韓国に誕生した第4の携帯電話事業者、大手3社が投げ出した5Gミリ波の専業サービス

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2002年から実に22年もの間、KT、SK Telecom(SKテレコム)、LG U+(LGユープラス)の大手3社による寡占状態が続いている韓国のモバイル市場。ついに、第4の携帯電話事業者が誕生した。同国のICT(情報通信技術)政策を担当する科学技術情報通信部(「部」は日本の「省」に当たる)は2024年1月31日、5G(第5世代移動通信システム)の周波数オークションにおいて、企業コンソーシアムのStage X(ステージX)がミリ波と呼ばれる28GHz帯の免許を4301億ウォン(約3億2000万米ドル)で落札したと発表した。科学技術情報通信部は2010年から第4の携帯事業者を誕生させようと7回に及ぶ新規参入事業者の募集を繰り返してきた。今回、ステージXが新規参入を果たしたことで、いわゆるナマズ効果†をもたらすとの期待がかかる。

†ナマズ効果(catfish effect)=異質な存在が登場することで活気が出ることの例え。

 ステージXは、2017年にMVNO(仮想移動体通信事業者)サービスを開始したStage Fiveのほか、Shinhan Financial(新韓投資証券)、KAIST(国立韓国科学技術院)、延世医療院(大学病院)、衛星アンテナ大手のIntellian Technologies(Intelliantech)が参加する韓国ローカルのコンソーシアムである。Stage Fiveは韓国のインターネットサービス大手であるKakao(カカオ)グループに属していたが、今回のオークション入札前にコンソーシアム参加企業から8000億ウォンの投資を誘致して独立した。

 韓国における5Gミリ波の周波数オークションは今回が初めてではない。1回目は2018年6月に実施され、大手3社がサブ6(6GHz未満の周波数帯)と呼ばれる3.5GHz帯の帯域幅280MHzと、28GHz帯の同2400MHzの電波を落札した。このときの28GHz帯の平均落札価格は2074億ウォンと、ステージXの4301億ウォンに対して半分以下の金額だった。

 それでも大手3社は5Gミリ波の商用サービスを成長させることができなかった。2022年11月の時点で、28GHz帯の割り当ての条件であった基地局建設計画を3社とも達成できず、科学技術情報通信部は同年12月にKTとLGユープラス、2023年5月にはSKテレコムの電波割り当てを取り消した。

 科学技術情報通信部は2023年7月、回収した28GHz帯を第4の携帯事業者に割り当てるための通信市場競争促進方案を発表し、周波数オークションの最低入札価格を742億ウォンに設定した。同年11月から12月にかけて新規参入事業者を募集したところ、Sejong Telecom(セジョンテレコム)、My Mobile Consortium(マイモバイルコンソーシアム)、ステージXの3社がオークションに名乗りを上げた。ところが同年1月25日のオークション初日にセジョンテレコムが降りてしまい、残り2社が激しく入札を繰り返した結果、落札価格は当初よりも3559億ウォンも高い4301億ウォンまで跳ね上がってしまった。

 章恩=(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2024. 2.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00102/

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