世界初、世界最高という言葉が大好きな韓国情報通信部。この単語が入らないプレスリリースは見たことがないと言われているほど、IT強国を作ったという自負心は強い。5年以上もIT強国と呼ばれ世界各国からの視察や取材に追われ浮かれていた彼らが、やっと海外の現況に目を向け始めた。
ショックを受けた韓国視察団
10月7日から3泊4日、情報通信部の東京ホームネットワーク・ユビキタス関連戦略やショールームの視察に同行した。メンバーは情報通信部課長や傘下研究機関の部長クラス。総務省、経済産業省、松下電器、特にe!戦略やその実験場になっている六本木ヒルズでは全員無口になってしまうほどショックを受けていた。
大型展示会や国際会議もホテルが足りないという理由で諦めてしまうほど、ソウルは狭い。土地があったとしても、政府と民間がうまく手をつないで先端情報通信の体験場を作れるかどうか、自信がない。経済産業省でも韓国が考えているのとほとんど同じ内容の「e-lifeイニシアティブ」戦略を聞いてびっくり。長官(大臣)報告用の出張報告書には「IT強国と呼ばれる日もあとわずか」という危機感が強く表れていた。
ホームネットワークを担当しているファン・イファン課長は「日本はITが遅れていると聞いたが、それはITだけでも日本に勝ちたい韓国の勝手な思い込みだった。井の中のかわず大海を知らずと言うが自分がそうだった。これから日本との情報交流を積極的に進めたい」と、帰国後早速韓日の実務レベルでの交流を始める準備にとりかかった。
韓国のマンション群 |
BCN計画でブロードバンド化を推進.
韓国政府が世界初を目指して新しく計画していることがある。ブロードバンド統合網(Broadband Convergence Network)、BCN計画だ。今年から始まった「ブロードバンドITコリア建設」のキャッチフレーズに合わせ、既存の次世代統合網(NGcN: Next Generation convergence Network)を新しくアップグレードさせたものだ。
何よりも「Convergence(集中、集約)」に重点を置いたもので、ユビキタス環境を強調している。現在2Mbps水準のADSLを2007年までどの国より先に全国を50-100Mbpsのブロードバンド統合網に生まれ変わらせる、ホームネットワークやFTTHの活用に2400億円の研究開発資金を投入、ブロードバンド関連ビジネスだけで輸出を含め60兆円の売り上げを達成する、というのが基本方針だ。VDSLで50Mbps、携帯は3Gで2.4Mbpsまで発展したが、音声とデータ、有線と無線、通信と放送など「統合」という意味ではまだ遅れている。
このBCNを基盤に有線、無線、家電、放送などをつなげユビキタス環境を構築、HDTV、遠隔教育、電子医療、情報家電やホームネットワークも普及させる。IPv6も早期導入する。来年だけでホームネットワークの政府予算は120億円を上回っている。
放送業界でも1000万のCATV加入世帯を中心にHFC (Hybrid Fiber Coax)を活用し、低コストでネットワーク変えていくのではと展望している。通信装備も今まで50%以上を海外に依存していたが、今回のBCN計画では装備の研究開発にも力を入れ、投資不足による技術不足、収益不足を改善していく。
IT強国を維持するために必死の努力
BCN計画は10大次世代成長産業 の一つとしてIT強国・韓国の終着駅とも言われている。韓国GDPの15%を占めるIT分野を集中育成し、2007年にはITがGDPの20%、雇用150万人、輸出1000億ドルレベルに到達させる。2012年の国民所得を2万ドルにするにはそのうち5000ドルをIT産業が占めるようドライブをかける。
このためLG電子基幹網研究所長が民間責任者に抜擢され、韓国電子通信研究院(ETRI)や韓国電算院など国家シンクタンクを総動員、技術開発から商用化までを責任を持って管理させる。
BCN計画は10月までに基本戦略案を、年末までに具体的な実行案をまとめる。IT強国と言われつづけるため、韓国情報通信部は今日も必死だ。
by- 趙 章恩
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