第31回 え~嘘!あの俳優たちの意外な姿 爆笑ドラマ『理想のカップル』 |
2006年11月20日
先々週かな? 朝っぱらから電話で母が大騒ぎ。「ね~今うちのマンションの前、すごい日本人だらけなのよ! 観光バスが3台も立て続けに停まってるんだけど何事かしらね~」、「お母さん日本語できるんだから聞いてみれば~」。
–それから10分後。
「ね、聞いてよ~(笑)、リュ・シウォンが10年ぐらい前ここに住んでたじゃない? リュ・シウォンがよく買い物してたお店だからってあの小さいスーパー、ほら子供たちみんな海外留学させたっていうあの店~そうそう、そこに150人も来たんですって! リュ・シウォンがそこだけで買い物したはずないじゃない、近所に同じようなお店いっぱいあるし、セブンイレブンだってあるし。でもすごいよね。リュ・シウォンがこんなに人気ならもっと仲良くしておくべきだったわね~、リュ・シウォンのお母さんはお元気かしら~」と延々と続く母のリュ・シウォン話。近所のみなさんは、いきなり大勢の人が押し寄せ、統一教なのかとびっくりしたらしい。
そうです。私の実家はあのリュ・シウォンさんが住んでいたという、あのマンション団地です。私も、リュ・シウォンさんがそこに住んでいた10年ほど前まではよく見かけました。地下鉄の駅へ行く途中にある公園で車停めて、バックミラーでお化粧しているところを目撃したこともありますし、彼女らしき人物と漢江へ続く路の脇に車を停めておしゃべりしているところ、また、マンションの入り口でもちょくちょく見かけました。雰囲気はTVそのままです。
よく犬と散歩をしていたリュ・シウォンさんのお母さんとうちの母は、ご近所ということで挨拶くらいはする仲でしたね~。でももうかなり昔の話。もうとっくの昔に引越したのにどうしてこんなツアーがあるのか、そして旅行代理店とあのお店が組んで善良な日本のリュ・シウォンファンを騙しているのではないかとちょっと心配です。俳優さんが住んでいたところに行ってみたいファンの気持ちは万国共通。でも、マンションの近所の人に与える日本人のイメージを考えると、ツアーよりは個人的にそっと行ってみたほうがいいかもしれません。
リュ・シウォンさんの話はこのくらいにして。今回はドラマ「黄真伊(ファンジニ)」の話をする予定だったのですが、予定変更して、今どっぷりはまっているドラマ、『理想のカップル』をご紹介しましょう。
MBCのインターネットでの視聴方法について詳しくは第3回:無料で楽しむ韓国ドラマ 入門編3<有料でも見たい!MBC>を参照。
●「記憶喪失」がテーマの笑える名作!?
記者会見で主人公の4人。ビリー役のキム・ソンミン、ユギョン役のパク・ハンビョル、アンナ役のハン・イェスル、チョルス役のオ・ジホ (※ 画像はクリックで拡大) |
ドラマのタイトルは直訳すると「幻想のカップル」。幻想というのは韓国で幻というより「ファンタスティック!」、とても素晴らしい! という意味で使われている。韓国ドラマのヒロインなら誰もが避けては通れない「記憶喪失」をテーマに、ここまで笑える名作にしてくれたのは「怪傑春香」「マイガール」のシナリオを担当したホン・ジョンウン、ホン・ミラン姉妹と、これ以上ないぴったりのキャスティングのお陰だと思う。
アンナ役のハン・イェスル。演技力マイナスといわれていた彼女が『理想のカップル』では絶好調 (※ 画像はクリックで拡大) |
●不動産王の娘アンナが記憶喪失に……
超お金持ちで不動産王の父をもつアンナ(ハン・イェスル)は、傲慢で自己チューで性格の悪さでは世界一。バースデープレゼントに南太平洋の島を買ってしまうほどのセレブな生活だが、毎日が退屈でパーティーにも飽き、ニューヨークの天気が気に入らないと夫のビリー(キム・ソンミン)がいる韓国にやってくる。そして、夫のいる南海へ向う途中、雨の中道に迷い、沼にタイヤが埋もれてしまったアンナ。建築からインテリアまで何でもできる働き者だけどケチでお金のためなら何でもするジャン・チョルス(オ・ジホ)は、そんな困っているアンナに3万ウォンくれたら手伝うと近寄る。
チョルスの車の中で待つことになったアンナは、後ろのシートにある電気のこぎりに驚き、服についたペイントを血と、マネキンを死体と間違えチョルスを殺人犯と誤解する。一方チョルスは、アンナが自分の車の中でガサコソやっているのを見て、自分のシャツの内ポケットにあるお金の入った封筒を盗もうとしているのだと誤解。アンナはトイレ用のポンプをチョルスのシャツで巻いて身構える。乱闘の末、アンナが勝ち車で必死に逃げる。手にはチョルスのシャツが……。
