ポータルサイトの優劣を左右する付加価値サービス――韓国でHOMPYが人気(過去記事)

韓国電算院の「2004韓国インターネット白書」と総務省の情報通信統計データベース4月15日付けを見てみたら、驚いたことに2003年末日韓のインターネット普及率の差はたったの3.9%、日本が60.6%、韓国は64.5%だった。「驚いたことに」というのは、韓国では何でもネットが中心で、ネットから話題が生まれ、子供もお年寄りもみんなネット中毒に近い状態と実感していたので、普及率90%はいくのではと思っていたからだ。年齢別利用率をみると日本は13~39歳までが90%強、50代が60%強、65歳以上も15%だが、韓国は6~29歳までは94%だが、50代は22.8%、60代以上はたったの5.2%であった。この数字だけを見ると日本の方がはるかにネットを使いこなしているのでは、と思ってしまう。

ヒットアイテムを生み出す韓国のインターネット


 韓国でインターネットユーザーというとPCでネットを利用する人をカウントするが、日本の統計には携帯でだけ、ゲーム機でだけネットを利用する人も含まれている。日本のネットユーザーは7730万人、PCのみの利用者は3106万人。この数字だけを比べると日本の普及率は半分以下になるので韓国との差も大きくなるが、ネットに接続できる端末を持っているという意味ではやっぱりその差は3.9%に過ぎない。


 しかし、ネットの使い方、個人がネットをどれだけ上手く使い込んでいるかという点では、日韓の差はまだまだ大きいように思われる。韓国が次々にオンラインゲーム、アバター、電子政府などヒットアイテムを生み出し海外にも輸出しているのは、新しいネットサービスのアイデアを提供し、熱狂的に反応してくれるユーザーがいたからだ。日本のユーザーはネットで何をやっているのだろう。


加熱するHOMPY人気


 この頃韓国ではブログ、正確にいうと「HOMPY」の人気が留まるところを知らない。HOMPYは写真と短い文を投稿するブログの特徴とホームページらしいUI、アバターを上手く取り入れたかわいい画面構成と遊び心が揃った個人ミニホームページのことだ。特に人気が集中しているのはSKコミュニケーションズの運営する「NATE.com」が昨年5月M&Aした「サイワールド」(www.cyworld.co.kr)だ。


 大学生と若い会社員を中心に、サイワールドのHOMPYを持たない者はいないといわれる程だ。サイワールドのHOMPY会員は680万人、他のサイトのブログや元祖HOMPYサイトである「セイクラブ」(www.sayclub.com)からの引越しも後を絶たない。一般人だけでなく政治家や財閥のファミリー、ノ・ムヒョン大統領の息子の夫人までもHOMPYに自分の日常や子供の写真を公開したほどで、「サイホリック」(サイワールド中毒)は職業、年齢を問わない。


 親しい友人のHOMPYを「親戚」として自分のHOMPYにリンクしておいて次々に訪問することを「波に乗る」といい、一言ずつレスポンスを残してあげるだけで2~3時間はかかってしまう。カメラ付き携帯の普及もHOMPYの人気をあおり、携帯で撮ったらメールではなく即HOMPYに掲載するのが常識になっている。三星など大手企業では社員の勤務中のHOMPYアクセスが後を絶たず、サイワールドを「業務妨害サイト」に指定し社内からのアクセスをサーバーで遮断している。何でも気軽に書けるHOMPYの雰囲気から社内情報が外に漏れるのを心配しての処置でもある。


既存コミュニティーサイトの有料化が発端


 HOMPYの誕生はある人気サイトの没落と深い関係がある。1日平均195万人が訪問し最も人気があったコミュニティーサイト「フリーチェル」は2002年11月、コミュニティーサイトの利用に毎月定額を課金する有料化を実施した。しかしこれが失敗で、フリーチェルは現在市場から消えかかっている。昨年6月から無料サービスを再開し、コミュニティー当たり保存容量を50MBから100MBに増やしたが、一度逃がしたユーザーは戻って来なかった。ユーザーに何の前触れもなくいきなり有料化を宣言し、ユーザーの反発にも耳を貸さず一方的に推進したことが原因だ。


 コミュニティーを他のサイトに移転するのは簡単ではないが、それ以上に一度離れたユーザーを呼び戻すのは難しい。フリーチェルを離れたユーザーは当時同じようなサービスをしていたサイワールドに集まり始め、そのユーザーを種にしてコミュニティーの中で自分をアピールするためアバターを利用したプロフィール紹介としてHOMPYをスタート、ユーザーのアイデアを取り入れながら今のようなHOMPYに発展させた。


