韓国の半導体人材10万人育成方針に教育界が異論、画一化への懸念

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韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が公約した、半導体人材を10万人育成する方針を巡って、韓国内が揺れている。産業界が賛同する一方、教育界からは異議を唱える声が噴出しているからだ。なぜ教育界が反発するのか。そこには韓国における大学の首都圏一極集中や、教育画一化への懸念など、さまざまな問題が横たわっている。


 複数の韓国メディアによると尹大統領は2022年6月7日(現地時間)、日本の文部科学省に相当する韓国・教育部(部は省に当たる)の次官に対し、半導体人材10万人育成の達成に向けて韓国の首都圏にある大学の半導体学科の定員を増やすよう求めた。しかし次官は「地域で均等な発展を目指すために、同大学の入学定員を制限している」と説明。それに対し尹大統領は「国の未来がかかっている」と、次官の説明を一蹴したという。尹大統領の方針を受けて早速に教育部は、同大学の半導体学科の定員を増やす方向で動き始めた。

 同大学は、首都圏への一極集中を避けるため、1982年に制定された首都圏整備計画法に基づいて定員を制限している。過去に何度も先端産業の人材不足を解消するために、半導体学科などの定員を増やす議論があった。しかし韓国では急速に少子化が進み、首都圏の大学定員を増やすと地方大学に学生が来なくなるという懸念から、これまで規制緩和には至っていない。

学生に大人気の「契約学科」、企業が学生の生活費まで支給

 韓国の大学では、企業が大学運営の参画し、場合によっては学生の生活費支援や就職を保証する「契約学科」と呼ばれる仕組みが急速に広がっている。企業にとっては、求める人材を学生時代から育て、即戦力として採用できるメリットがある。尹大統領による半導体学科の定員増方針は、契約学科の定員数を増やすことにもつながり、産業界からは歓迎の声が聞こえる。

 韓国の大学で半導体学科が創設されたのは2006年、韓国成均館(ソンギュングァン)大学校が開設した半導体システム工学科がその始まりだ。成均館大学校はソウル市に本部を置く私立大学であり、1996年から韓国Samsung(サムスン)グループが大学運営に参加している。

 サムスングループは1996年から2015年までの20年間、半導体やディスプレー、医療分野の人材育成のため、成均館大学校に対して1兆5000億ウォン(約1570億円)を支援。この時、成均館大学校に新設された学科の一つである半導体システム工学科が、契約学科の先駆けである。

 契約学科は、企業が学科運営費の50%以上を負担する条件で新設できる。成均館大学校の半導体システム工学科は学生に対する手厚い待遇で有名だ。

 大学時代の4年間にわたって奨学金と生活費(学業奨励金)を支給するほか、1年生の夏休みに無料で海外研修も実施する。一方で、2年生の終わりになると、サムスングループの入社試験(職務適性検査)や面接などを受けることになる。合格すると卒業後に、サムスングループへと入社できる契約を結べる。

 優秀な成績を収めた学生は、サムスングループの支援を得て、大学院へと進学する道も開ける。同学科の大学院は、Samsung Electronics(サムスン電子)に長年在籍した研究員や米国から招聘(しょうへい)した教授などが講義し、厳しく指導する。

 サムスングループは延世(ヨンセ)大学校でも契約学科の運営を始めた。さらに浦項工科大学校(POSTECH)や国立の韓国科学技術院(KAIST:Korea Advanced Institute of Science and Technology)でも契約学科をつくる計画だ。

 ここにきてサムスングループに続き、韓国の大手企業がこぞって契約学科の新設に乗り出している。

 サムスン電子と並ぶ半導体大手の韓国SK Hynix(SKハイニックス)は、高麗(コリョ)大学校と漢陽(ハンヤン)大学校に半導体工学科の契約学科をつくる契約を結んだ。

 韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK on、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)という韓国の大手バッテリー3社も、2021年から契約学科の運営を始めている。韓国Hyundai Motor(現代自動車)や韓国LG Display(LGディスプレー)といった企業も同様だ。

 学生の就職難が課題になっている韓国では、奨学金がもらえて就職も保障されている契約学科は大人気であり、成績優秀者が集まるようになっている。

 ただし2022年入学の半導体関連の契約学科定員数は約150人。2021年に契約を結んだ大学があるため、2023年入学の定員数は約360人に増える見込みだが、狭き門であることに変わりはない。

 企業にとっても半導体業界の慢性的な人材不足を解消するためには、現在の契約学科数の定員では到底足りないという認識だ。韓国半導体産業協会は、サムスン電⼦とSKハイニックスの⼤規模な⽣産設備拡⼤の推移からして、年間3000⼈の人材が不足すると見込んだ。


 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022.6 .

