<韓国リポート>ブロードバンド先進国の悩み(下) 陽気で礼儀正しいインターネット中毒者達 (過去記事)

インターネット中毒、というと青白い顔に、暗く引きこもりがちな性格を思い浮かべる人が多いと思う。だが最近、韓国のインターネット中毒者達はとにかく明るいのが特徴だ。OFF状態ではごく普通の学生だったり、物静かな会社員だったりする人達が、ONになった途端ハイテンションで個人の意見を強く主張しながらもネチケットを守り、顔の見えない相手のこともちゃんと尊重する、選挙は面倒くさくてしないが政治に詳しく好き嫌いがはっきりしていて、テキストよりは画像を好み意思疎通も簡単明瞭、敵を攻撃する時はハッキングはせず、面白い合成写真を作りネットにばらまき精神的な被害を与える……。このような新しいネティズン集団を韓国では (A HEH HEH) と呼んでいる。 達は自らを「廃人」と呼んでいるが、オフ会に参加した人によるとスーツ姿のサラリーマンが多くてびっくりしたそうだ。

■どんどん意味が広がった


 、この単語はハングルの組み合わせではあり得ない、間違った意味のない言葉になる。韓国人でさえこれをどう読めばいいのか分からないが、笑い声のようだと答える人がほとんどだ。 はデジカメ情報サイトである、DCINSIDEのサイトから始まった新造語だ。このサイトにはユーザーが自分のデジカメで撮った画像を載せられる「ユーザーギャラリー」があるが、ここから  という単語が誕生した。あるユーザーが間違って  と打ったのを他のユーザー達も面白がって使い始め、瞬く間にネットの世界へ広まった。 の使い方は何か返事をしてあげるべきだけと特に言いたいことがない場合、「^^」ぐらいの意味で使われていたが、どんどん意味が広がり、ついにどんな時でも  としか言わなくなったユーザーが激増している。 文字入りのTシャツも大人気で、ワールドカップの赤いTシャツに「BE THE REDS」ではなく、 とプリントされたのをネットで売っている。 


 DCINSIDEのユーザーギャラリーは色々なカテゴリーに分けられていて、その中で一番人気なのが「猟奇」と「合成」だ。(猟奇という言葉は韓国では2000年以降、面白い、斬新、びっくり、という肯定的な意味で使われている。これもネットが生み出した現象。  は猟奇のような意味合いでも使われている。)合成写真はここに集められている。








 


デジカメに凝ったユーザーが普通の画像では満足できず、小便禁止と書いてハサミも描いてある面白い看板を撮ってみたり、自分でコスプレして撮ってみたり、女の人の銅像を抱いて幸せな顔をした演出写真を撮ってみたり、色んなことをやっているうちに合成写真の面白さに目が覚めてしまったのがここの猟奇コーナーの始まりだ。DCINSIDEは他の韓国のウェップサイトとは違い、とにかく写真が好きな人が集まるので、どんな画像を載せてもまじめにコメントしてくれることが多かった。写真に関心のある分、画像に関するあらゆるソフトウェア-を操れる人も多く、一人二人画像に手を加えどんどん新しいものを載せ反応を伺っているうち、猟奇な画像がどんどん増えてきた。


■あやふやな特徴


 ここで芸能人、政治家、映画のポスターに混じって登場回数が多いのが、SMAPのメンバーで韓国でも歌手デビューした「チョナンガン」だった。


 韓国の映画やスターウォーズのポスターにチョナンガンの顔を合成させたり、チョナンガン・ファミリーを作ったり、 達は愛情を込めてチョナンガンを登場させていた。何を言いたいのかよく分からない愛の歌を歌う、真っ赤な頬のやせた男、チョナンガン程韓国でいう猟奇の意味にぴったりな存在はない。 達が狂喜するのも無理はない。


 ポータルサイトDAUMの  特集でも、 のキーワードとしてチョナンガンを取り上げていた。少なくない歳、アイドル、赤いほっぺた、日本人、韓国を愛してる、このように似合わない組み合わせを全て揃えた、ビビンバッ(韓国の混ぜご飯)のようなチョナンガンから漂うあやふやなイメージ、男なのか女なのか、日本なのか韓国なのか、ボーダーラインのない奇妙な魅力が  達に楽しみを与えているのではないだろうか。


  の特徴もこのあやふやなところにある。前のPC通信世代とは違い論争を嫌う。意味のない  のような言葉で掲示板を埋め尽くし、それで終わる。何を意味するのか分からない単語をどんどん作り出す。だが政治や社会的問題にも興味がないわけではなく、合成写真で論評する。


  達がチョナンガンに好感を持つのは、日本の漫画を見て育ち、日本の電化製品も大好き、でも日本は韓国を植民地支配し悲しい歴史を残した国、どう接したらいいのか分からないとういう韓国の若い世代なら誰もが抱える悩みを、「サラウルへヨ~(愛をしてる)」と文法が合ってないような歌を歌いながら登場したチョナンガンほど、好き嫌い論争を飛び越え日本は日本、チョナンガンはチョナンガン、 は 、とあやふやにしてしまう存在もないからだと思う。


■どんどん広がるインターネット中毒の輪


 日本だと合成写真は名誉毀損、肖像権侵害にあたるとして絶対許さないだろう。だが韓国では、悪意のこもった明白な名誉毀損と判断しにくい合成写真がほとんどなので、取り締まる場合、韓国全土が熱くなるだろう。走る政府の上に飛ぶ「ネティズン」と言われている。P2P音楽ファイル共有サイト「ソリバダ」の閉鎖が決まった途端、猛烈な反対運動と共に、止めるどころか外国にサーバーのある他のP2Pサイトにそっくり移ってしまった。「情報の海」を法律で取り締まり、「ネティズン」を刺激するより徐々に有料化やコピー防止をするべきという意見と、取り締まらない限りなくならないという意見が激しくぶつかっている。


 インターネット中毒までいかなくても、ネット利用時間がどんどん増えるに連れ韓国の「ネティズン」、インターネットユーザーは新しいパワー集団として韓国はもちろん全世界を驚かせている。ハッキングではなく、何百万人ものネティズンが同時接続したり、抗議のメールを送ったりすることで意思を表す。インターネット文化を作り出し、支配する主体として、韓国のネティズンは誰一人例外ではないのだ。創造的で他人を楽しませる、絶対引き込まない愉快なインターネット中毒の輪はどんどん広がっている。  の次はどんな「廃人」達が出番を待っているのか、インターネットは奥が深い。






[関連サイト]
http://www.ahehheh.com/

DCINSIDE http://www.dcinside.co.kr/


ユーザーギャラリー http://www.dcinside.com/gallery/usergallery.htm マシマロ(うさぎ)の人形のあるメニューが猟奇、その下が合成。




by- 趙 章恩


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