不況のときこそ派手なデザインで勝負、携帯とファッションのコラボ

不況になるほど「スカートの丈が短くなり、赤い口紅が売れる」という。2009年のトレンドが「ビビッドカラー」ということは、今年はまさに不況のど真ん中ということなのだろうか。ユニクロでさえ例年より派手な色とりどりのジーンズとシャツをディスプレイしている。

 豊富なカラーバリエーションを取り揃えた携帯電話の端末、デザインが面白い端末、といえば日本が元祖だが、韓国では端末のカラーを何十色も発売するより、子供のおもちゃに見えなくもない鮮やかな「原色」カラーと様々なプリントパターンの組み合わせが、この春夏のトレンドなのだ。


 韓国の家電は、数年前からデザインも色もどんどん派手になるばかり。優れた性能は当たり前、オレンジ、ピンク、花柄、蝶々柄、きらきらキュービック付きなど、インテリアの一部として選んでもらうという戦略がここ数年繰り返されている。それが、ついにファッションと携帯電話をお揃いにするところまで発展した。


 サムスン電子の2009年上半期ヒット端末「Haptic Pop」は、3.2型液晶画面、タッチスクリーン、300万画素カメラ、地上波DMB(ワンセグ)搭載、12種類の待ち受け画面イラスト、ファイルビューワー、電子辞書機能を取り揃えている。さらに赤、紫、青といった原色のストライプ、ドットなどポップアートのような15種類のパターンがバッテリーカバーにプリントされており、カバーを差し替えるだけで新しい端末を買ったような気分になれる、かわいくておしゃれな端末である。Hapticは「触覚」という意味で、サムスン電子はフルタッチスクリーン方式のHapticシリーズを2008年から発売している。


 Haptic Popはテレビドラマ「花より男子」の韓国版で、主人公らが劇中で使用したことでも話題を集め、韓国で累積20万台が売れた。ドラマの中でF4を始め、主な出演者らの携帯電話は全てHaptic Popだが、それぞれキャラクターに合わせて異なるデザインのバッテリーカバーをつけていた。これがどのCMよりも効果をあげ、ドラマのファン層であった小学生から高校生の10代が決して端末価格が安くないHaptic Popを選択したのだ。


 サムスン電子は、この端末に施されているストライプパターンとお揃いのシャツやネクタイなどをサムスン系列の高級カジュアルファッションブランド「Bean Pole」より発売する、「デザインクロスオーバー」を始めた。








ファッションと携帯電話をお揃いのデザインに


 Haptic PopもBean Poleも持っていると自慢になる有名+値段の高いブランド品である。「人に迷惑をかけるな」、ということより、「他の子に負けるな」と教える韓国のお母さん達の熱血ぶりを考えると、どんなに給料が減り不況であろうと子どものための出費は惜しまないのだろう。今回お揃いの子ども服は販売されていないが、最近の子は体格が大きいから子ども服なんて着ないし、カラーマーケティングというより子どもマーケティングと言うべきだろうか。サムスンは上手いところを突くものだ。

サムスン電子の製品デザインとファッションブランドのコラボレーションは、これが初めてではない。サムスン電子はここ6年ほどノートパソコンの主力モデルのカラーをワインレッドにしている。去年は一面全部がレッドだったが、今年はさし色として使っている。韓国の有名革製品ブランド「ルイカトズ」と提携し、新機種発売に合わせて、サムスン電子のノートパソコン専用バッグをおまけにつけるイベントも開催してきた。


 一方、LG電子の携帯電話は、端末のカラーも派手だけど、コマーシャルも色鉛筆を並べたような色とりどりのカラーの服を着たアイドル達を登場させ、不況になるとファッションが派手になるという俗説は本当なのだということをしみじみ感じさせてくれる。


 サムスン経済研究所によると、不況ほど鮮やかなカラーを好きになるのは「変化を望む人々の心理がカラーに反映されるから」、「暗くて重い現実から脱出したい無意識的な欲求の反映」なのだとか。きっと、カラフルなものを持つことで気分転換したい、ということなのだろう。そのせいか、小型家電やインテリア小物ほど強烈なカラーを選択する人が増えているそうだ。カラーバリエーションを増やすぐらいなら企業もそれほどお金をかけずにできるので、選択の幅は広がっている。


 ところで、カラーマーケティングの効果はあったのだろうか。2008年12月は109万台にまで落ちた携帯電話端末の国内出荷台数は、4月は2倍近い208万台にまで増加した。もちろん他の影響もあるだろうが、カラー競争が本格的に始まった2~4月の間に急増している。この内、約48%をサムスン電子が、約30%をLG電子が占めている。世界携帯電話端末市場シェアでも2009年1~3月期、サムスン電子が約18%とノキアに続いて2位、LG電子が約9%で3位を占めている。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年5月13日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090512/1014971/

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