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00062/

サムスンなど韓国財閥110兆円投資の中身、新政権へ「ご祝儀」の本気度

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韓国Samsung(サムスン)グループや韓国Hyundai Motor(現代自動車)グループなど韓国財閥大手11社は2022年5月末までに、合計で1060兆ウォン(約110兆円)という大規模な投資計画を発表した。韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任し、新政権が発足したことに合わせた「ご祝儀」だ。技術優位を守るための、研究開発や生産拡大の投資が多い。ご祝儀に終わらず、どこまで韓国経済を活性化できるのか。

 韓国財閥大手は、新たに大統領が就任するたびに新政府の基調に合わせた投資計画を発表する。進歩派といわれる大統領が就任した場合、中小企業を優先した政策を重視する傾向がある。一方で保守派とされる大統領が誕生した場合、大手企業を優先する政策を重視する。

 2022年5月に就任した尹大統領は保守派といわれる。大手企業が経済成長をリードするとして、企業の税負担を軽くする公約を掲げている。大手財閥はその期待を込めて、大きな投資計画を発表したとみられる。

 韓国の経済団体である大韓商工会議所が2022年5月に公開したアンケート調査によると、韓国企業322社のうち約73%が新政権の経済政策を「期待する」と答えた。期待する理由について、新政権の「企業重視の政策」「規制改革の意思を見せている点」と答えた割合が多かった。新政権の経済政策が成功するためには「未来のための投資、インフラ支援」「規制改革による企業のイノベーション誘導」という意見が目立った。そのため韓国内では、財閥大手の大規模な投資計画は、政府支援への期待を込めた発表という見方が強い。

サムスンは半導体に31兆円投資、米国との関係強化へ

 韓国財閥大手の中でも最も大きな投資計画を発表したのは、サムスングループと韓国SKグループである。

 サムスングループは2022年5月24日、今後5年間で半導体やバイオ、AI(人工知能)と次世代通信に450兆ウォン(約46兆円)を投資すると発表した。今回の投資は「国家核心産業の競争力を1段階アップグレードすると同時に、社会全般に躍動を吹き込むためだ」と説明した。サムスングループの2017年から2021年までの5年間の投資額は、約330兆ウォン(約34兆円)であるため、36%増の投資計画となる。

 450兆ウォンのうち、300兆ウォン(約31兆円)を半導体分野に充てる。世界トップのメモリー半導体の強みを維持しながら、システム半導体とファウンドリーで台湾TSMC(台湾積体電路製造)を追い越し、2030年にメモリー以外も含めた半導体市場で世界トップを目指す。

 新素材や新構造研究開発の強化のほか、高性能・低電力AP(Application Processor)、5Gや6G通信モデムチップ事業に必要なファブレスの競争力も確保する。この他、高画質イメージセンサーの開発や、ファウンドリー分野では3nm世代以下の早期量産に力を入れる。

 サムスングループは米国との協力関係も強化する。2022年5月20日、韓国を訪問したバイデン米大統領は、到着後最初の訪問先として平沢市にあるSamsung Electronics(サムスン電子)の半導体工場を選んだ。バイデン氏は、米国を中心とした半導体供給網の構築に、サムスン電子をはじめ韓国側の協力を求めたとみられる。

 歴代の米大統領は、就任後にアジアを訪問する際、日本を最初の地としていた。韓国の証券業界は、バイデン氏が今回、韓国それもサムスン電子の半導体工場を最初の歴訪地として選んだ理由は、米国にとってサムスン電子の半導体が経済安全保障上、重要であるからだと分析している。

 韓国政府は2022年6月にも、「半導体超強大国」をキャッチフレーズに大々的な半導体産業の支援策を発表すると予告している。韓国メディアは、サムスングループの投資計画は、企業がこれくらい投資するからには、政府も何かしら支援しなくてはならない、という世論づくりが狙いとみている。

 長らく噂されてきたサムスン電子の大型M&A(合併・買収)も、いよいよ具体化するのではないかという報道もある。サムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏は2022年7月、巨大IT企業のCEO(最高経営責任者)や投資家を招待するイベント「Allen & Company Sun Valley Conference」に6年ぶりに参加する。これはM&A発表への布石ではないかといわれている。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 6.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00061/

韓国での動画配信と放送の見られ方 OTTとドラマ競争の末、地上波民放の利益増

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OECD Digital Economy Outlookによると、韓国は加盟国中FTTH普及率が最も高く、モバイルデータ使用量も1位。世界初のスマートフォン向け5Gサービスを開始するなどICT利活用が進んでいる。放送分野も世界に先駆け、1990年代後半から”オンエア”(同時配信)や”ダシボギ”(番組の見逃し配信)を開始。テレビ受像機を保有しない傾向が強まった”ゼロテレビ”危機を乗り越え、ネットフリックス、Disney+、AppleTV+といったグローバルOTTと競争しつつ成長してきた。

