日韓のゲーム事情を比べると最も差が大きいのがモバイルである。G★2008におけるモバイルゲームは、最大手キャリアの「SK Telecom」が有無線連動型ゲーム「メイプルストーリー」をはじめ、パズルゲームなど11作品を展示したのみで、それ以外は大規模な展示がなかった。
韓国にはまず、勝手サイト(※1)というものが存在しない。モバイルコンテンツ=キャリアの公式コンテンツであるため、モバイルコンテンツの種類が日本に比べると非常に少ないのだ。
1年間新しく開発されるモバイルゲームは1000タイトル以上といわれるが、その中でキャリアに選ばれ公式コンテンツとしてリリースされるのは10~20タイトルである。
勝手サイトがあればもっと色んなゲームを利用できるだろうが、ユーザーが目にすることなく消えていくゲームの方がはるかに多いとは勿体無い。
フルブラウザーを使えば、Hangame や Netmarble にアクセスしてカジュアルゲームをプレイすることが可能だが、どんな場合でもキャリアのネットワークを経由しないとインターネットにつながらないため、自由に全てのサイトにアクセス出来るわけではなく、キャリアと契約しているサイトしかアクセス出来ない仕様となっている。
携帯電話からネットにアクセスするということ自体、とてもわずらわしく料金も高額であることから、韓国ではあまり普及していないのが実状だ。
韓国のインターネット白書(2007年データ)によれば、1年間に1回以上モバイル端末を使ってインターネットにアクセスしたことがあると答えた人は、ネットユーザーの半分にも至っていない。韓国人にとって、インターネット=PC利用なのだ。
このような環境の中で、モバイルゲームといえば、携帯電話端末にプリインストールされているシューティングや野球、パズルといったカジュアルゲームが大半を占めている。
また、韓国のモバイルコンテンツは、月利用料ベースの「サイト」で運営されず「1件毎のダウンロード課金」となっているのが特徴的だ。モバイルゲームも、サイトにアクセスしてではなく、携帯電話に1件1件ダウンロードして遊ぶことになる。
1件のゲームをダウンロードするには利用料3000ウォン(約230円)とデータ料が課金されるが、このデータ料金がくせもので、加入している料金制度によっては「どんなゲームがいいかな~」と選んでいるうちに何千円もの料金を取られることがあるのだ。
このため、韓国のゲームポータルサイトには必ず「モバイルゲームコーナー」が用意されている。
パケット通信料の恐怖から逃れるため、PCからゲームポータルにアクセスしてリストアップされている(キャリアの公式コンテンツを PC to Phone (※2)でダウンロード販売している)モバイルゲームを検索。じっくり説明を読んでWEB版で体験してから気に入ったゲームを選んで決済後、携帯電話にSMSで送信。
SMSを受信してダウンロード開始のボタンを押して該当ゲームのダウンロードを始めるというもの。PCのゲームポータルからダウンロードすると、データ料金が無料になるゲームが多いのだ。
決済方法は、携帯電話料金合算請求、もしくはサイトごとに提携しているマイレージが使える。また各キャリアでも、PC to Phone のゲームサイトを運営しているのも特徴の一つにあげられる。
しかし、2007年からはオンラインゲームばかりでなく、モバイル向けRPGや3Dゲームのユーザーが増えてきた。
パケット定額制やモバイル3Dゲーム専用携帯電話端末が発売されるようになり、韓国にもニンテンドーDSが輸入され、予想を超えるヒットを記録したのもモバイルゲームブームのきっかけになった。
2008年には、スマートフォンやタッチパネル携帯電話が大ブームになったこともモバイルゲーム業界を大きく動かしている。
韓国が世界で初めて商用化した「Wibro」(※3)も、モバイルゲームの発展に一役買っていると言える。
また、最近の韓国のモバイルゲームは、iPhone向けに輸出されるほどレベルが高くなってきた。
タッチフォンで人気のゲームは、「パズル」や「脳年齢チェック」といった頭脳派系や、携帯電話を傾けたり振ったりすることで風船を打ち落としたりサッカーボールを転がすといったアクション系の人気が高い。
タッチ式でより楽になったのがモバイルRPGで、液晶も大きくすっきり見せやすくなり、親指で数字パッドを忙しく押すことなくキャラクターを移動させるのに適しているようだ。
しかし、なんといってもモバイルゲームで人気なのは「テトリス」!
ゲームサイトのアンケート調査によると、「移動中どんなゲームしてる?」という設問に対し、6割以上の人が「携帯電話やニンテンドーDSでテトリスをしている」と答えた。やはり、モバイルゲームは誰でも簡単にできて、暇つぶしにぴったりのゲームが一番!ということらしい。
また、G★2008には展示されてなかったが、最近韓国で話題のモバイルゲームは、化粧品メーカーとゲーム会社が提携して制作した「エチュードタイク―ン」というタイトル。
「エチュード」という化粧品ブランドの宣伝を兼ねたゲームで、ユーザーが化粧品専門店の店員となり、接客やそれぞれに合ったメイクをアドバイスしながら商品を販売するという経営シミュレーションゲームだ。
ゲーム中には、実際の店舗で行われるイベント情報が流れ、これを確認すると「ハート」を獲得できる。ハートは店舗で現金のように使えるので、ゲームをいっぱい楽しめば化粧品をどんどん安く購入できるという仕組みが面白い。
ゲーム内には経営だけではなく社内恋愛ストーリーも登場し、「恋愛小説を読むようにゲームに夢中なれる」と宣伝されている。モバイルゲームがマーケティングツールとなる面白い事例になりそうだ。
韓国のゲーム業界では、モバイルゲームの次は、IPテレビ向けにテレビとリモコンを使ったゲームがヒットすると予測されている。 G★2008ではIPテレビ向けのゲームの展示は行われなかったが、携帯電話最大手キャリアの SKTelecom はIPテレビを商用サービスしているため、モバイルゲームをIPテレビ向けにアレンジする準備をしているとのことだ。
※1…i-modeや、EZweb、Yahoo! ケータイなどからアクセス可能なWebサイトのうち、公式サイト以外のWebサイトのこと。
※2…主にPCから一般の電話機へ電話をかけることの出来るサービス。この場合ではPCからアクセスした情報を、モバイルで取得できることを指す。
※3…モバイルWIMAX。時速120Kmで移動しながらも高速モバイルインターネットが使える。
By.趙章恩
Original report (@niftyゲーム)