韓国の科学技術情報通信部(「部」は日本の「省」に当たる)の統計によると、2023年10月のICT(情報通信技術)分野の輸出額は前年同月比4.5%減の170.6億米ドルだった。貿易黒字は暫定44.4億米ドルである。韓国の主力輸出品目であるディスプレーはモバイル向け有機EL(OLED)が好調で、同13.1%増となった。メモリー半導体は同1%増となったものの、他の品目は世界市場の需要減少により軒並みマイナスとなった。システム半導体は同7.4%減、携帯電話が同3.3%減、コンピューター・周辺機器が同26.2%減、通信装置は同23.4%減だった。
輸出が回復しているディスプレーだが、韓国ディスプレー産業協会によると、ディスプレー世界市場は中国企業が韓国に追い付いている。中国企業を引き離すため韓国は、液晶ディスプレー(LCD)を諦めて有機ELに集中している。
2023年11月13日、香港では韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の投資フォーラムが開催された。世界の機関投資家を集めてサムスン電子と系列会社の技術を紹介する場である。ここで最も注目されたのがSamsung Display(サムスンディスプレイ)である。同社は投資家に向け「他のディスプレー事業者は赤字だが当社は黒字。モバイル向け有機EL世界市場シェアは70%に達し、革新的な特許を確保した」と説明した。実際、同社の営業利益は過去最高を記録した2022年を超える勢いである。また2013年に1度は撤退したテレビ向け大型有機EL市場に再進出し、マイクロディスプレーと車載ディスプレーの有機EL市場も開拓し、2030年に有機ELだけで売上高500億米ドルの達成を目指している。同社によると、世界の有機EL市場規模は2023年の450億米ドル規模から2030年には1000億米ドル規模になると見込んでおり、その半分を獲得する狙いである。
サムスンディスプレイが注目するマイクロディスプレーはピクセルの大きさが数十μmと非常に小さい微細なパネルである。小さなパネルでも高い解像度を実現できる。そのため通常のサイズのディスプレーとは異なる半導体の超微細工程が必要とされる。シリコンウエハーに有機ELを蒸着させたOLEDoS(OLED on Silicon)の開発及び製造のため、サムスンディスプレイは2023年11月1日、サムスン電子に391億ウォンを支払って、通常実施権を買い取った。これにより、サムスンディスプレイはOLEDoSの開発に必要なサムスン電子の半導体工程における技術を利用できる権利を得た。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
(NIKKEI TECH)
2023. 11.
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