チョルスは強盗に金を盗まれたと怒り狂い「目撃者を探しています」とプラカードまで掲げる。途中、1千万ウォンもする飼い猫のミルクを買いに来たアンナをみつけ追いかける。殺人犯に見つかったとアンナは逃げる。アンナは警察に通報するため車を停めるが、ここでまたチョルスと口喧嘩になり、その間に猫が逃げてしまう。チョルスはアンナの猫を50万ウォンで売り、気づかず出発したアンナはチョルスの家を探し出し、野良犬同然のチョルスの犬を拉致して猫と交換させる。
2度と会うことはないと思っていた2人だが、自分のヨットのシャワーが気に入らないと怒鳴り散るアンナにせかされ秘書が呼んだ修理工はチョルス。また2人は口喧嘩し、足を滑らせたアンナを抱きかかえたチョルスを変態扱いしてまた暴れるアンナ。2人の関係はますます悪化するばかりだが……。
一方で夫との関係もぎくしゃくしているアンナ。あまりにもわがままで、自分のことしか考えないアンナに嫌気がさしたビリーは離婚を要求し、アンナは自分が死ぬまで離婚はないと言い張る。
1人ヨットに乗っていたアンナは、苛立ち結婚指輪を海に投げるが、ヨットに上に落ちてしまう。それを拾おうとして海に落ちたアンナは記憶喪失になってしまう。アンナは不思議とチョルスの顔しか思い出せない。チョルスはアンナに「君の名前はナ・サンシル(直訳すると私・喪失)僕たちは恋人だった」と嘘をつき、いつもどおりに生活すれば記憶が戻るはずだと、自分の家に連れて帰り、家政婦のようにこき使う。
チョルスはアンナをちょっと懲らしめて本当のことを言うつもりだった。アンナが死んで財産は自分のものになったと喜ぶビリーは、店でアイスクリームを盗み食いして逃げるアンナを目撃し、幽霊を見ているのだと怯える。だがアンナが記憶喪失なったことを知り、本当に死んだようにするため携帯電話記録などを消し始める。チョルスはどうしようもなくなり、アンナをいつまでも家に泊めるはめになってしまう。しかし、ビリーに届いたのは、「自分が死んだら全財産は寄付する」という遺言状を残したというアンナの映像。
豪華な生活のためにはアンナを連れ戻さなくてはならない。しかし、記憶喪失を確認するために他人のふりをして何度も話しかけてきたのに、今さら夫だとは言えない。ビリーは、これはすべてチョルスの仕業であるように仕込み、財産のためにアンナを連れ戻す計画を立て始めるが、うまくいくはずがない。
●映画「潮風のいたずら」のリメイク
ここまで読んで、「おや、このストーリーは?」と思った方もいらっしゃるのではないだろうか? この『理想のカップル』はカート・ラッセルとゴールディ・ホーン主演、87年の映画「潮風のいたずら」のリメイクでもあるのだ。
このドラマから早速流行語も生まれた。アンナの口癖である「コラジハゴヌン~」。これは翻訳するのが非常に難しい。「何そのざまは」に近いかな? 人や何かものに対して思いっきり気に入らないときに使う悪バージョン。最悪バージョン、極悪バージョンもまだあるので、これはまだ悪の中でも下の方。「コラジ」というのは人の格好、人の様子だけど、標準語ではコラッソニ。応用としては「ビョルコラジダボゲッネ」、ひどいことをされたり、ひどいことを言われたときの仕返しとして「何様のつもり?」に近いかも。
キャラクターもすごく人間的。記憶喪失になったアンナは、依然として人使いは荒いけど、モンペに花柄セーターのおばあちゃんファッションもかわいく似合っている。少しずつ周りの人のことも気にし始める。お金に目のないチョルスだけど、それは亡くなった兄の3人の子供の保険や教育のため。その子供達を名前ではなく「おい!子供達!」と呼んでいたアンナが少しずつ心を開き始め、嫌々だけどアンナをお姉さんと慕う、精神年齢は幼いまま二十歳になったガンジャの面倒も見てくれる。
またゴージャスな生活をしていたアンナが、記憶喪失にかかってから大好物になったのはもっとも庶民的な食べ物である「ジャージャー麺」と「マッコリ」。口の周りを真っ黒にしながら飢えたように食べるシーンは衝撃的! 「ジャージャー麺」は、韓国では家族の絆を象徴する食べ物なので、このシーンは、チョルスとアンナの未来を暗示しているかのよう。「私、知らない人とは一緒にいたくないのよね」と言いながらも、「マッコリもあるのにな~」の一言に踵を返して戻ってきたり、マッコリを飲んで酔っ払うシーンなどには大笑い。
こんな豪華な生活をしていたアンナが…… | 記憶喪失でこんなになってしまった! |
また、主人公がリゾート開発・不動産業ということもあり、韓国でもっともきれいな自然が残るリゾート地である全羅南道南海市でオールロケされているのも見所。
もう初雪が降ったほど寒いこの冬。アンナとチョルス、ビリーと秘書のゴン室長のおバカコンビが繰り広げる珍騒動に寒さを笑い飛ばしたい!
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RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情 Link