韓国放送通信委員会の「2021放送媒体利用調査」によると、全世帯の約95%が地上波放送を再送信するセットトップボックス経由有料放送(ケーブルTV、IPTV、衛星放送など)に加入。OTT(動画配信サービス)利用率は約70%となっている。個人のスマートフォン保有率は全世代で93.4%、60代は91.7%、70代以上は60.1%であり、週5日以上スマートフォンを利用する人は91.6%で、テレビ受像機の73.4%より多かった。このような流れから韓国人にとって日常に欠かせない媒体は15年からテレビとスマートフォンの位置が入れ替わり、21年にはスマートフォン70.3%、テレビ27.1%の割合で必需媒体と認識されるようになった。22年の韓国放送産業の特徴は、民放の営業利益が大幅増益に返り咲いたことである。地上波放送局の放送事業による売上はここ10年で減り続けていた。韓国での動画配信サービスと放送の見られ方から、その秘訣を探る。

世界上位に入る作品群

韓国では1995年、公共放送のKBSを皮切りに地上波放送局がプラットフォームを開設。インターネットサービスを専門とする子会社を設立し、オンエアとダシボギ、見えるラジオ(スタジオ生中継)、クリップ動画サービスなどを積極的に提供していた。98年からは家庭でも安い費用でブロードバンドとパソコンを利用できるようになり、見たいときに見たい番組を有料で楽しむ文化がいち早く根づいた。好きな番組を見るための支出に躊躇しない視聴者が多いことから、地上波放送局対OTT、ネットフリックス対韓国勢OTTのオリジナルドラマ競争も激しい。ネットフリックスは2016年に韓国へ進出してから、韓国ドラマ制作に20年までに7,700億ウォン、21年5,500億ウォン、22年は1兆ウォンを投資すると発表。「韓国ドラマは米国ドラマの4分の1程度の制作費なのに世界中のランキングで上位に入る」として投資を増やし続けている。

韓国勢OTTも”打倒ネットフリックス”とばかりに年間1兆ウォン以上を投資してオリジナルドラマを制作し続けている。韓国だけでなく世界の視聴者に受け入れられる作品を目指しており、作品のジャンルも豊富で特殊効果や映像美もレベルアップしている。

トラフィック負担めぐる論争も

地上波民放は多額の制作費を投入するOTTに負けないため、ドラマの制作本数を減らす代わりに一つの作品にかける制作費を、外部投資を誘致し大幅増額した。また、テレビ放映開始と同時に自社プラットフォームでダシボギを提供し、どのタイミングでどのハイライト場面をSNSに投稿し盛り上げるか工夫。映像配信もOTTとユーチューブを使い分け、韓国だけでなく海外ファンも獲得した。韓国地上波3社(KBS・MBC・SBS)のユーチューブチャンネル登録者数は22年5月時点で1.4億人超。地上波放送局でありながら、ユーチューブでしか視聴できないオリジナルバラエティ番組も多数制作するようになった。

こうした成果が反映され、MBCとSBSの21年営業利益は大幅黒字となった。テレビ広告は減少しても、OTT経由の売上は順調に伸びているからだ。競争から生まれた「イカゲーム」「愛の不時着」「梨泰院クラス」「社内お見合い」などのドラマは海外でも記録的なヒットとなった。韓国のWEBTOON(紙ではなくネットで連載するマンガ)などの映像化も活発で、K-POPアイドルを起用する1話10分程度のウェブドラマもヒット作が増えている。韓国のOTTが海外に進出し現地でドラマを制作する流れも出てきた。

22年末にはアマゾン・プライム・ビデオとHBO MAXが韓国に進出するのではないかと言われている。海外OTTと韓国OTTのさらなるコンテンツ競争で、韓国視聴者を楽しませてくれそうだ。ただし、韓国ではOTTとISP(インターネットサービスプロバイダ)の間でトラフィック負担をめぐる論争も起きている。大量のトラフィックを誘発するコンテンツプロバイダーもネットワークインフラ投資に責任を持つべきという考えが広がっており、国会で電気通信事業法の改定議論が行われている。韓国の事例が、また海外にも影響を与えそうだ。


 章恩(ITジャナリスト)

(民放online)

2022.6.

