サムスン電子が日本に半導体拠点新設、後工程の日韓シナジー効果に期待

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2023年5月14日、韓国メディアは韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が300億円超を投資し横浜市に先端工程の試作品製造ラインを新設すると一斉に報じた。2025年の稼働を目標にしているという。日本政府の半導体補助金を申請し、100億円以上の補助を受ける予定という報道も見られた。同日付の日本経済新聞社の記事では「サムスンは『コメントは控える』としている。」とあった。

 2023年初め、サムスン電子は日本各地にあった設備・素材・イメージセンサー・パッケージングなど半導体関連研究施設を「Device Solutions Research Japan」(横浜市)にまとめた。横浜にあった家電部門の研究所も研究分野を半導体に変更した。

 韓国メディアは2023年3月からサムスン電子が日本に半導体研究拠点を新設すると報道してきたが、いよいよ具体的な投資計画がまとまったようだ。同社が2023年2月に東京で開催したエンジニア採用説明会「Tech & Career Forum」の後から、韓国メディアはサムスン電子が日本にシステム半導体研究拠点と、日本企業と共同研究した試作品を製造する工場を新設し、破格的な条件でエンジニアを大量に採用すると報じてきた。

 サムスン電子が日本に半導体の拠点を新設するという報道は韓国で大きな話題となった。ただ、一部の報道では、日本の企業をサムスン電子の韓国半導体工場近くに誘致することなく、なぜ日本に拠点を新設するのか、日本政府は次々に世界トップの半導体企業を誘致しているが韓国はどうなっているのかと批判的だった。しかし大勢としては、サムスン電子が日本に半導体研究拠点と試作品の製造ラインを持つことは韓国・米国・日本・台湾の半導体協力体制を強化し、日本企業と半導体後工程(パッケージング、配線結線、テストなど)の共同研究をしやすくするとして、日本だけでなくサムスン電子にもメリットがあると報じている。

 韓国メディアはかねて、半導体ファウンドリーの世界市場で圧倒的1位であるTSMC(台湾積体電路製造)とサムスン電子の差は半導体後工程にあると繰り返し指摘してきた。メモリー半導体だけでなくシステム半導体でも世界1位を目指すサムスン電子の目標に近づくためには、後工程に強い日本の企業との共同研究が欠かせないという声がある。

 サムスン電子は2022年11月に、先端パッケージング技術FOWLP(Fan-Out Wafer level Package)を利用することで、既存のグラフィックメモリーGDDR6と同サイズのパッケージで2倍の帯域幅と2倍の容量を実現した「GDDR6W」を公開した。デジタルツインやメタバースといった4K/8Kの高画質映像が必要なサービスに向けた高性能・大容量・高帯域幅メモリー半導体とする。同社はメモリー半導体自体の性能強化だけでなく、同じパッケージの中にメモリーチップを2倍以上搭載できる次世代パッケージングにも対応するとして投資を拡大していた。最近はハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の性能向上のためメモリー半導体とシステム半導体を1つのチップにする先端パッケージング技術の研究が盛んになり、半導体メーカーが技術を競い合っている。前工程に当たる半導体の微細化工程の研究が計画通り進んでいないことから、パッケージングで性能を向上させる動きもあるという。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .5

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00086/

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