第16回:2005年最高のドラマはやっぱりキム・サムスン!









第16回 2005年最高のドラマはやっぱりキム・サムスン!

2005年12月21日


 クリスチャンが多くクリスマスが国の公休日である韓国では、この時期になると教会や聖堂の十字架に豆電球が飾られ、募金を求めるボランティアの訪問もぐっと増える。イブの夜は家族と一緒に教会に行くべきか、友達とスキーに行くと嘘をつき恋人と熱い一夜を共にするべきかで揺れる青春男女の煩悩が雪へと変わる時期でもあるのだ。ソウル市庁広場には今年もスケート場が開設され、ルミナリエも一層きれいに輝いている。

 明洞にある聖堂にはロウソクがいっぱい灯され、パイプオルガンが演奏される。誰でも自由に入れるので恋人達が並んで座りお祈りをする冬ソナのような場面があちこちで目立つ。クリスチャンでなくても、クリスマスだけは聖堂でミサに参加してみたい気分になったりするんだよね。

 韓国のお正月は旧暦なので、2006年のお正月は1月29日。だから年末、年明けという雰囲気はまだこれからだけど、TVではもう今年の総決算が始まっている。

 NG名場面や名セリフ集、芸能ニュースTOP10、映画賞、芸能大賞などの授賞式が続々行われているので気分はもうお正月である。結婚する前は、お正月はセベ(韓服を着て礼をするお正月の挨拶)して、お年玉もらって、トックッ(棒のような白く固いもちを斜めにスライスしてスープに入れたもので、お正月の朝必ず食べる)食べて、早速映画やショッピングに繰り出したもの。しかし、結婚した途端、「今年のトックッは一体何人分作るのかな…、皿洗いは…、お年玉は一体いくら用意すればいいんだ!!」と頭を抱えブルーな気持ちになってしまう。イケナイ、イケナイ。今年の名ドラマを思い出して気分転換しなくちゃ!

●「サムスン」からは人気俳優が続出

 あちこちのポータルサイトで年末まで行われる2005年ドラマ人気大賞投票を見ると、
このコラムでも紹介したことのある、視聴率50%超えのMBC「私の名前はキム・サムスン」が他を圧倒して1位になるのではないかと予想される。

 30歳、職もなく恋人もいない、いつもダイエットに失敗してばかりのサムスンが年下社長と出会い恋に仕事に燃える「恋愛奮闘記」とも言えるこのドラマは、サムスンが失恋を予感し、酔っ払うといつの間にか隣に座っている(サムスンの幻想に現れる)亡くなったお父さんに「心臓がかちかちに硬くなっちゃえばいいのに」(そうすれば失恋で胸が痛むこともない)と泣きながら訴える場面や、年下の彼に結婚するまではベッドインできないと拒みながらも、「もう何年も飢えているこの姉さんは血の涙を流したいよ」と、逆に彼を襲いたい気持ちを抑え込む場面が話題になった。

 そして、このドラマがきっかけでブレイクした俳優は数知れず。主人公のサムスンを演じたキム・ソンアはコミカルな演技で映画でもヒットを飛ばしていたが、このドラマで下半期広告モデルとして引っ張りだこに! ベーカリー、フライドチキン、ブロードバンド、コラーゲン飲料、DHCなどに登場している。

 自分勝手で生意気だけどかわいい年下の彼のヒョン・ビンもドラマ以降絶好調で、数々のCMに登場。映画にドラマにと続々と主演が決まっている。

 アイドルグループ出身で、サムスンとは正反対のキャラクターを演じ、視聴者を泣かせる好感の持てる悪役だったリョウォンは、キム・ソンアをしのぐ人気。自動車、化粧品、建設、ファッションなど10本以上のCMに登場している。そして、「リョウォンが番組で身に着けた洋服やアクセサリーは翌日完売する」とまで言われるほどで、“韓国の20代女性がもっとも真似したい女優”にも選ばれている。また、芸能番組の司会までやっているが、実は、主役に抜擢されたドラマ「ガウルソナギ(秋の夕立)」では視聴率が2%という驚異的な(!?)記録を打ち出し、今年最悪のドラマに選ばれそうな雰囲気。リョウォンもがっかりした様子で、「当分は休養して演技の勉強をし直す」と言っている。

 そして、サムスンといえばやっぱりこの人! 今年最高の新人ダニエル・へニーだ。お母さんは韓国人、お父さんはイギリス人でアメリカで生まれ育ったハーフのモデル。サムスンに出演する前は、色んなCMに出ていたにもかかわらずまったく注目されていなかった。