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https://minpo.online/article/-ott.html

アップル天下の日本でサムスン躍進、スマホシェア拡大に韓国歓喜

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米Apple(アップル)がスマートフォン(スマホ)シェア過半を占める「iPhone天国」の日本で、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)のシェアが上昇している。アップルや中国勢との競争に脅かされるようになってきた王者サムスン電子にとって、これまでシェアが少なかった市場の攻略が欠かせない。最後の激戦地になるとみられるのは中国市場だ。

 韓国メディアは2022年5月中旬、「アップル天下の日本で、サムスン電子が約10年ぶりにスマホのシェアを獲得した」と大きく報じた。調査会社である米Strategy Analytics(ストラテジーアナリティクス)が発表した調査結果を引用し、「22年1〜3月の日本におけるサムスン電子のシェアが13.5%に高まり、2位に浮上した」などと書いた。

 ストラテジーアナリティクスの調査によると、日本におけるサムスン電子のシェアは、12年に15%弱を確保して以降、16年には3%台まで下落した。今回のサムスン電子のシェアは約10年ぶりの水準であり、韓国メディアは大いに盛り上がっている。

 同調査による22年1〜3月の日本市場におけるシェア1位はやはりアップルだ。6割近いシェアを維持している。それでも韓国メディアは「韓国製スマホの墓場」ともいわれる日本市場でシェアを拡大したサムスン電子を偉業としてたたえている。

 サムスン電子が日本市場で確保した13.5%というシェアには、世界で人気を集めている同社の最新フラッグシップスマホ「Galaxy S22シリーズ」の影響は含まれていない。日本市場において同機種は22年4月の発売であり、調査期間中は未発売だったからだ。そのため22年4〜6月以降の日本市場において、サムスン電子のスマホシェアは、さらに伸びるという展望もある。

 サムスン電子が日本でシェアを伸ばせたのは、地道なプロモーションの成果だろう。17年からスマホ本体の「Samsung」ロゴを消し、ブランド名の「Galaxy」のみを表記するように変えた。さらに19年には東京・原宿に世界最大規模の体験施設「Galaxy Harajuku」をオープンした。人気K-POPグループ「BTS」を起用したキャンペーンも日本で浸透している。

 KDDIが22年3月末に3Gサービスを終了し、スマホを求めるユーザーが増えた点もサムスン電子にとって追い風になった。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 5.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00060/

日米が最先端半導体で協力、韓国の対応は? 米大統領訪韓に注目

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 韓国の公共放送であるKBSをはじめとした同国の複数のメディアは2022年5月4日から5日にかけて、日本経済新聞が同2日に公開した記事「日米、最先端半導体で技術協力 2ナノなど開発・量産」に触れる形で、大きく報じた。半導体素材を生産する日本と、安定的な半導体供給網確保に力を入れている米国がタッグを組むことで、韓国の半導体産業の立ち位置に変化が生じる可能性がある。同20~22日には、バイデン米大統領が訪韓を予定する。それに合わせて韓国政府がどのような対応を打ち出すのかに注目が集まる。

 複数の韓国メディアは、日経新聞の記事にある「日米両政府は最先端の半導体の供給網(サプライチェーン)構築で協力する。回路線幅が2ナノ(ナノは10億分の1)メートルより進んだ先端分野での協力や、中国を念頭に置いた技術流出防止の枠組みづくりなどで近く合意する」「台湾勢などに調達を依存する危機感から日米連携を強化する」という部分を強調。韓国政府の新たな対応の必要性について触れる記事が多く見られた。

 現在、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は、ファウンドリー市場で圧倒的な世界1位である台湾TSMC(台湾積体電路製造)に追い付き追い越そうと激しい競争を繰り広げている。そこに日米が、最先端半導体である2nm世代プロセスの工程でタッグを組むことで、競争の構図に変化が生じる可能性がある。

 韓国政府は21年5月、半導体産業の競争力強化を目指す国家戦略「K-半導体戦略」を発表した。冒頭の報道を受けて韓国内では、K-半導体戦略を上回る強力な支援策と、米国とのより強い半導体同盟が必要という声が高まっている。

 22年5月10日に韓国大統領に就任する尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は、「国家経済と安全保障の核心は半導体」「半導体超強大国を目指す」「半導体・バッテリー・AIなど先端産業の競争力確保」「21年に1280億米ドル(約16兆7600億円)だった半導体輸出額を、27年には1700億米ドル(22兆2600億円)に拡大する」などと繰り返し発言している。就任後に半導体戦略の強化策を打ち出す可能性がある。

 韓国メディアは22年3月、米政府が韓国と台湾、日本に「チップ4(Chip4)同盟」を提案したと報じた。その時点では、サムスン電子と韓国SK Hynix(SKハイニックス)の中国事業を考慮すると米政府の提案は受け入れがたい、というのが韓国内の主な反応だった。しかし政権交代と日米半導体協力の報道の後は、韓国内も「チップ4同盟もやむなし」といった受け止め方に変わりつつある。


 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 5.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00059/

サムスン対ソニー、互いに譲らず イメージセンサー市場の行方

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成長著しいイメージセンサー市場にて、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)とソニーグループ(以下、ソニー)が激しいシェア争いを繰り広げている。サムスン電子は、2030年に非メモリー半導体であるシステム半導体市場で世界1位を目指している。同社は、ソニーが絶対王者として君臨するイメージセンサー市場を果敢に攻める。しかし21年の同市場のシェアは互いに譲らず、両社のシェアは縮まっていない。新たなプレーヤーも同市場に参入しており、22年はさらに激しい争いになりそうだ。

 米国の調査会社であるStrategy Analytics(ストラテジー・アナリティクス)は22年3月末、21年のスマートフォン(以下、スマホ)向けイメージセンサー市場の企業別売上高シェアを発表した。同調査によると1位はソニーで、前年から1ポイント減となる45%のシェアとなった。2位はサムスン電子だ。同3ポイント減の26%のシェアである。3位は米OmniVision Technologies(オムニビジョン)であり、同1ポイント増の11%のシェアだ。

 サムスン電子は20年、同市場においてソニーとのシェアの差を17%まで縮めた。しかし21年はソニーとのシェアの差が19%と若干ひらく結果となった。

 サムスン電子は02年、イメージセンサー市場に進出し、15年には早くも業界2位のシェアを確保した。近年はスマホ向けに小型で高解像度のイメージセンサーを次々に投入し、シェア拡大を続けてきた。例えば19年には業界初となる、0.8μmの1ピクセル(画素)サイズで1億800万画素のイメージセンサー「ISOCELL Bright HMX」を発表。21年にはやはり業界初となるピクセルサイズ0.64μmの2億画素イメージセンサー「ISOCELL HP1」を公表している。

 サムスン電子は、ソニー超えを目指すために生産設備の拡充にも余念がない。自社のDRAM生産ラインをイメージセンサー生産ラインに変更したばかりでなく、世界3位のファウンドリー事業者である台湾聯華電子(UMC)とも提携。イメージセンサーの生産の一部を委託した。UMCが台湾に建設中の新しい工場では、23年からサムスン電子のイメージセンサーを量産する計画だという。サムスン電子はこうした生産ラインを確保することで、イメージセンサー市場においてシェア30%台を狙う。

 22年3月に開催されたサムスン電子の株主総会において、同社デバイスソリューション部門社長兼CEO(最高経営責任者)のKye Hyun Kyung氏は、「微細ピクセル技術の優位性と、1億画素イメージセンサーの普及で、21年のイメージセンサーのビジネスは顕著な成長を成し遂げた」「22年はイメージセンサーの微細ピクセル技術のリーダーシップを持続し、普及クラスのモバイル製品にも供給を拡大する」と説明した。市場シェアは若干減少したものの、売上高は着実に伸びていることを強調した。

 シェア拡大に欠かせない新規顧客獲得も進んでいる。例えばサムスン電子のイメージセンサー「ISOCELL GN5」とディスプレーは、22年4月に発売された中国vivo (ビボ)の最新の折り畳みスマホ「X Fold」に採用された。ISOCELL GN5はピクセルサイズ1.0μmで5000万画素のイメージセンサーだ。速さと精度を向上したオートフォーカス機能が特徴である。

 22年3月末には米Motorola Mobility(モトローラ・モビリティ)が開発中のスマホの旗艦モデル「Motorola Frontier」とみられる写真がネット上に流出した。この写真からは、サムスン電子の2億画素のイメージセンサーISOCELL HP1をMotorola Frontierが採用した可能性が見て取れる。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 4.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00058/

「半導体超強大国」を目指す韓国尹次期大統領、日韓関係改善は?

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 韓国次期大統領に、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が就任することが決まった。尹氏の大統領就任を前に、韓国産業界では、現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が積極的に進めてきた半導体やバッテリー産業の支援策が引き継がれるのかどうかが注目されている。尹氏の選挙時の公約や当選後の動きからは、現政権以上に半導体やバッテリー産業を後押しする姿勢がうかがえる。さらに現政権で冷え切った日韓関係についても改善が期待されている.

 「自由民主主義と市場経済を正しく立て直し、危機を克服して統合と繁栄の時代を切り開く」「(米韓同盟は)自由民主主義と市場経済、人権の価値を共有しながら包括的戦略同盟を強化する。相互尊重の中韓関係を発展させ、未来志向的な日韓関係をつくる」――。次期大統領に当選確定後の演説で、尹氏はこのように語った。


 次期大統領に選ばれた直後、尹氏は、韓国の経団連にあたる韓国全国経済人連合のメンバーである財閥グループの会長らと会合を重ねた。会合を受けて尹氏は、「企業がより自由な判断で投資し成長できるような活動の阻害要因を除外していくのが政府の役割だと考えている」「政府はインフラをつくり、企業が雇用を生み投資する。企業が成長すれば国も成長する」という趣旨のコメントをした。

 尹氏は「企業を経営しやすい環境をつくる」がモットーだ。同氏は、「(企業側から不満が漏れていた)現在の勤労時間や最低賃金制度などを見直す」と繰り返し発言している。「週52時間勤労制・最低賃金値上げ」など、労働者側寄りだった現在の文政権とは違う点をアピールしている。

