韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が2023年4月7日に発表した2023年1~3月期連結決算(速報値)と合わせて、1998年以来となるメモリー半導体の減産を公表した。売上高は63兆ウォン、営業利益は6000億ウォンだった。営業利益が1兆ウォンを下回るのは2009年1~3月期以来の14年ぶりである。韓国の証券業界の分析によると、半導体部門の赤字が4兆ウォン前後あるものの、新型スマートフォン「Galaxy S23」が大ヒットしたおかげで赤字は免れたようだ。
速報値が市場の期待を下回ったことから、サムスン電子は実績下落の要因と同社の対応についての説明文を別途公開した。それによると、メモリー半導体は多数の顧客企業の在庫調整が続いたことから需要減が続き、システム半導体も景気低迷やオフシーズンの影響などでいずれも営業利益が前期比で下落したため、「有意味な水準までメモリーの生産量を下方修正中」とした。ただし、短期生産計画は減産を決めたものの、中長期的には堅調な需要が見込まれることから、クリーンルーム確保のためのインフラ投資を続け、技術リーダーシップ強化に向けた研究開発投資も拡大するとした。サムスン電子は2023年2月に子会社のSamsung Display(サムスンディスプレイ)から20兆ウォンを借り入れ、施設投資と研究開発に使うと公示した。
メモリー半導体の世界トップ3のうち、韓国SK Hynix(SKハイニックス)と米Micron Technology(マイクロンテクノロジー)は2022年秋ごろから減産に入っているものの、サムスン電子は人為的な減産はしないという立場だった。サムスン電子はこれまでメモリー半導体の需要が減少して価格が下落して営業利益が赤字になっても減産に踏み込まず、競合他社がメモリー市場から撤退するか破産するまでチキンゲームを続けることで成長してきた。もちろん、メモリー半導体は需要が伸びたからといってすぐ生産量を増やせるわけではないので、半導体サイクルのアップダウンを考えると減産を決めるのが難しいという事情もある。
台湾の調査会社TrendForceによると、2022年10~12月期の世界DRAM市場シェアはサムスン電子が45.1%と前期の40.7%から4.4ポイント増、SKハイニックスは前期比1.1ポイント減の27.7%、マイクロンは同3.4ポイント減の23%と需要減の中でシェアを伸ばし競合と格差を広げた。
サムスン電子は2022年から生産ライン再整備でメモリーの生産を10%減らしてはいたが、今回は20%ほど減産するものとみられる。決算報告などからサムスン電子の在庫資産は2022年末時点で52兆1879億ウォンと初めて50兆ウォンを超えた。DRAMの在庫は通常5週間分ぐらい確保するところを21週分に達したという噂もあった。今回も当初は減産せずに競争を続ける姿勢を見せたが、このままではメモリー半導体の価格が生産原価以下になる可能性があるほど需要と価格が下げ止まらず、期待した中国市場の需要がなかなか回復しないことも影響したようだ。サムスン電子の減産決定でメモリー半導体の在庫が減り価格の下落も止まると見込まれることから、韓国では早速サムスン電子の株価が上がり続けている。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
(NIKKEI TECH)
2023. .4
-Original column