次の「NiziU」狙うK-POP業界 日本で日本人メンバーを発掘

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ソニーミュージックとJYPエンターテインメントとの共同オーディション番組『Nizi Project』からデビューした「NiziU」は、日韓で大きな反響を呼んでいる。韓国大手芸能事務所は「次のNiziU」を発掘しようと既に動き出しているようだ。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

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 今年のK-POPはガールズグループが大躍進している。この6月にIZ*ONEが4か月ぶりに新曲『幻想童話(Secret Story of the Swan)』を発売し、TWICEも療養のため活動を休止していたミナが戻り、9か月ぶりにメンバー9人揃って新曲『MORE & MORE』を発表し活動を再開した。BLACKPINKも1年2か月ぶりに新曲『How You Like That』でカムバックを果たし、特に人気のある3大ガールズグループが同時期に新曲を発表し注目を浴びている。また、6月最後の日にもNiziUがデジタルミニアルバム『Make you happy』をリリースし、韓国アイドル業界のニューフェイスとして華々しくプレデビューした。

 10~20代の間で最近ブームになっているのが、「ガールクラッシュ」と呼ばれる、「可愛いよりはかっこいい」、「女性に愛される強い女性」をコンセプトとしたBLACKPINK。だが、従来のガールズグループの王道とも言える、「元気いっぱいで可憐」なイメージのIZ*ONE、TWICE、NiziUは男女老若に根強い人気で、ガールズクラッシュとの差別化の意味でも、韓国内で改めて評価されている傾向がある。

 IZ*ONE、TWICE、NiziUの共通点は、オーディション番組から生まれたグループであること。デビュー前からオーディション番組を通して見守ってきたファンは、彼女らの人柄や才能、陰ながら努力する姿勢や成長する姿に感動し応援する。厳しい「K-POP式養成システム」で生き残った根性や、世界を舞台に活躍するための語学の勉強、ダンスの練習、作詞・作曲、プロデュースなどに励むメンバーの姿は、最初から完成されたアイドルよりも、より親しみを持って応援したくなるファン心理が働き、熱狂を呼んでいる。

 また、もう一つの重要な共通点が、この3つのガールズグループには日本人メンバーがいるという点。NiziUに至っては、日本人メンバーが中心だ。語学のハンデを超えて韓国ファンとのコミュニケーションを積極的に行う姿勢や、特に厳しい韓国のK-POP式養成システムを経験していることもあって、歌もダンスもずば抜けて上手いメンバーが揃っており、韓国人メンバーと変わらず愛されている。

 韓国の芸能事務所はIZ*ONE、TWICE、NiziUに続けと、積極的に日本人メンバーを起用しようとしている。今や世界的人気となったアイドルグループのBTS(防弾少年団)を育てた韓国の大手芸能事務所ビッグヒットエンターテインメントの日本法人は6月、日本に住む2001年以降に生まれた10代女性を対象にオーディションを実施すると発表した。歌やダンスが未経験でもオーディションに応募できることから、可能性を秘めた人材を一からアイドルとして育てたい意向があるようだ。

 これまで、ボーイズグループを中心に力を入れてきたビッグヒットエンターテインメントがガールズグループを育成するということで、韓国メディアは「ついにビッグヒットエンターテインメントが次世代のガールズグループを企画」「日本で日本人メンバーを発掘する」と大々的に報道し話題になった。

 ボーイズグループでも日本人メンバーが起用され始めている。現在放送中の、ビッグヒットエンターテインメントからデビューする「第2のBTS」を選ぶオーディション番組『I-LAND』でも日本人練習生が活躍しており、韓国大手芸能事務所YGエンターテインメントから8月7日にデビューしたばかりの12人組ボーイズグループTREASUREにも、日本人メンバーが4人含まれている。「I-LAND」は回を重ねるごとに反響が増しており、今後日本人練習生がデビュー組に入れるか、韓国ファンも大いに注目している。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。


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2020. 8.