中小企業優遇から転換、大企業の声を政策に反映する尹氏

 もっとも尹氏は、文政権が推し進めてきた半導体やバッテリーという韓国を代表する産業を後押しする政策については、一層強化するとみられる。

 尹氏は韓国の大統領選において、「半導体超強大国を目指し、50兆ウォン規模の基金をつくる」「半導体分野で10万人の人材育成」といった点を公約に掲げた。韓国半導体産業が強いメモリー半導体の競争力を維持しながら、システム半導体やAI(人工知能)チップ、ファウンドリーなど非メモリー半導体分野においても、他国を追い抜くために投資を拡大することを強調する。

 尹氏はこの他、研究開発・施設投資の税額控除拡大や、全国に半導体拠点を置く半導体未来都市建設、半導体工場の電力や工業用水などのインフラ支援、経済安全保障のため韓国産業通商資源部や複数の省庁が担当している半導体部品・原材料供給網の点検を大統領官邸レベルに引き上げる点も公約に掲げた。

 現大統領である文氏は、半導体やバッテリー産業を後押しする一方、中小企業育成を重視したため、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や韓国SK Hynix(SKハイニックス)といった財閥系大企業をおろそかにしているという見方があった。

 例えばSKハイニックスの京畿道龍仁市における半導体クラスター計画だ。同計画は2019年発表後、環境規制や土地補償問題などで地域の住民との話し合いが難航している。韓国半導体業界は、半導体投資の絶好の機会を逃してはならないとして、こうした問題に政府が介入し、規制緩和によって解決することを期待していた。尹氏はこのような大企業の声も政策に反映しようとしており、韓国半導体業界からの期待が高まっている。

 韓国半導体業界は大統領選後、尹氏に対し、ソウル市内にある大学の半導体学科入学定員を増やせるよう規制緩和してほしいと要望した。韓国半導体業界はこれまでも、半導体学科の年間卒業生を現在の650人前後から1500人へと増員を求めていた。しかし現在の文政権は首都圏一極集中を避けるために、ソウル市内の大学の学生と教員の定員を制限していたが、尹氏は現政権の方針を転換する。優秀な人材を確保するため半導体をはじめとした先端産業に関連する学科の定員は、大学定員とは別枠で管理する方針を明らかにした。

 ソウル市内の大学は、企業と連携した半導体学科の他、バッテリー学科やスマートファクトリー学科などを新設している。このような企業と連携した学科は、企業が必要とする実務的な人材を育てることを目的とする。企業が学生の授業料や生活費を負担する代わりに、学生は卒業と同時に支援した企業に就職する。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 4.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00057/

ウクライナ危機でニッケル高騰、韓国バッテリー業界がLFPに注目

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 ロシアによるウクライナ侵攻の長期化によって、電気自動車(EV)向けのバッテリー原材料価格が高騰している。ロシアはEV向けバッテリーに使われる原材料であるニッケルの保有量が世界3位であり、世界供給の約1割を占めているからだ。米Tesla(テスラ)や中国比亜迪(BYD)をはじめとしたEVメーカーは、バッテリー原材料高騰を理由にEVの値上げを発表するなど影響が出始めた。バッテリーを半導体に次ぐ産業に育てたい韓国にとっても、対策が急務になっている。

高騰するニッケルの代りに浮上する「LFPバッテリー」

 2022年3月17日から19日まで、韓国ソウルにある複合施設「COEX」にて、韓国産業通商資源部(「部」は日本の省に当たる)などが主催する二次電池産業展示会「InterBattery 2022」が開催された。198社が展示に参加し、4万人以上が来場するなど、韓国の国を挙げてのバッテリー産業後押しを示すかのように盛り上がりを見せた。


 そんなInterBattery 2022に水を差す格好になったのが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響だ。特にEV向けバッテリーに使われるニッケルの価格が高騰していることが、韓国のバッテリー業界に影を落としている。

 EV向けバッテリーに使われる純度99.8%以上のニッケルは、ロシア産のシェアが世界で最も高いという。韓国はロシアのほか、インドネシアやオーストラリア、南米からニッケルを輸入しているため供給が止まることはない。問題は価格高騰である。EV普及拡大でバッテリー原材料価格は上がり続けていたが、ウクライナ侵攻により一気に価格が跳ね上がった。

 InterBattery 2022では、産業通商資源部のムン・スンオク長官、韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK On(SKオン)、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)という韓国バッテリー3社の代表、韓国電池産業協会会長も出席。原材料供給網問題についてコメントした。

