「富者になって下さい(ブジャデセヨ)」これが韓国の最新流行語だ。
クレジットカードの広告コピーから始まったこの挨拶は「明けましておめでとうございます」の代わりに新年の幸せを祈る言葉として人気を集め、サイバー上でも「富者になれるコンテンツ」 が大ブレイク。その真ん中にインターネット宝くじがある。
■宝くじ部屋、ただいま拡散中
ことの始まりは去る3月13日だった。55億ウォン(5.5億円)にも及ぶ巨額を手にした幸運の主人公がマスコミに紹介され、インターネットで宝くじを買ったとインタビューに答えたからだ。
韓国を訪れた人なら町のバス停とか、地下鉄の切符売り場辺りにアルミニウムで設置された小さな売店を珍しく眺めた経験があるだろう。前はみんな、ここで宝くじを買っていた。でも、この頃は小さな売店よりボックォンバン(宝くじ部屋)に行く。PCバンに続いて韓国全土に拡散中のボックォンバンは、40種類以上もある宝くじをその場でじっくり選べて、スクラッチ式のはその場で確認できるようにテーブルと椅子まで置いてあるところだ。
主流である既存の宝くじ販売所を脅かすのはボックォンバンだけではない。去年から徐々に登場していた「インターネット宝くじ販売サイト」は3月以降一気に増え、ロート(こちらを参照)、ハローラック(同)、テックロート(同)等、その数が既に1000を越えた。オンライン同好会も無視できない存在だ。福塊(同)、宝くじ共同購入同好会である豚夢(韓国は豚が登場する夢を見るとお金が入るという)(同)、ポータルサイトHitelの宝くじ同好会(同)等の自由掲示板には1等当選者の当選秘訣が載るなど、宝くじ当選を目指し、各種秘術と秘話が共有される。
■モバイルでも、北でも人気
モバイルインターネットでも、宝くじは熱い。SKテレコムやLGテレコム、KTFが運営する即席宝くじは当選金額が平均的に少なく、やり方も難しいが、その分当選率が高いと人気だ。SKテレコムの「電子宝くじ」は開始間もなく、会員数100万人を突破した。
宝くじ市場は今年最高1兆ウォンに(1000億円)達する見通しで、インターネット宝くじの市場シェアは約1000億ウォン(100億円)。ここに購入者が番号を勝手に決める方式で、「海外では1000億ウォンの当選者も出た代物」と連日マスコミで騒いでいるロート式宝くじが9月に導入されれば、最高5000億ウォンまで市場規模が膨れ上がると分析されている。現在、宝くじは10余りの機関より発行されており、その種類だけでも福祉くじ、サッカーくじ、ミレニアムくじ等々、40種は軽く超える。
一方、北朝鮮も例外ではない。北朝鮮最初の営利インターネットサイト開設はもちろん、平壌に南北合営会社が初めて定式設立されたきっかけとなったのも宝くじだった。オンラインカジノ会社であるフンネットが 朝鮮長生貿易総会社と手をつなぎ、今年の3月25日に朝鮮宝くじ合営会社(日本語 同)を設立、サービス中である。
インターネット宝くじの人気の秘訣は何だろう。「気がつけばマウスでスクラッチを擦ってた」というほど、インターネット宝くじは、去年のネット対戦ゲームの人気にどこか似ている。
■成長性は高いが、サイト乱立で利益減
利用方法はまず会員登録し、プリペイド式に2万ウォン以上振り込めば、一般に販売されている宝くじの定期購入代理、独自のスクラッチ式くじが利用できる。宝くじは1枚500ウォン~3000ウォン。買う度に積み立られたショッピングポイントでまた宝くじが買える。当選確認もクリック一つで済む。当選金はすぐ自分の口座に振り込まれる。何より、顔を合わせることなく購入できる点が人気の秘訣のようだ。一攫千金を狙う欲深い人間にみられたらどうしよう等、案外女性は気にするもの。20代の女性がインターネット宝くじの最大の顧客と言われているのがその証拠だ。
インターネット宝くじ販売側は手数料が少ない既存の電子商取引と違い、宝くじは販売代理だでけで10%のマージン、払い戻しもなく配送負担もないのでインターネットに最も適した商売と口を揃える。ほとんどがプリペイドで現金が入ってくるので、現金がほしいドット・コム企業にはオアシスのような存在だ。それから一つの商品をまとめ買いしたり、定期的に買う人が多いのも宝くじの特徴である。
だが、ここでもインターネット市場にありがちの同じ問題が繰り返されている。インターネット宝くじは市場初期という点で成長性は高いが、競争サイトの乱立により一つの会社の利益幅は益々減るばかりだ。
韓国では経済危機以後、終身雇用が崩れ契約職雇用が大きく増えるなど、社会的不安が大きくなっている。景気は今年に入り徐々によくなっているが、貧富の差は広がるばかりで中産層がほとんどいない構造。物価も食材や生活用品は日本より若干高く感じるほど上昇した。消費は増えているが、収入が増えたわけではない。韓国毎日経済新聞の調査によると、一家平均2500万ウォンの借金を抱え、カードローンの返済に困り自殺する人も増える一方だそうだ。苦しい生活の中、金もコネも気力もない普通の人達に、夢のような「富者になりたい」流行が生まれ、宝くじという一攫千金願望につながっているのではないだろうか。
by- 趙 章恩