第15回:離婚するべき? しないべき? 視聴者が作る夫婦ドラマ







第15回
離婚するべき? しないべき?

視聴者が作る夫婦ドラマ

2005年11月24日


●今年も冬ソナの季節がやってきた

 昨日(11月21日)ソウルは初雪だった。といっても深夜ちらっと降っただけだが、ついに冬ソナの季節かと思うとこの1年も早すぎ~と年取るのが悲しくなってしまう。

 韓国人は初雪といえばみんな何かしら甘酸っぱい思い出を持っている。ドラマに限らず全国のカップルが「初雪が降る日にどこどこで会おうね!」と約束をするのが通例。初雪が降る日彼女のマンションのベランダの下で雪だるまを作って彼女が窓を開けるまで待っていたとか、雪に足跡で「サランへ!(愛してる)」と残して「外見て!」とショートメッセージを送信するなんていうのはもう古いといわれているけど、でもやっぱりいるんだよね。特に遠距離恋愛なんて初雪が降る日の長電話は基本中の基本である。韓国に彼氏がいる人は天気予報をチェックして、雪の日には必ず電話をするべきである。

 韓国の冬は三寒四温といって、寒い日が3日続いて温かい日が4日続くんだけど、雪はいつも暖かい日に降る。この時期海に行くと、ドラマのように人の少ない雪の海岸を走りながら「私を捕まえて~」なんてことをやっているカップルの多いこと~。こんなバカカップルをダッサルカップル(鳥肌カップル)と呼んでいる。

●ネット発書籍「今週、妻が浮気します」が韓国上陸

 先日、こういう1年を振り返る時期にふさわしい本が日本からやってきた。日本で話題の「今週、妻が浮気します」(
関連記事)の韓国翻訳版である。韓国ドラマの常連素材の「浮気」、でも韓国では儒教の考えが残っているせいか、男性の浮気は許しても女性の浮気は許せないという人が多い。女性は結婚すると何よりも子供が大事なので浮気など想像もしないだろう、と男性たちは勝手に思い込んでいるようだ。だが、同じ女性の間でも女性の浮気はタブーで、夫の浮気に耐えられず苦しんでいるとき素敵な人に出会ってしまった、という同情的な場合以外はとんでもない人とレッテルを張られるのがオチ。ドラマでも妻の浮気はめったに出てこない。

 年中ドラマでは浮気する夫が出てくるけど、韓国で結婚した人の浮気は犯罪だ。懲役2年以下の姦通罪に当たる。これは離婚届けと同時に配偶者が警察に届け出る親告罪で、最後の手段として残されている。この前テレビの討論番組で姦通罪を廃止するべきかについてやっていたけど、難しい問題だよね。ドラマではこれを悪用して酔っ払った男性を引きずりこんで女性と一緒にいる写真を撮り、「私の妻と浮気するなんて姦通罪でぶち込んでやる~」と和解金を要求する場面が度々出てくるんだけど、実際にもこういう詐欺があるみたい。

 だから「今週妻が浮気します」は、韓国では表に出ない女性の浮気をテーマにした本だからと、最初は「失楽園」並みのすごいディープな小説と思われていた。だが中身はすれ違う夫婦、妻を愛しながらうまく表現できなかった夫の切なさ、一生懸命自分のことのように興奮し激励し見守ってくれるユーザたちの暖かい気持ちが一冊にまとまった、夫婦愛を書き綴った特別な本だったからその意外性から静かにブームになっている。「浮気」をテーマにしながら、これほど「私も文句ばかり言ってるけど、やっぱり旦那さんのことを愛していたんだわ」と気づかせてくれる本はない、とまで言われている


●夫婦の危機をドラマ仕立てにした『夫婦クリニック愛と戦争』







姑のいびりが原因で離婚する夫婦がまだまだ多い。結婚したての奥さんは写真のように上は緑、下は赤の韓服を着る
(c)KBS
(※ 画像はすべてクリックで拡大)
 最近の韓国女性はとても強いので(これは世界的な傾向かも)、お母さんの世代のように夫が戻ってくるまで耐える、子供のために我慢する、なんてことはあまりない。浮気といえば泥沼、即離婚になりかねないのが現実。韓国夫婦の「こんなのあり?」と引いてしまうほどの泥沼をよ~く見せてくれるのがこれ、KBS2の金曜ドラマ『夫婦クリニック愛と戦争』(以下『愛と戦争』)。