 出席者からは「原材料価格と連動してバッテリー価格も上げるように完成車メーカーと契約をしているが、長期的に不確実性が続く場合はバッテリー側にも影響が生じる可能性がある」「合弁会社の設立などで安定した供給確保と価格競争力確保に力を入れている」「企業が原材料供給先を多様化しても限界がある。原材料供給は外交問題や資源を巡る覇権争いもあるため政府レベルでの長期対策が必要。いつどこでどのような制裁が飛び出るか分からない」といった声が上がった。ムン長官は「バッテリー供給網問題は政府の重大事項と認識している。世界ニッケル供給の24%を占めているインドネシアをはじめ、世界の供給網を確認する。省庁間で意見を共有している」と説明した。

 韓国バッテリー3社は主に、ニッケルの配合量が高いNCM(ニッケル、コバルト、マンガン)系、NCA(ニッケル、コバルト、アルミニウム)系のバッテリーを生産している。今後の事業への影響を避けるため3社は、価格が高騰したニッケルなどの原材料を含まないLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーにも目を向けている。

 LGエナジーソリューションとSKオンは21年10月、ESS(Energy Storage System)向けのLFPバッテリーを開発すると発表した。ただ発表時点では、原材料高騰が理由というよりはバッテリー事業の多角化のためという説明だった。SK onは「需要があれば(EV向けLFPも)準備する」という立場だ。サムスンSDIは今のところ、LFPバッテリーについての発表はない。

 EVメーカー側も、LFPバッテリーの採用を増やす動きがある。テスラや独Volkswagen(フォルクスワーゲン)、米Rivian(リビアン)らがLFPバッテリーを採用することを明らかにしている。韓国メディアによると、韓国Hyundai Motor(現代自動車)も25年以降、新興国向けのEVにLFPを搭載する計画があるという。LFPバッテリーはこれまで、中国メーカーが生産する価格は安いが走行距離が短いEVに搭載されるものといったイメージがあった。だがここにきて、技術進展によってエネルギー密度が高くなり、多くのEVメーカーの選択肢になりつつある。

 韓国のバッテリー原材料を扱う企業も、原材料の安定供給のため海外投資を増やしている。韓国POSCOグループは24年上半期に、アルゼンチンのリチウム工場の稼働を開始する。年間2万5000トン規模から始め、28年には年間10万トン生産を目指す。POSCOグループは18年に、アルゼンチンのオンブレ・ムエルト塩湖のリチウム採掘権を買収し投資を続けてきた。

 現代自動車やLG エナジーソリューション、SKオンは、バッテリー原材料確保の負担を軽減するため、廃バッテリーのリユースとリサイクルにも力を入れる。韓国政府は廃バッテリー関連法を整備し、企業をサポートする方針である。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022.3 .

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00056/

ウクライナ侵攻で半導体生産に危機、韓国が対策急ぐ

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ロシアによるウクライナ侵攻で韓国経済が揺れている。韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)、韓国Hyundai Motor(現代自動車)はロシアに生産工場を持つほか、韓国企業は家電やスマートフォン、自動車などでロシア市場においてトップシェアを占めているからだ。原材料の供給難によって、韓国の主力産業である半導体産業への影響も懸念される。韓国内では官民で混乱回避に向けた努力が続けられている。

半導体生産に欠かせない希ガスの輸入をロシア、ウクライナに頼る

 韓国経済にとって、ロシアによるウクライナ侵攻の最大の懸念は、主力産業である半導体への影響だ。

 半導体生産に欠かせない希ガスの主要生産国はロシアとウクライナである。ロシアによるウクライナ侵攻後、半導体生産への懸念からサムスン電子と韓国SK Hynix(SKハイニックス)の株価が大幅下落した。両社は常に3カ月分の原材料を確保しているため、今のところ生産に支障はないとしている。

 とはいえ韓国半導体業界は、半導体工程に欠かせないネオン(Ne)やクリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガスについて輸入に頼っている。韓国関税庁の21年輸出入貿易統計によると、ネオンの輸入はロシアからが5.2%、ウクライナからが23%である。クリプトンはロシアからが17.5%、ウクライナからが30.7%、キセノンはロシアからが31.1%、ウクライナからが17.8%だ。希ガスの多くをロシアとウクライナに依存していることが分かる。

 ネオンは、シリコンウエハーに微細回路を刻むためのDUV(Deep UV)露光工程で使われる。DRAMでは約90%、NAND型フラッシュメモリーはほぼ100%を、DUV露光工程によって生産しているという。

 韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOは22年1月、製鉄所の酸素工場内の空気分離装置を活用してネオンガスを抽出する「ネオン生産設備」を完成したと発表した。ただPOSCOの設備でも、韓国内の需要の約16%に相当する分しか生産できないという。

 半導体のエッチング加工工程に必要なクリプトンとキセノンは、ロシアとウクライナからの輸入の割合が非常に大きい。POSCOは半導体工場に納品できる程度のクリプトンとキセノンの生産も進めているが、いつ量産できるかは未定という。

