狂牛病に、鳥インフルエンザに、野菜も値上がりして食べるものが少ないこの頃だが、食の韓国では冬といえば刺身の「鰡(ボラ)」、生きたまま食べる透明な鮎の稚魚「氷魚」。どれもゴチュジャンにつけてピリ辛で食べるのが美味い。氷を割って釣りを楽しむのは韓国でもおなじみの風景で、週末になると有名な湖やダムの周辺は釣りと出張板前で賑わう。
出張板前とは釣った魚をその場で刺身にしてくれる板前のことで、釣りをする人の周辺には必ず2-3人チームを組んで、まな板をソリに載せて氷の上をうろうろしている。300円出せばきれいな刺身にしてくれるのはもちろん、サンチュやにんにく、青唐辛子など野菜の盛り合わせもサービスしてくれる。
大蟹も逃してはならない。慶尚北道の盈(ヨンドック)が産地の大蟹は、1匹1万円は下らない高級品だが、昔は王様にも献上されたほどの韓国を代表する海の幸だ。2匹あれば4人家族がお腹いっぱい食べられる。港に行って蟹を選び、近くの食堂で蒸してもらうのが“通”のやり方で、蟹味噌にあつあつのご飯を混ぜて食べるともう天国!
盈はソウルから5時間以上かかる遠い東海岸にある。海に沿って走るドライブコースも有名で、冬の海を見ながら海水サウナで体を暖め、大蟹を食べる週末旅行はみんなに羨ましがられる。
日本でも最近人気の高い「カムジャタン」。豚の背骨を野菜や薬味と一緒に煮込み、茹でたジャガイモを入れたスープで、値段も安く焼酎にもよく合う。同窓会の定番メニューでもある。肉とジャガイモを平らげた後、残った汁にご飯と塩味がついた海苔を入れてチャーハンにしてもらう。これは韓国ならではの味なのでぜひお試しあれ。
四季を通して法事にも使われ明太子の名前の由来にもなった「明太(ミョンテ)」。日本語ではスケトウダラなのかな? 明太を冬の海に干し、3か月以上凍ったり溶かしたりを繰り返すと黄金色の「黄太(ファンテ)」になる。これは江原道の特産物。ごま油と唐辛子のソースで焼いて食べたり、じっくり煮込んでねぎだけ入れたさっぱりスープにしたりと、何にして食べても噛むほど深い味があって、体の芯まで温かくなる。これはスキー場の帰り道、必ずみんな食べている。
氷点下20度の寒波も過ぎ去り、冬もあとわずかしか残っていないような気がする。先週、デジタル体重計を買ったのに、食べ物の重量チェックばかりで自分の重さは怖くて計れずにいる私。でも、冬の美味は今のうち食べておかなくては。
[BCN This Week 2004年2月23日 vol.1028 掲載] Link