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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年8月11日、新製品発表イベント「Samsung Galaxy Unpacked 2021」をオンライン開催し、折り畳みスマートフォン(スマホ)の新機種などを発表した。長らくスマホの世界販売シェア首位を維持してきたサムスン電子だが、ここに来て中国・小米科技(Xiaomi、シャオミ)が同社の地位を脅かすようになってきた。サムスン電子はスマホで今後も競争力を維持できるのか。
サムスン電子が単月で首位陥落、シャオミが初の1位に
サムスン電子が今回発表したのは、折り畳みスマホの「Galaxy Z Fold3 5G」(以下Fold3)と「Galaxy Z Flip3 5G」(以下Flip3)、スマートウオッチの「Galaxy Watch4」と「Galaxy Watch4 Classic」、そしてワイヤレスイヤホンの「Galaxy Buds2」だ。
イベント後、韓国内外のメディアやレビューサイトでは、今回のサムスン電子の新製品を高く評価した。韓国内では同年8月12日から、発表したスマホを3日間レンタルできる体験イベントが始まり、同17日午前中からサムスン電子のオンラインショップで特典付き先行販売がスタートした。開始直後にアクセスが集中し、サイトにつながりにくくなるトラブルが続き、午後になってやっとアクセスできたと思ったら製品は売り切れになっていた。韓国内での幸先は好調だ。
もっとも今回の発表の直前に当たる21年8月5日、長らくスマホ世界市場でシェア首位を維持してきたサムスン電子に陰りが見えてきたことが明らかになった。香港の調査会社Counterpoint Technology Market Research(カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ)が、21年6月の世界スマホ販売シェアで、シャオミがサムスン電子を抑えて初の1位になったと発表したからだ。
確かに近年、スマホ世界市場でサムスン電子は、米Apple(アップル)とシャオミの板挟みで中途半端なポジションになっていた。韓国メディアはサムスン電子に対し、「(サムスン電子のスマホ主力ブランドである)Galaxyは、アップルよりもブランド力が落ちる。同スペックのスマホを比較すると、サムスン電子の製品のほうがシャオミよりも4割近く価格が高い」と手厳しい評価をしていた。
かつてない危機にさらされるサムスン電子は、今回の新製品発表でなんとか競争力維持を示した格好だ。
Fold3とFlip3は、折り畳みスマホGalaxy Zシリーズの3世代目に当たる。2世代目の機種から耐久性をぐんと向上し、低価格化した点がポイントだ。ヒンジ部分を含め端末を密封するような仕組みで水深1.5mの淡水で最大30分耐えられるIPX8クラスの防水機能と、前機種より頑丈なアルミニウムと強化ガラスを採用した。
ディスプレーの保護フィルムを従来のTPU(熱可塑性ポリウレタン)素材から、より強度を持つPET(ポリエチレンテレフタレート)素材に切り替えた。耐久性を約80%向上させると同時にタッチ感も改善した。折り畳み機構の耐久性も向上し、外部検証機関による20万回の折り畳みテストを実施し、問題ないことを確認したという。
なんといっても韓国のGalaxyファンが喜んだのは、Fold3で、同社の折り畳みスマホとして初めて「Sペン」によるペン入力に対応した点だ。
これまで折り畳みスマホでSペンによるペン入力に対応するのは難しかった。電子ペンの動きをデジタル信号に変換する入力装置デジタイザーを折り畳みディスプレーに配置すると損傷の恐れがあったからだ。Fold3では、デジタイザーを折り畳みディスプレーの両側に入れ、アルゴリズムで信号を計算し2つのディジタイザーを一体化して作動させることでこのような課題を克服した。前機種であるFold2までは、無駄に高額なスマホと評価を下していた韓国のレビュアーたちも、Fold3は「折り畳みスマホを見直すきっかけになった」という意見が目立つ。
コンパクトな折り畳みスマホであるFlip3は、カメラ機能を改善し、端末カラーの選択肢を増やした。カバーディスプレーを大型化し、メインディスプレーを開かなくてもメッセージを8行まで確認できるようにした。韓国で利用者が増えているモバイルペイメント「サムスンペイ」にも対応している。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
<<NIKKEI X TECH>>
2021. 8.
-Original column