新鮮で面白い「個人の何気ない日常」


 韓国のネティズンはコミュニティー、掲示板、チャットでは満足できず、いつも「自己アピール」したい欲望を持っている。日本では自分を下げて相手を大切にする謙譲の美徳というがあるが、韓国は逆だ。知らなくても知っているふり、常に「自分」を主張しないと本当にこの人は何も知らないから大人しいのかも知れないとバカにされる。


 HOMPYは自己アピール以外に他人の日常を覗く面白さも教えてくれたわけだが、これはネットが発展すればするほど強まる傾向ではないだろうか。動画、音楽、アダルトコンテンツなどはもう当たり前すぎて面白くなくなり、ネットと現実社会、実生活の区別がつかないほど高度なネット社会になればなるほど、個人の何気ない日常が新鮮で面白く感じられるのではないだろうか。


HOMPY がポータルサイト優劣のカギ握る


 サイワールドの売上は2004年末で前年比2.5倍の250億ウォン(約25億円)の見込みだ。これは無料サービスでありながら着せ替えキャラクター「アバター」の部屋を飾り「ミニルーム」を作るのが重要なポイントにもなるので、その有料化から収益が生まれている。アバター関連アイテム、BGM、スキン(背景画面)は全て有料で、サイバーマネーの「どんぐり」を1個100ウォンで買って利用する。


 Q&A型でユーザーの知識をデータベース化する知識検索のブーム、100MB~200MBと大容量の無料メールに続き、2004年のポータルサイトの勝負どころはブログやHOMPYのように個性をアピールしながらコミュニケーションできるツールに移動している。頻繁に訪問し、しかも1回の訪問時間が他のサービスより長いので固定ユーザーを確保しやすいのも魅力だ。ポータルの中でもシェアが少なかったNATE.comはサイワールドと合併後、HOMPYの人気のお陰でYahoo!Koreaを押しのけ、NAVER、DAUMと並び3大ポータルサイトに成長した。


サイト成功のカギはユーザーが握る


 NATEの合併成功に驚いたネットベンチャー系のEMPASやDREAMWIZなどのポータルサイトもブログやユーザーの個性をアピールできるコンテンツサイトとのM&Aや集中投資でもう一度市場シェアを伸ばしてみようと考え始めている。久しぶりにインターネット業界が騒がしく動き始めている。


 特に全国民の半分以上が会員と言われる無料メールとコミュニティーが中心のポータル「DAUM」は、「NAVER」に次ぐ2位に順位が下落、何か新しいサービスを取り入れなくてはとあせっている。NAVERが昨年から知識検索という会員同士の質問と答えを投稿型オープン辞書にして検索に追加したためだ。そこで、今年2月にはNAVERの知識検索とブログ、NATEのHOMPYのいいところだけを取り、100MBの無料メールをつけたポータル「マイM」(www.mym.net)を新登場させた。


 インターネットサービスは景気の影響はあるものの、それでも未来への成長エンジンに間違いないという確信をHOMPYが見せてくれたといえる。インターネットサービスにはあまり関心のなかった大手企業の参入で、数百万人の会員を持つ既存ポータルと資金を武器に次々とM&Aで迫る大手との勝負は既に始まっている。だが成功のカギはやはりそれを使いこなしてくれるユーザーにかかっている。



4月末の韓国サイトアクセス数TOP20





















































































順位 URL 分野
1 www.naver.com 検索ポータル
2 www.daum.net コミュニティーポータル
3 www.nate.com 有無線ポータル
4 kr.yahoo.com 検索ポータル
5 www.empas.com 検索ポータル
6 www.bugsmusic.co.kr 音楽ストリーミング
7 www.sayclub.com アバター、コミュニティーポータル
8 pmang.sayclub.com オンラインゲームポータル
9 www.sportsseoul.com スポーツ新聞
10 www.chosun.com 朝鮮日報=日刊紙
11 www.auction.co.kr オークション
12 hangame.naver.com オンラインゲームポータル
13 www.kbstar.com 国民銀行
14 www.msn.co.kr コミュニティーポータル
15 www.dreamwiz.com コミュニティーポータル
16 www.mym.net 検索ポータル
17 www.msn.com コミュニティーポータル
18 www.netmarble.net オンラインゲームポータル
19 www.ohmynews.com インターネット新聞
20 www.freechal.com コミュニティーポータル
出典:Rankey.com




by- 趙 章恩


 


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