注文減など具体的被害も
【ソウル発】アシアナ航空パイロット労働組合のストライキの長期化につれ、韓国IT業界に影響が広がっている。ストライキはすでに20日間以上続いており、製品の出荷を航空貨物に依存しているIT関連製品の輸出に大きな被害が出ているわけだ。ディスプレイなど一部の製品では、海外から納期遅延を理由に注文を減らされるなど具体的な被害も出始めた。
韓国の輸出に占める航空貨物の割合(輸出金額ベース)は30%にのぼる。特に、自動車、半導体とともに3大輸出品目の1つである携帯電話は100%航空貨物を利用している。体積が大きいディスプレイなども専用貨物機を利用して輸出するしかないのが実情である。
産業資源部の発表によると、ストライキの影響でアシアナ航空は予定していた5500トン以上の貨物を空輸できず、大韓航空などにまわしているが、航空機1機分がまだ残っているという。仁川空港にも、東南アジア経由で韓国から航空便で輸出するはずの貨物が山積みされたままとなっている。
被害額は旅行業界・運送業界などを合わせてこれまで約1500億ウォン(約150億円)にのぼっており、欠航便が増えているため被害額はさらに増える見込みである。IT業界も7月分の輸出を8月に延期しており、今後もストが続く場合には緊急事態になりかねない。
貿易協会や中小IT製造団体は、「大手のように独自のルートで航空機を確保できない中小企業はそれだけでも気が気でないのに、海外の取引先から納期遅延を理由に価格引き下げを要求され困っている」と、早急に政府が介入し解決してくれることを望んでいる。
韓国政府は、アシアナ航空と労働組合の話し合いに進展がない場合、労働部長官が緊急介入し調整を開始する予定だ。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)