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韓国アイドルの“人気の証”、地下鉄に急増する「応援広告」

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10~20代の若者を中心に大人気の韓国アイドルグループ。その人気は今やアジアを超えて欧米にも拡大している。韓国では、そんなアイドルを支える熱狂的なファンによる独特の応援方法があるようだ。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

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 ソウル地下鉄駅構内を歩くと、壁や柱に設置されている電子看板、大型ビジョンのほとんどがアイドルの広告で埋め尽くされている。日本でも駅に設置された企業の広告をよく見かけるが、実は韓国の場合、この多くは企業が出した広告ではなく、ファンが募金して設置したもの。ファンが自費でお金を出してアイドルの誕生日を祝ったり、兵役などからのカムバックを祝ったりして、“推し”の応援広告を出しているのだ。

 広告には、応援メッセージが書かれた付箋がたくさん貼られており、この付箋の多さが“人気の証”とも言われる。付箋の管理もファンクラブが行っていて、迷惑にならないよう定期的に回収していた。誰もが知る有名なアイドルだけでなく、自分で自分を売り込むために広告を出す芸能人や、一般人が友人の誕生日祝いに広告を出すケースもある。

 応援されたアイドル本人が広告の前で「認証写真」を撮り、SNSに投稿したりしてファンに感謝の気持ちを表したりもすることもあり、ファンとアイドルをつなぐコミュニケーションの場にもなっている。ファンにとっては、自らがお金を出して設置した広告に本人がレスポンスをしてくれる嬉しさもあり、韓国国内や海外のファンがわざわざソウルに来て好きなアイドルの広告を巡る「巡礼応援」も活発に行われているようだ。

 韓国の広告市場は、ウェブサイトや動画サイト向けのデジタル広告が急増する一方で、伝統的な地上波放送や新聞・雑誌、屋外広告は右肩下がりの状況だ。広告市場に占めるデジタル広告の割合は2020年に半分を占める見込みである。ひと昔前までは、地下鉄駅構内も広告がほとんどなく白いボードばかりが目立ったが、韓国のアイドル業界が過熱するのに伴い、熱心なアイドルファンの「自分の推しの魅力を皆に知ってもらいたい」という思いが広がり、地下鉄の空いた広告スペースがあっという間に応援広告でいっぱいになった。

ソウル地下鉄を管理するソウル交通公社によると、応援広告は「オーディション番組が人気を集め始めた2016年頃から急増した」という。当時の韓国オーディション番組が「視聴者の投票でデビューメンバーが決まる」と宣伝していたこともあり、推しに投票してもらおうと、ファンが競うように広告を出したようだ。また、1日に約750万人が利用するソウル地下鉄だけに広告費も高額と思われがちだが、実はそれほど高くなく、例えば大型の電子看板の場合、1件当たり月約8万~39万円と手頃だ。この費用の安さも、応援広告が急増した大きな要因だろう。

 ソウル市とソウル交通公社によると、2019年に地下鉄駅構内に掲載されたアイドル広告は2166件だった。最も広告件数が多かったのは人気アイドルグループの「BTS(防弾少年団)」の227件で、次に「EXO」の165件、現在は活動を終了した「Wanna One」の159件と続く。ガールズグループでは、日本でも大人気の「IZ*ONE」が40件と最も多く、「TWICE」「BLACKPINK」がそれぞれ22件だった。

 今年は、K-POPの中でもガールズグループが大躍進している。特に勢いのある3大ガールズグループが、オーディション出身で日韓合同メンバーの「IZ*ONE」と「TWICE」、人気急上昇中の「BLACKPINK」だ。特に「BLACKPINK」の人気は韓国では凄まじく、6月26日に公開した新曲『How You Like That』のMVはK-POP史上最速で再生回数3.8億回(8月4日時点)を突破した。YouTube公式チャンネルの登録者数も4320万人を超え、K-POPアーティストのチャンネルとしては最多を記録している。メンバーのJISOOはクリスチャン・ディオール、JENNIEはシャネル、ROSÉはイヴサンローラン、LISAはセリーヌのアンバサダーを務め、韓国だけでなく世界での知名度も急上昇中だ。

 ここに新たに加わったのが、ソニーミュージックと韓国のJYPエンターテインメントとの共同オーディション番組『Nizi Project』からデビューした日本人ガールズグループ「NiziU」だ。韓国では、まだ正式デビュー前にもかかわらず、7月15日に公開された韓国版『Make you happy』のMVは再生回数1300万回(8月4日時点)を超えた。早くも「NiziU」ファンによる地下鉄の応援広告募金も始まっている。応援広告の数が韓国アイドル人気のバロメーターとなる中、今後は「NiziU」も代表的なガールズグループの一つとして、ソウル地下鉄を賑わす日は近いだろう。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。


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2020. 8.