 韓国半導体業界は、原材料供給網の強靭化を図っているとする。しかし半導体製造に不可欠な希ガスは、ロシアとウクライナを除くと中国や米国、フランスくらいしか供給元がないようだ。希ガスはロシアとウクライナが緊張状態だった22年1月から、既に値上がりが止まらない状況だ。

 ウクライナ侵攻による半導体生産の先行き懸念から、今後、世界で半導体不足に拍車がかかる恐れもある。韓国メディアの報道によると現在、世界中からサムスン電子とSKハイニックスへの注文が殺到しているという。22年2月にはキオクシアと米Western Digital(ウエスタンデジタル)が共同で運営する半導体製造工場で、フラッシュメモリーの製造に不純物が混入していたことが明らかになった。さらに米Intel(インテル)は22年3月からデータセンター向けの新CPUを発売することを受けて、DRAMの買い替え需要によるメモリー半導体の価格上昇が見られることも、半導体不足に追い打ちをかけている。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 3.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00055/

サムスン「Galaxy S22」が韓国で出足好調、久々3000万台超なるか

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の最新フラグシップスマホ「Galaxy S22」(以下、S22)の販売が2022年2月25日から韓国で始まった。韓国SK Telecom(SKテレコム)など大手通信事業者3社は、22年2月14日から予約販売を開始。S22は、前機種であるGalaxy S21(以下、S21)と比べて予約が3倍以上となるなど出足は好調だ。中国・小米科技(Xiaomi、シャオミ)などの追い上げで、スマホ世界シェア1位キープが危うくなっていたサムスン電子だが、S22の予想以上のヒットでほっと胸をなで下ろしたところだろうか。

 S22シリーズは、前機種のS21から価格を据え置き、ディスプレーやカメラ、アプリケーションプロセッサー機能などを全体的に向上した。アプリケーションプロセッサーは、Galaxyスマホで初となる4nmプロセス技術を使ったアプリケーションプロセッサー(国によって米QualcommのSnapdragon8Gen1か、サムスン電子のExynos2200)を採用。AI(人工知能)処理専用のプロセッサー「NPU(Neural Processing Unit)」も活用することで、S21よりも約2倍の処理速度を実現したという。イメージセンサーもS21より約23%大きくし、暗い場所での撮影でも多彩な色彩を表現できるようにした。

 前機種のS21は、その前のGalaxy S20との違いが分からないという評価が多かった。S22ではその反省を教訓に、手堅く機能向上を図ったようだ。

 S22シリーズはディスプレーサイズが6.1型のS22と6.6型のS22+、6.8型のS22 Ultraの3種類を用意した。予約販売で最も人気が高いのが、最もディスプレーサイズが大きいGalaxy S22 Ultraだ。SKテレコムは予約分の70%、韓国KTは67%、韓国LGU+は53%がS 22 Ultraとのことだ。3社とも予約者は30~40代の男性が圧倒的に多いという。

 S22 Ultraは、コアなファンが多い「Galaxy Note」の特徴である電子ペン「Sペン」を本体に収納できるデザインを引き継いだ。これがNoteファンの心を動かしたようだ。S21もSペンを扱えたものの、本体に収納できず不便だった。Sペンの機能も改善しており、反応速度がより速くなり、思い通りに字を書いたり絵を描いたりしやすくなった。80カ国語の手書き文字を認識しテキストに変換できる。

 韓国のSNSでは、19年発売のGalaxy Note 10や18年発売のGalaxy Note 9からS22 Ultraに乗り換えたという書き込みが目立った。ついにNoteファンを満足させるスマホが登場した喜ぶコメントが多かった。S22 Ultraの売れ行きが好調なことから、韓国内で、折り畳み形態が特徴のスマホ「Galaxy Z」シリーズにもSペンを収納できるモデルを投入するのではないかという報道もあった。

 S22 Ultraの背面カメラは、Galaxyシリーズで最大となる1億800万画素と1200万画素、1000万画素2つのクアッドカメラを採用した。暗いところで撮影すると、光が反射して映り込むフレア現象を改善したのが特徴だ。SNS投稿のために写真や動画の画質を重視するユーザーが多いことから、フレア現象の改善は、S22 Ultraの先行レビューでも高く評価されていた。写真に写りこんだ影や光の反射を消すAI消しゴム機能も話題だった。

 S22シリーズは、Galaxy Zシリーズと同様に、アーマーアルミニウム(Armor Aluminum)、ボディーの前後面に、米Corning(コーニング)製の強化ガラスを使い耐久性を強化した。S21ではポリカーボネートを採用し、本体が安っぽいという不満が漏れていたことを意識したようだ。

 S22 Ultraは、レッドとスカイブルー、グラファイトの3色をサムスン電子のホームページで販売する限定カラーにした。この3色は、予約販売初日に完売した。

 章恩(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2022. 2.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00054/