 視聴者から寄せられた離婚の危機に陥った夫婦の事情をドラマ仕立てにし、視聴者がこの夫婦は離婚するべき、しないべきという風に電話とネットから参加する視聴者参加型ドラマで、5年間も15~17%の視聴率を維持している人気番組だ。毎回最後は離婚調整のために法廷を訪れ、判事から説教される場面で終わるところが韓国らしい。

●ウソのような泥沼再現ドラマはすべて視聴者から寄せられた実話

 『愛と戦争』では、「大恋愛で結婚したのに姑のいびりと忙しさを理由にかまってくれない夫が問題で離婚することになった話」、「自分の父が残した遺産を資金に成功したのに、若い新入社員と浮気の末離婚を要求する夫に復讐するため不倫現場を隠し撮りして姦通罪で告訴しようとするが、そんなとき、夫は女性社員らがセクハラで訴えられることになり、妻は会社を守るべきかそのまま放っておくべきかで悩む話」、「絶対幸せにさせるからと積極的にアプローチされて再婚したのに、子供を理由にいつまでも前妻と仲良くする夫が許せないと姦通罪で訴えた話」、「ある日、若い女性が家に乗り込んできて、『結婚した人とは知らず7年もあんたの夫と付き合ったのだから、そろそろ妻の座を譲ってくれ』と言われたが、妻はむかついて復讐のためにも離婚できないという話」、「自分の成功を嫉む兄嫁に『社長と浮気しているらしい』と姑に嘘をつかれ、離婚の危機に陥ってしまった話」、「若い男の子とチャットで出会い浮気する妻、浮気と思い待っていたが妻が戻ってきた途端にいやになり離婚したくなった夫。しかし、妻が離婚だけはイヤだとすがりつく、という話」、「学生結婚でままごとのような新婚生活のはずが、姑が出産し赤ちゃんの世話を押し付けられるはめになり、自分も子供を生んだのに何事も孫より自分の子供を優先させる姑のせいで結婚生活を維持する自信がなくなる話」等々、“戦争”のような夫婦の事情が毎週紹介されている。

 毎回視聴者の意見は「離婚するべき!」が圧倒的に多い。なんでも「離婚しちゃえ~」というなら視聴者の参加はあまり意味がないように思えるが、現実にこんなことがあり得るだろうかというような内容が毎回登場するから仕方ない。ここに登場する話は、すべて視聴者から寄せられた実話だそう。視聴者掲示板にも「そうそう、私も似たようなことを経験した」、「これが現実だったら私は絶対結婚したくない」など毎週400件以上の意見が寄せられている。

 再現ドラマなので有名なタレントは一切出演せず、エキストラでよく顔を出しているタレントの何人かが順番で主演するんだけど、ここで不倫専門女優としてヒットし他のドラマにも助演で顔を出すようになったタレントもいた。毎週金曜日の夜11時はこれといって面白い番組がないので、子供からお年寄りまでよく『愛と戦争』を観ている。だから不倫の場面で露出が多すぎるだの、夫婦喧嘩が大げさすぎて子供に悪影響を与えるだの、毎週何かしら新聞で叩かれたりもする番組だ。








毎回、離婚調整室で判事から「離婚はいけないよ~」と説教される場面でしめくくるのがこの番組の特徴でもある
(c)KBS

 2003年には、ドラマの中からもっとも反響が大きかったエピソードが選ばれ単行本も発行された。もっとも近い関係でありながら遠い他人でもある夫婦の生き方を、離婚という極端な状況に追い込まれた人たちの話を振り返ってみようという企画で、エピソードの紹介だけでなく精神科医、判事、フェミニストで構成された調整委員会のアドバイスが付け加えられているのが特徴。もし自分もこういうことになったら、に備えて読んでみたという人が多い。

 でもどこの国でも仲良し夫婦もいれば問題を抱えた夫婦もいる。このドラマを見て「韓国人男性との結婚はよそう……」、そこまでは考えなくていいですよ!


視聴!<プラハの恋人>

 『夫婦クリニック愛と戦争』(KBS2、金曜日夜11時5分から)をVODで視聴するには、ドラマ視聴ページ(VOD)から(56kbpsは無料)。
 KBSのインターネットでの視聴方法について詳しくは
第2回:無料で楽しむ韓国ドラマ 入門編2<KBS>を参照。



 


By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情」 
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