活況だった「AI EXPO KOREA 2021」、政府の「データダム」政策がAI活用を後押し

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です


 2021年3月24~26日、ソウル市のCOEXで韓国人工知能協会が主催する「AI EXPO KOREA 2021」が開催された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で例年より規模を縮小し入場者数を制限したにもかかわらず注目度は高かった。

 会場は大きく「データ市場」「AIソリューション」「ビジネスインフラ」「AI融合ビジネス」「AI非対面サービス」に分かれており、中でもAI学習データ加工やデータのラベル付け自動化、データマネジメントなどの企業が目立っていた。

 これは韓国政府が力を注ぐ「データダム」と関連があるようだ。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 4.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00075/

非対面の時代に脚光浴びる「人工人間」、Samsung社「NEON」は司会者や銀行員に

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 2021年2月17日、韓国Samsung Electronics社の映像ディスプレー事業部は新規事業として、価格が200万ウォン台(約19万~28万円)のキオスク端末を同月末に発売すると発表した。同社はStarbucksやMcDonald’sの店舗向けにデジタルサイネージを供給したことはあるが、キオスク端末は初めてである。「Samsung Kiosk」という商標の出願も済んでいる。

 24型タッチパネルを採用した。設置方法は、スタンド型、壁掛け型、卓上型の3種類がある。タッチパネルには、99.99%以上の抗菌効果をうたうコーティングを施した。

 OSは、同社のテレビやスマートウオッチにも使っている「Tizen」。HTML5やCSSといったWeb標準技術に対応しており、キオスク向けアプリケーションを開発しやすくした。カードリーダやレシートプリンタ、QRコード/バーコードスキャナ、NFC(Near Field Communication)、無線LAN(Wi-Fi)などの機能を備える。情報提供や注文、決済、遠隔操作、顧客・決済データの分析などが可能で、そのために別途PCを用意する必要がない。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 3.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00073/

韓国対話型AI「20歳女子大生イ・ルダ」、学習データの個人情報侵害問題でサービス中断

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韓国のAIスタートアップScatterLab社が開発し、20歳の女子大生と対話する気分を味わえるとしたAI「イ・ルダ」(https://luda.ai/)。言語処理AIのベンチマーク「SSA」で78%と高いスコアを実現していたが、サービス開始から3週間後、学習に用いたデータが個人情報を侵害しているとして問題となった。

 政府機関が調査を開始し、イ・ルダは結局、サービスを中断。学習に使用したディープラーニング対話モデルを廃棄するという結末を迎えた。

 イ・ルダはFacebookのメッセンジャー経由で利用するオープンドメイン対話AIで、サービス開始から2週間で利用者75万人を突破したほど人気を集めた。利用者の85%が10代だったほど、青少年の良き話し相手になっていた。

 ところがサービス開始後すぐ「イ・ルダをセクハラする方法」というSNSの投稿が問題になり、広く認知されるようになった。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2021. 2.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00071/

米国が迫る半導体「機密事項」要求の波紋、沈黙サムスンの判断は

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米政府が世界の半導体大手に求めている「機密事項」の開示要求が、波紋を広げている。営業機密ともいえる情報開示の要求に対し、世界各国の半導体企業が戸惑いを隠せないでいるからだ。米政府が情報提供期限として定めた2021年11月8日(米国時間)が迫る中、当初、情報開示を断固拒否する姿勢を見せていた半導体受託生産最大手である台湾TSMC(台湾積体電路製造)が、米政府の要請に応じる準備をしているという報道も出てきた。沈黙を貫いたままの韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の判断に注目が集まる。

異例の要求に当初TSMCが反発も、歩み寄りの報道も

 米商務省は21年9月24日、米Intel(インテル)やTSMC、サムスン電子、韓国SK Hynix(SKハイニックス)など世界の半導体メーカーや、半導体の大口購買者である完成車メーカーなどを対象に、「半導体供給網危機に関する公開意見要求(Notice of Request for Public Comments on Risks in the Semiconductor Supply Chain)」を告示した。長引く半導体不足を解消し、半導体のサプライチェーン(供給網)全体の透明性を図るために、大きく13項目の情報を45日以内に自発的に開示するように求めた。具体的には、半導体の生産能力や、発注から実際に半導体を使えるようになるまでのリードタイム、在庫、主要生産製品、製品別の月当たりの売り上げ、製品別の主な顧客、顧客別の売り上げ、今後6カ月間の増設計画などである。

 これらは企業にとっては、営業機密といえる重要な情報ばかりだ。簡単に開示できる項目ではない。米政府は自発的な情報開示を求めているとはいえ、協力しない場合は、米国防生産法(DPA)に基づいて半ば強制的な情報提供もちらつかせる。世界の主な半導体企業は、米政府の異例ともいえる要求にどのように応えるのか。さまざまな情報が飛び交っている。

