サムスン対ソニー、業界初2億画素イメージセンサーで王手へ

.

韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年9月2日、業界初をうたう2億画素モバイルイメージセンサー「ISOCELL HP1」と、5000万画素のイメージセンサー「ISOCELL GN5」のサンプル出荷を始めた。サムスン電子は多画素とピクセル微細化を武器に、イメージセンサー市場における業界首位ソニーグループの牙城を切り崩しにかかっている。

 ISOCELL HP1は0.64μmの画素2億個を、わずか1/1.22インチのサイズで実現した。つまり高画質でありながら小さいデバイスにも搭載できるほど小さいのが特徴だ。撮影する環境の明るさに応じて、複数のピクセルを1つに束ねて大きなピクセルとして扱い、受光面積を広げより鮮明に撮影する「Chameleon Cell」と呼ぶ独自の技術を採用した。明るい場所では0.64μmのピクセルのままで、夜景や室内など暗い場所を撮影する際はピクセルを最大16個組み合わせ、受光面積を広げた2.56μmのピクセルとして扱える。ピクセル4個を組み合わせて30フレーム/秒の8K映像を撮影できる技術も搭載した。

 ISOCELL GN5は、オートフォーカス機能を強化したイメージセンサーである。通常はピクセル1つにフォトダイオード(光を集める機能)があるが、ISOCELL GN5では2つのフォトダイオードを搭載する。上下左右の位相差を全て利用し、素早くオートフォーカス機能を利用できるのが特徴だ。

 サムスン電子は、多画素化とピクセル微細化を武器にイメージセンサー市場を猛烈な勢いで攻めている。19年5月に6400万画素、19年8月に1億800万画素のイメージセンサー開発を発表するなど、いずれも業界初をうたう多画素化を更新し続けている。ピクセル微細化についても、15年7月に1.0μmピクセル、17年10月に0.9μmピクセル、19年9月に0.7μmピクセル、21年7月に0.64μmピクセルと、次々と小型化を進めている。サムスン電子は25年に、人間の目に匹敵する約6億画素のイメージセンサー実現を目指す考えだ。

 サムスン電子によると、1億画素以上のイメージセンサー市場は年平均32.4%で成長しているという。イメージセンサー市場全体の年平均成長が7%程度であるため、今や多画素イメージセンサー市場が成長の中心だ。同社によると21年に5200万個、25年には1億6000万個の1億画素以上イメージセンサーがカメラに搭載される見込みという。

 多画素イメージセンサーのニーズが増えている背景には、スマートフォン(スマホ)に搭載するカメラの数が増え続けているという事情がある。サムスン電子の最新スマホ「Galaxy Z Fold3」はカメラが5つもある。多画素化と小型化は、カメラ性能が競争軸となっているスマホ市場にとって欠かせない要件となっている。

 イメージセンサーの市場は、自動運転用や医療用、防犯用、スマートファクトリー、スマート家電などにも広がっている。特に自動運転車には、1台につき平均8つ以上の高画質カメラを搭載しているといわれる。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 9.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00043/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *