韓国では、携帯電話を使ったモバイル決済システムは未来型ではなく現在進行形で急発展している。韓国銀行は2月、銀行共同モバイル支給・決済システムを今年上半期中に整備し、2カ月間の実験運用期間を経て、10月から本格的に携帯電話を利用した個人間送金、公課金納付、テレビ・インターネットショッピング代金支払いなどができるようにすると発表した。
業界の綱引きと規格統一が課題
だがモバイルコマースへの道はまだ障害が残っている。金融業界は移動通信社のモバイルカードサービス市場進出に対し、「移動通信社が金融業界を支配しようとしている」と反発している。一方、カード各社は「加盟店手数料配分」を問題とし、移動通信社はカード社が参入するため必要な決済インフラ構築費用をカード社ももっと負担するよう要求している。
問題はそれだけではない。移動通信3社は現在、全部違う決済方式を採択している。標準化問題が解消されない限り、お店に置く決済用の端末をキャリア別に全部違うものを用意しなくてはならない。無駄な重複投資をなくすためにも標準化を急がなくてはならないが、赤外線決済の技術を開発した企業とキャリアの対立も激しく、なかなか前に進まない。キャリアとしては「多くて5%の決済手数料をカード会社と開発会社、キャリアで分けるといくらにもならないので独自にやる」と主張し、開発会社やカード会社は「すでにある程度インフラが整っているのに、わざわざ新しくキャリアが自社のシステムを強要するのは無駄」、「特許があるので差し止めする」と息巻いている。
しかし韓国ではどんなことがあろうと、「モバイルコマース元年」が今年であることはだれも否定しない。
新機能の追加で市場拡大をねらう
携帯電話利用者が人口の80%を超え市場飽和とも言われている中、モバイルインターネット以上に収益になるビジネスとして、移動通信キャリアは決済以外にもGPS位置情報、VOD、オーディオ、動画撮影など、新しいサービスをどんどん追加している。韓国の若い世代は値段よりデザインと機能を重視するので、機種の買い替え周期も早く、スライド式だとか、アバタ機能で発信者を区別できるとか、テレビが見られるとか、電話以外の機能をもっともっと増やしてほしいと思っている。
SKテレコムの端末製造子会社のSKテレテックはスライド式で2.4Mbpsの速度で音楽をダウンロードして楽しめる「ミュージックフォン」を発表した (CDMA2000-1x EV-DO GPS搭載 モデル名SKY IM-6100) 。連続撮影できるCCDタイプのカメラもオプションで付けられる。ダウンロードした音楽は着メロとしても使え、ステレオイヤホンを標準装備する。値段は55万ウォン(約5万5千円、カメラは別)。
2000年に登場した「SKY」は若者たちの間で「富」の象徴と言われるほど人気の高い端末である。いちばん高価な端末だが、白いボディカラーも、名刺より小さいサイズも「SKY」が最初だった。主に10代と20代をターゲットにし、エンターテインメント機能を強化している。
LG電子は最高級動画撮影カメラ内蔵型IMT-2000端末を発表した。26万2000色のTFT-LCD、双方向ビデオ電話、30万画素(VGA級)内蔵カメラによる動画撮影、韓国初の連写機能、黒白撮影など、これまで登場した製品の中で最も高性能のデジタルカメラを搭載しながらコンパクトなサイズに収めた点が特徴。動画は最大30分まで保存できる(モデル名: LG-SV110, LG-KV1100, LG-LP1900)。通信速度は最大2.4Mbps速度で画像のやり取りもOK。
三星電子は一足先に韓国初動画を撮影出来るITM2000端末を発表したが、連写と動画保存時間ではLGの方が上だ (モデル名:SPH-V3000) 。 しかもLGは20万ウォン台と三星の半分程度の価格なので、これで何とかシェアを上げたい気持ちだろう。LG電子は「カメラ付き携帯電話に続き、今年からは動画撮影携帯電話が新たな市場を形成し、端末市場の10~15%を占める」と予想している。
GPS機能に注目
ペンタック&キュリテルはGPS搭載端末の出荷をスタートした(モデル名キュリテル DD-630)。自分の現在位置と行きたい場所を正確に案内するこの端末はSKテレコム利用者専用だ。交通情報、映画館、レストランなどの位置情報以外にGPSボタン一つで自分の居場所を警察や消防署に伝え救助してもらえる機能が特徴で、まだ始まったばかりの位置基盤サービス(LBS : Location-based Service)市場の火付け役になっている。値段は40万ウォン台(約4万円)。三星電子もGPS端末に進出している(モデル名X650、X750)。
韓国ではGPS搭載携帯端末は2002年後半から登場しており、サービスとして登場間もない。モバイルコマース以上に関心を集めているLBSは、韓国ではGPSと基地局を利用した端末の位置情報を合わせたハイブリッド方式を標準にする見込みだ。この新しいサービスの導入で2005年の携帯電話利用者数は人口の95%まで上昇、位置情報による移動通信社の新規収入だけで年間1兆ウォンを超えると予想している。利用者の位置情報を基盤にするサービスはこれから無限の応用が期待される有望分野だ。移動通信を管轄する官庁である情報通信部は今年、LBSを主力産業として5年間390億ウォンを投資し育成しようと考えており、CDMAに続き主要輸出産業として育てると発表した。
端末だけでなくコンテンツの競合も
韓国の携帯電話市場は、間もなく移動通信網が日本のように公開され、公式サイト以外でもどんどん携帯にコンテンツを流せるようになるので、端末に続いて今度は携帯コンテンツ分野での激戦が待ち構えている。モバイル通信料金や端末の価格引き下げ、011、017、018、016、019に分けられた携帯番号を010に統合する問題など、課題は多く残っているが、新政権の誕生とともに2003年韓国のITは復興の道を歩むと確信されている。携帯を中心とした韓国の新しいモバイル産業に期待する。
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100ウォン:約10円 |
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by- 趙 章恩