 TSMCは21年10月初頭の段階で、「顧客に関する情報は絶対漏らさない」「米政府の要求が半導体供給ネットワーク問題を解決するためのものなら、我々ができる方法を講じる」など、要求は度が過ぎると批判的な態度を見せていた。だが複数の韓国メディアの報道によると、TSMCはここに来て米政府の要求に歩み寄る姿勢を見せているという。主要な韓国メディアは21年10月25日、台湾内の報道を引用し、TSMCが米政府の要求に応じる準備を進めていると報じた。

 他の半導体大手も、米政府の要求に協力する方向という情報が飛び交っている。ロイター通信は21年10月22日、米商務省報道官の発言として、インテルや米GM(General Motors)、SKハイニックスなど複数の企業が、米政府の求める情報開示要求に対して前向きな姿勢を示していると報じた。

 SKハイニックスの態度も見えてきた中、韓国内では残る半導体大手のサムスン電子の対応に注目が集まっている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 10.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00046/

EV電池三国志、中国勢独走に韓国3社追随 日本は地盤沈下

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世界で電気自動車(EV)の販売が急拡大するのに伴い、EV搭載バッテリー市場の競争が激しくなっている。シェア首位を独走する中国勢に対し、韓国バッテリー3社はシェアを守りながらすぐ後ろを追いかける。日本は中韓の攻勢に対し、地盤沈下が目立ってきた。

 韓国のエネルギー市場専門の調査会社SNE Researchは2021年9月29日、2021年1月〜8月期の世界市場で登録されたEV搭載バッテリーのメーカー別シェアを公表した。首位は中国・寧徳時代新能源科技(CATL)であり、シェアは30.3%と前年同期から6.9ポイント増やした。2位は韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)である。シェアは24.5%で同1.5ポイント増だ。韓国勢はこの他、韓国SK on(韓国SK Innovationから21年10月に分社)がシェア5.4%で5位に、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)がシェア4.9%で6位に入った。韓国バッテリー3社が、中国勢の独走を追いかけている様子が見える。

 気になるのが日本勢のパナソニックだ。同社のシェアは前年同期から7.5ポイント減の13.3%とジリジリと中韓の勢いに押されている。SNE Researchによると21年1月〜8月期に登録されたEV搭載バッテリーの総量は162.0GWhであり、前年比約2.4倍に増えたという。同社は、EV市場において米Tesla(テスラ)の独り勝ち時代が終わり、群雄割拠の地殻変動が起きていると分析している。中韓勢はこの地殻変動の波をうまく捉えて成長につなげている。その一方、パナソニックはその波を捉えきれていないのかもしれない。

 韓国内でも、パナソニックとトヨタ自動車の共同出資会社であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)が、2022年までEVバッテリー生産費用を半分に減らす方針や、トヨタ自動車が2030年までにバッテリー開発と生産に1.5兆円を投資することについて大きく注目している。しかし韓国メディアでは、テスラとトヨタ自動車ばかりに集中するパナソニックについて、今後のEV搭載バッテリー市場のシェア拡大につながるのか疑問視する記事が目立つ。EV搭載バッテリーの生産費用を減らす工夫は、既に韓国勢も取り組んでいるからだ。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 10.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00045/

Galaxy ZとiPhone 13が火花、気になるサムスン電子の次の一手

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2021年9月14日(米現地時間)、米Apple(アップル)が「iPhone13シリーズ」を発表した。iPhone新機種のライバルとなるのが、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が21年8月に発表し人気を集めている折り畳みスマホ「Galaxy Zシリーズ」だ。最新ハイエンドスマホのライバル同士となる両者の間で、競争が過熱している。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 10.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00044/

サムスン対ソニー、業界初2億画素イメージセンサーで王手へ

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年9月2日、業界初をうたう2億画素モバイルイメージセンサー「ISOCELL HP1」と、5000万画素のイメージセンサー「ISOCELL GN5」のサンプル出荷を始めた。サムスン電子は多画素とピクセル微細化を武器に、イメージセンサー市場における業界首位ソニーグループの牙城を切り崩しにかかっている。

 ISOCELL HP1は0.64μmの画素2億個を、わずか1/1.22インチのサイズで実現した。つまり高画質でありながら小さいデバイスにも搭載できるほど小さいのが特徴だ。撮影する環境の明るさに応じて、複数のピクセルを1つに束ねて大きなピクセルとして扱い、受光面積を広げより鮮明に撮影する「Chameleon Cell」と呼ぶ独自の技術を採用した。明るい場所では0.64μmのピクセルのままで、夜景や室内など暗い場所を撮影する際はピクセルを最大16個組み合わせ、受光面積を広げた2.56μmのピクセルとして扱える。ピクセル4個を組み合わせて30フレーム/秒の8K映像を撮影できる技術も搭載した。

