」の生産を誰が受託するのか――。当初、韓国Hyundai Motor(現代自動車)が有力視されていたが2021年4月14日、複数の韓国メディアが韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)とカナダの大手自動車部品メーカーMagna International(マグナ・インターナショナル)の共同出資会社「LG Magna e-Powertrain」がアップルカーの初期生産分を受注する可能性が高いと報じた。LGは報道にコメントしないものの、マグナはかねてアップルカーを生産したいという発言を繰り返している。

 LG Magna e-Powertrainの受託が有力視される理由の一つに、マグナ・インターナショナルが過去、アップルのEVプロジェクトである「Project Titan」に参加していた点がある。20年12月にマグナとアップルの交渉は終わったと報道されたが、LG Magna e-Powertrain ならばマグナとLGグループ両方のバックアップを期待できる。


 LG Magna e-Powertrainはモーターやインバーターなどの製造で高い技術力を持つLGエレクトロニクスと、世界3位の自動車部品会社でグローバルな販売網を持つマグナの共同出資会社だ。ガソリン車からEVへと自動車産業が転換期を迎える中、マグナがLGエレクトロニクスのモーター技術力に投資するため設立したと言われている。ドイツMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)や独BMW、トヨタ自動車などの車体生産受託を手掛けるオーストリアのMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)は、マグナ・インターナショナルの子会社である。

 アップルカーを巡っては、アップルと複数の完成車メーカーの交渉が報道されている。しかし生産委託先の選定に難航している様子がうかがえる。アップルにとっては、完成車メーカーではないLG Magna e-Powertrainのような企業のほうが、生産委託しやすいだろう。LG Magna e-Powertrainは21年7月設立完了を目指し、LGエレクトロニクスから1000人規模の人員移動や外部からの中途採用を進める計画だ。

 アップルカーの初期生産分は市場性を評価するための生産であるため、台数規模はそれほど大きくないとみられる。それでもマグナ・インターナショナルはこれまでアップルカーを生産したいと積極的にアピールしてきた。同社のSwamy Kotagiri CEO(最高経営責任者)は、イベントやメディアの取材で度々「マグナはアップルカーを生産する準備ができているかと聞かれたら『はい』と答える。喜んで生産する」「北米に工場を増設する意向もある」と話している。

 マグナは21年4月12日にイスラエルのEVプラットフォーム開発会社のREE Automotiveと戦略的提携契約を締結し、顧客が車両をカスタマイズできるモジュラーEVを開発すると発表した。マグナとREE Automotiveの協力体制は、アップルがアップルカーの生産を委託する企業を選ぶ際の魅力的な材料になりそうだ。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 4.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00032/

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