何でもネットから話題が生まれる韓国だが、この春はカメラ付き携帯で撮った動画が何度も全国民をあっと驚かせた。
コミュニティサイトなどには、自分で撮った面白い動画を載せるコーナーがあるが、そこに教室で級友をいじめる動画を自慢げに載せた中学生がいた。瞬く間にこの動画はポータルやメッセンジャー経由で広がり、テレビのニュースで報道された。IP追跡などで捜査が始まり、地方の中学生らが連行され、被害者家族らは損害賠償を求める訴訟を起こした。
加害者は携帯で撮った動画がここまで問題になるとは思わなかった、いじめはどこにもある問題だと全く反省していない様子で、学校のホームページにはいじめを知りながらも対処しなかった教師らを非難するネティズンの怒りが集中し、校長先生が自殺してしまうほど大きな騒ぎになった。
この事件から1か月後、今度は教室で45歳の男性教師が高校1年生の女子生徒に殴る蹴るの暴行を加える動画がネットに掲載され、みんなが驚愕した。これも携帯で撮った10秒ほどの動画で、目を覆いたくなるほど過酷。これは、現場にいた学生が「こんなことがあっていいのか」と暴露するため、学校名を明かして投稿したものだった。
この教師はニュース放映後すぐ職を解かれ、教育庁では緊急会議を開くなど再発防止のための対策を講じている。
そして、総選挙を目前に控えた先頃は、選挙法違反や政治家の珍プレーのような動画がネットに出回った。最も面白かったのは、自民連(政党名)のキム・ジョンピル議員の選挙運動での出来事。どこの党でも主婦を動員し拍手させたり、声援を送ったりさせるわけだが、このなかの1人、1番前に立っていたある主婦が、キム・ジョンピル議員が車から降りるや否や思いっきり大きな声で「チョウ・ヨンピル!」と叫んでしまった。
名前が似ているからか、興奮しすぎたのか有名歌手の名前を叫んでしまった途端、周りの人は一斉に凍ってしまい、5秒ほど沈黙が流れ、再度「キム・ジョンピル!」と叫んでみたが後の祭り。
ネットは匿名性のためウソが多い世界と思われているが、動画付き携帯の急速な普及により、真実だけが通用する世界に変わり始めている。韓国の携帯電話普及率は80%、ネット普及率も70%。幼児と超高齢者を除く人口のほとんどが携帯とネットを利用している。何かあった時はネットに訴えるのが最も手っ取り早いと、動画投稿が続いている。
燃えやすく冷めやすいのが韓国人というが、衝撃的な動画騒ぎは当分続きそうだ。
[趙 章恩 CHO CHANG EUN]
[BCN This Week 2004年4月19日 vol.1036 掲載] Link