 ISOCELL GN5は、オートフォーカス機能を強化したイメージセンサーである。通常はピクセル1つにフォトダイオード(光を集める機能)があるが、ISOCELL GN5では2つのフォトダイオードを搭載する。上下左右の位相差を全て利用し、素早くオートフォーカス機能を利用できるのが特徴だ。

 サムスン電子は、多画素化とピクセル微細化を武器にイメージセンサー市場を猛烈な勢いで攻めている。19年5月に6400万画素、19年8月に1億800万画素のイメージセンサー開発を発表するなど、いずれも業界初をうたう多画素化を更新し続けている。ピクセル微細化についても、15年7月に1.0μmピクセル、17年10月に0.9μmピクセル、19年9月に0.7μmピクセル、21年7月に0.64μmピクセルと、次々と小型化を進めている。サムスン電子は25年に、人間の目に匹敵する約6億画素のイメージセンサー実現を目指す考えだ。

 サムスン電子によると、1億画素以上のイメージセンサー市場は年平均32.4%で成長しているという。イメージセンサー市場全体の年平均成長が7%程度であるため、今や多画素イメージセンサー市場が成長の中心だ。同社によると21年に5200万個、25年には1億6000万個の1億画素以上イメージセンサーがカメラに搭載される見込みという。

 多画素イメージセンサーのニーズが増えている背景には、スマートフォン(スマホ)に搭載するカメラの数が増え続けているという事情がある。サムスン電子の最新スマホ「Galaxy Z Fold3」はカメラが5つもある。多画素化と小型化は、カメラ性能が競争軸となっているスマホ市場にとって欠かせない要件となっている。

 イメージセンサーの市場は、自動運転用や医療用、防犯用、スマートファクトリー、スマート家電などにも広がっている。特に自動運転車には、1台につき平均8つ以上の高画質カメラを搭載しているといわれる。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 9.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00043/

GMのEVに相次ぐ発火、原因名指しのLGに巨額賠償の試練

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米GMは2021年8月20日、同社の電気自動車(EV)「Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)」のリコール(回収・無償修理)対象を広げると発表した。バッテリーの発火事故が相次ぎ、GMは20年11月と21年7月にもリコールを発表。今回の追加リコールで同車種の直近生産分まで対象を拡大した。原因が明らかになるまで同車種を販売中止にするという。GMが名指しで欠陥の原因と指摘したのが、Bolt EVが採用する韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)のバッテリーセルだ。GMは同社と韓国LG Electronics(LG電子)にもリコールの費用負担を求める考えで、LGは試練に立たされている。

 3回にわたるリコールで、リコール対象はBolt EVの全モデル、合計約14万台に広がった。GMは米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に対して発火原因を「バッテリーセルの製造上の欠陥」と報告したという。セルの負極タブと分離膜が破裂する可能性があり、充電中に発火するおそれがある。LGエナジーソリューションとGMが共同調査にあたっている。

 リコールに伴う費用は18億ドル(約2000億円)に膨れ上がったとみられる。GMはリコール費用をLGにも求める考えだ。LG電子とLGエナジーソリューションは21年4〜6月期の決算において、リコール対策費用としてそれぞれ2346億ウォン(約220億円)、910億ウォン(約90億円)を充当した。

 ただしリコール対象が広がったことで、用意した額に収まらない可能性も出てきた。調査結果次第で、GMとLG側でリコール負担の比率も変わる。LGエナジーソリューションのバッテリーセルを巡っては、韓国・現代自動車(Hyundai Motors)も発火のおそれがあるとしてリコールを決めた。その際のリコール負担比率はLGが7割、現代自動車は3割だった。韓国内では、GMとLGの負担比率も同じような割合になるとみている。

 GMのリコール対象拡大を受けて、LGエナジーソリューションの親会社である韓国LG Chem(LG化学)の株価は大幅下落した。LGエナジーソリューションは21年6月、新規株式公開(IPO)に向けて韓国取引所に上場予備審査を申し込んでいた。しかしGMのリコールを受けて、審査の延長を依頼したという。LG化学は、LGエナジーソリューションの上場によって10兆ウォン(約9000億円)以上の資金を確保し、米国や欧州、中国といったメジャーなEV市場にバッテリー生産工場を増設する計画だった。しかしGMのリコール拡大で、その目算は狂ってしまった。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 9.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00042/

サムスンが折り畳みスマホで反撃、迫るシャオミ 首位死守へ

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2021年8月11日、新製品発表イベント「Samsung Galaxy Unpacked 2021」をオンライン開催し、折り畳みスマートフォン(スマホ)の新機種などを発表した。長らくスマホの世界販売シェア首位を維持してきたサムスン電子だが、ここに来て中国・小米科技(Xiaomi、シャオミ)が同社の地位を脅かすようになってきた。サムスン電子はスマホで今後も競争力を維持できるのか。