 初めてのドラマで大ブレイクした今では、サムスンの出演者の中で人気NO.1。広告モデルとしてはもちろん、「ただそこにいるだけで癒される~」と幅広い年齢層に支持され、あちこちのトーク番組や芸能番組で特別ゲストとして招かれている。韓国語がほとんど喋れないので広告の仕事が中心だが、もっともっとドラマや映画でも活躍したいと、一生懸命韓国語と演技の勉強をしているとか。


●ハッピーエンドの「グムスン」も外せない

 9か月間も月曜から金曜まで30分間毎日放映された「
グッセオラ・グムスンアVOD・海外からの視聴は1話1,000ウォン、頑張れグムスン、直訳すると「たくましくなれ、グムスン」)も2005年の代表作。








ハッピーエンドはグムスンの再婚
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最初グムスンはこんなにダサかった!
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 お父さんは事故で亡くなり、お母さんは家出、祖母の元で育てられたグムスンは二十歳そこそこで妊娠し結婚するが、なんと3日後には夫が交通事故で死亡。夫の家族と同居しながら子育てと家事に追われ、嫁という立場に悩み、美容師としての夢を追いかけるという悪戦苦戦が主婦層の涙を誘い、20~30%台の安定した視聴率を維持した。

 最後はグムスンの再婚でもめにもめるが、結局ハッピーエンドで幕を閉じる。その、子連れ美容師アシスタントと独身エリート医者の再婚は現実離れしていて空想ドラマと悪評されたり、夫をひき殺した犯人が再婚相手という設定に「それはひどすぎる」と視聴者からの声が殺到しストーリーが修正されたりと、色んなことがあった。

●ホームドラマ人気のその訳は?

 ここ数年、トレンディードラマよりも家族の絆や夫婦の絆といったホームドラマの方が視聴率が高くなっている。それには、多忙な10~20代の若者にはネットや携帯電話から再放送を利用する人が多く、巷で話題のドラマも視聴率は10~20%そこそこ、その一方で、それほど話題でなくても、TVの前に座りっぱなしの高年齢層をターゲットにしたホームドラマは視聴率だけは30%超える、といった事情がある。広告を考えると視聴率が重要だから、少しでも視聴率が落ちるとシナリオを修正して、登場人物を交通事故や結婚や留学で片付けて早期終映することも多い。

●早期終映の名作ドラマ「ビョルスンゴム」

 個人的にとても残念なのはMBCの「
ビョルスンゴムVOD・海外からの視聴は1話1,000ウォン、別巡検、朝鮮時代の秘密偵察を担当した刑事)」という朝鮮時代を背景にした時代劇風刑事ドラマが、たった5話で早期終映してしまったこと。









4人の刑事が主人公
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冷静で頭の切れる刑事サユル役のチョン・ユソク。オールインで執拗にイナの人生を狂わせようとした悪役イム・デスを演じた人
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 「茶母」、「大長今(邦題:宮廷女官チャングムの誓い)」の雰囲気そのままに、何度もどんでん返しを繰り返しながら犯人を追う、昔の警察と法医学者たちのスリリングなストーリーが本当に面白かった。これは実録である朝鮮後期の法医学書に登場する事件をドラマ化したもので、殺人なのか自殺なのかを科学的に実証する方法や死体の検視方法が生々しく登場し、毎回「へぇ~」と口を開けて見入っていた。

 朝鮮時代のことなので専門用語などは漢字と解説が字幕で入り、ちょっとした豆知識にもなった。マニアも多くて視聴者掲示板には始終「とても新鮮!」、「150年も前に科学捜査隊がいたなんてすごい!」、「いつも冷静でクールな刑事とおっちょこちょい刑事のかけひきも見ものだけど、リアルすぎる死体は夢に出てきそうで怖いです」などなど、応援メッセージが絶えなかったのに。早期終映はどうしてなんだ~。

 久しぶりに子供からお年寄りまで楽しめるドラマが始まったと思ったのに、そして特に視聴率がよくないという理由でもないのに、突然やめてしまうなんて。サムスンの成功以降、どのチャンネルも、サムスンのような無鉄砲な明るくちょっととんがった年上彼女と、わがままだけど愛嬌たっぷりのかわいい年下彼氏が登場するドラマばかり作ろうとするから面白くない。

 また、「韓国ではまったく人気がなくても日本で売れればそれでいい」と断言する純愛ドラマも多いのは、ちょっといただけない。「ビョルスンゴム」みたいに、どんどん新しいジャンルを作らないとだめだよ~。

 そのほか、このコラムで紹介したドラマはすべて名ドラマ度上位にランクされているので、見逃した方はぜひダシボギ(VOD再放送)で年末までにじっくり堪能しましょう。来年も、“先が読めてしまうけどつい観てしまう”韓国ドラマのあれこれをお伝えします!

 セへ ボッ マーニ バッウセヨ (新年福がたくさんありますように)

By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情」
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