サムスンが米韓の自社イベントで2nmプロセスの細部にわたるロードマップを初披露

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は、2023年6月27・28日に米シリコンバレー、7月3・4日には韓国ソウルのそれぞれで、「Samsung Foundry Forum(SFF) 2023」と「Samsung Advanced Foundry Ecosystem Forum(SAFF) 2023」を開催した。

 Samsung Foundry Forumは半導体ファウンドリーの顧客向けに半導体技術と今後のロードマップを公開したり、パートナー企業が技術展示を行ったりするイベントである。一方のSamsung Advanced Foundry Ecosystem Forumは、サムスン電子のファウンドリーに協力しているパートナー企業が半導体エコシステムの発展に向けて集うフォーラムである。サムスン電子は両フォーラムを毎年秋に開催していたが、2023年は早期に顧客を誘致するためか6月末から7月初めに前倒しして開催した。同社は2022年6月に世界初とうたう「GAA(Gate-All-Around)」技術による3nmプロセスの先端半導体の量産を開始した。2024年には第2世代の3nmプロセス量産、そして2025年からは2nmプロセスの量産を目指している。

2nm以下プロセス量産のロードマップを発表

 サンノゼで開催されたSamsung Foundry Forum 2023では、「Innovating Beyond Boundaries」をテーマにAI(人工知能)時代の最先端半導体の限界を克服するとして、2nm以下プロセス量産のロードマップを重点的に発表した。

 サムスン電子は2025年にモバイル向け2nmプロセス(SF2)の量産を始め、2026年にはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けの量産、2027年に車載向けの量産を開始するという。最先端となるSF2プロセスは現在のSF3プロセスに比べて性能は12%、電力効率は25%向上し、面積は5%減少する。同社が2nmプロセスのロードマップを細部にわたって公開したのはこれが初めてである。その次となる1.4nmプロセスは既に発表している通り、2027年に量産を始める。韓国ではサムス電子が既に顧客を確保していて技術に自信を持ったということから、今回のロードマップ公開に至ったと分析する意見がある。

 2nmプロセスはサムスン電子以外に、台湾TSMC(台湾積体電路製造)が2025年の量産、米Intel(インテル)が2nm世代の「20A」を2024年上半期、続く下半期に1.8m世代の「18A」の量産をそれぞれ予定している。日本のラピダスは2025年に2nmプロセスの試作品生産と2027年の量産を目標にしている。

 このほかサムスン電子は2025年に8インチGaN(窒化ガリウム)の生産を始める。コンシューマーやデータセンター、車載向けである。次世代のパワー半導体とされるGaNは、現在のシリコン半導体の限界を克服し、システムの高速スイッチングと省電力を大幅に高められる。

 現在商用展開中の5G(第5世代移動通信システム)の次世代となる6Gに向けては、5nmのRF(Radio Frequency)プロセスを開発し、2025年上半期に量産する。5nmのRFプロセスは既存の14nmプロセスに比べ電力効率は40%以上の向上が見込め、面積は50%減少するとの期待がある。現在量産中の8nm、14nmのRFプロセスをモバイルや自動運転など様々な応用先に広げていく。

 サムスン電子はプロセスの拡大、2023年下半期の平沢(ピョンテク)工場第3ラインファウンドリーの稼働、2024年の下半期には米テイラー市の半導体工場第1ラインの稼働、現在造成中の韓国システム半導体国家産業団地の中に生産拠点を追加するなど、絶え間ない設備投資で安定した生産能力を確保、顧客の需要に積極的に対応するとした。サムスン電子の半導体を製造するクリーンルームの規模は2027年には2021年の7.3倍になる見通しである。

 同社はファウンドリー事業のパートナー、メモリー、パッケージ基盤、テスト分野の企業を集め、先端パッケージのアライアンスであるMDI(Multi Die Integration)を発足することも発表した。MDIの狙いは、異なる機能を持つ半導体を1つの半導体のように動作させるパッケージ技術である2.5D・3D異種集積パッケージ技術のエコシステムを構築して積層技術のイノベーションを続け、最先端パッケージをワンストップのターンキーサービスで提供することにある。サムスン電子はパートナーと一緒に最先端プロセスと異種集積パッケージ技術で設計の複雑度を最小限にできていると説明した。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .7

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00089/

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