サムスン電子が単月で首位陥落、シャオミが初の1位に

 サムスン電子が今回発表したのは、折り畳みスマホの「Galaxy Z Fold3 5G」(以下Fold3)と「Galaxy Z Flip3 5G」(以下Flip3)、スマートウオッチの「Galaxy Watch4」と「Galaxy Watch4 Classic」、そしてワイヤレスイヤホンの「Galaxy Buds2」だ。

 イベント後、韓国内外のメディアやレビューサイトでは、今回のサムスン電子の新製品を高く評価した。韓国内では同年8月12日から、発表したスマホを3日間レンタルできる体験イベントが始まり、同17日午前中からサムスン電子のオンラインショップで特典付き先行販売がスタートした。開始直後にアクセスが集中し、サイトにつながりにくくなるトラブルが続き、午後になってやっとアクセスできたと思ったら製品は売り切れになっていた。韓国内での幸先は好調だ。

 もっとも今回の発表の直前に当たる21年8月5日、長らくスマホ世界市場でシェア首位を維持してきたサムスン電子に陰りが見えてきたことが明らかになった。香港の調査会社Counterpoint Technology Market Research(カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ)が、21年6月の世界スマホ販売シェアで、シャオミがサムスン電子を抑えて初の1位になったと発表したからだ。

 確かに近年、スマホ世界市場でサムスン電子は、米Apple(アップル)とシャオミの板挟みで中途半端なポジションになっていた。韓国メディアはサムスン電子に対し、「(サムスン電子のスマホ主力ブランドである)Galaxyは、アップルよりもブランド力が落ちる。同スペックのスマホを比較すると、サムスン電子の製品のほうがシャオミよりも4割近く価格が高い」と手厳しい評価をしていた。

 かつてない危機にさらされるサムスン電子は、今回の新製品発表でなんとか競争力維持を示した格好だ。

 Fold3とFlip3は、折り畳みスマホGalaxy Zシリーズの3世代目に当たる。2世代目の機種から耐久性をぐんと向上し、低価格化した点がポイントだ。ヒンジ部分を含め端末を密封するような仕組みで水深1.5mの淡水で最大30分耐えられるIPX8クラスの防水機能と、前機種より頑丈なアルミニウムと強化ガラスを採用した。

 ディスプレーの保護フィルムを従来のTPU(熱可塑性ポリウレタン)素材から、より強度を持つPET(ポリエチレンテレフタレート)素材に切り替えた。耐久性を約80%向上させると同時にタッチ感も改善した。折り畳み機構の耐久性も向上し、外部検証機関による20万回の折り畳みテストを実施し、問題ないことを確認したという。

 なんといっても韓国のGalaxyファンが喜んだのは、Fold3で、同社の折り畳みスマホとして初めて「Sペン」によるペン入力に対応した点だ。

 これまで折り畳みスマホでSペンによるペン入力に対応するのは難しかった。電子ペンの動きをデジタル信号に変換する入力装置デジタイザーを折り畳みディスプレーに配置すると損傷の恐れがあったからだ。Fold3では、デジタイザーを折り畳みディスプレーの両側に入れ、アルゴリズムで信号を計算し2つのディジタイザーを一体化して作動させることでこのような課題を克服した。前機種であるFold2までは、無駄に高額なスマホと評価を下していた韓国のレビュアーたちも、Fold3は「折り畳みスマホを見直すきっかけになった」という意見が目立つ。

 コンパクトな折り畳みスマホであるFlip3は、カメラ機能を改善し、端末カラーの選択肢を増やした。カバーディスプレーを大型化し、メインディスプレーを開かなくてもメッセージを8行まで確認できるようにした。韓国で利用者が増えているモバイルペイメント「サムスンペイ」にも対応している。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2021. 8.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00041/

KOTRA 韓国 IT EXPO 11月9日~18日 オンライン開催

KOTRA 韓国 IT EXPO 11月9日~18日 オンライン開催

『製造業からBTSまで、韓国のニューノーマルとDX 』
セミナーVOD公開

KDDI総合研究所特別研究員・ITジャーナリスト
趙章恩(チョウ・チャンウン) 氏

迅速に柔軟に非接触型社会へ変わり始めた韓国。IT強国としていち早くDXに取り組んだ韓国は、 産業全般においてコロナ禍を跳ね除け、逆に成長を成遂げた企業も多く存在します。 例えば、BTSの世界進出や、ビルボード1位もニューノーマルを 見据えたDXが影響しています。韓国企業のDX事例と今後の展望を解説します。