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「NiziU」手掛けたJ.Y.Park 日本で“イメチェン”成功か?

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今、日本で大きな反響を呼んでいる9人組ガールズグループ「NiziU」。ソニーミュージックと韓国のJYPエンターテインメントとの共同オーディション番組『Nizi Project』からデビューした同グループだが、成功に導いたプロデューサーのJ.Y.Parkにも注目が集まっている。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

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 今日本で大人気の「NiziU」は韓国でも大きな話題となっている。6月30日にリリースされたNiziUのデジタルミニアルバム『Make you happy』の韓国版MVが7月15日公開されると、たった半日で200万回再生を記録。6月29日に1万9150ウォンだったJYPエンターテインメントの株価は7月20日時点で3万2450ウォンと1.5倍以上上昇し、時価総額は約1兆1100億ウォンを突破した。

 今年1月から始まった『Nizi Project』は、日本だけでなくJYPエンターテインメントのYouTube公式チャンネルでも公開されており、NiziUを応援する多くの韓国ファンがデビューまで見守り続けた。韓国メディアもオーディションの一部始終を報道し、「日本人中心のメンバーがK-POP式トレーニングでデビューする」という初の試みに期待が寄せられていた。

 だが、韓国ファンの間では『Nizi Project』の番組編集に不満の声も上がった。「オーディション参加者よりJ.Y.Parkが主人公みたい」、「J.Y.Park本人が日本でデビューしたくてNizi Projectを企画したように見える」、「誠実さや人間力がクローズアップされすぎ」「 “J.Y.Park名言集”まで登場している」など。さまざまな反応があるなか、特に多かったのが「J.Y.Parkが日本でイメチェンに成功している」といった声だ。

 というのも、私立名門の延世大学出身のJ.Y.Parkは、今でこそ作曲家、振付師、プロデューサーと活躍の幅を広げているが、もともと韓国では有名な歌手である。1994年に発表したソロデビュー曲ですぐに一躍有名になったJ.Y.Parkだが、歌で魅了する“普通の”タイプの歌手ではなかった。デビュー当時は、常にセクシーであることを追求し続けた「型破りな歌手」というイメージで活動していたのだ。

インタビューでは下着と靴下が丸見えの透明ビニールパンツ姿で登場したり、雑誌の特集でもヌード写真を公開したり、奇抜なファッションで歌ったりと、ずば抜けた歌とダンスでファンを魅了しつつも、音楽活動以外の面も際立っていた。韓国ではその頃のイメージが強いだけに、今回の『Nizi Project』でのJ.Y.Parkに“イメチェン感”を覚え、面白く受け止められたのだろう。

 韓国では今、J.Y.Parkに関する記事が出る度にかつての「透明ビニールパンツ」写真が再掲載されている。あまりにインパクトが大きいため、J.Y.Parkの歌手時代を知らない10~20代の若年層の脳裏にも焼き付いてしまうほどである。J.Y.Parkは、2015年にバラエティー番組に出演した際、「インターネットからあの(透明ビニールパンツ)写真を削除したい…」と嘆いていた。

 今はすっかり落ち着いて、K-POP界をリードするプロデューサーであり、オーガニック野菜と大量のサプリメントを欠かさない健康オタクのJ.Y.Park。その人柄も評判通りで、2020年6月に放送されたテレビ番組では、自身がプロデュースしたガールズグループ「Wonder Girls」の元メンバーが、別の事務所に移籍した後もJ.Y.Parkに仕事の相談をする様子が放送された。本人も2人の娘を持つ父親だからか、自身がデビューさせたメンバーをいつまでも心配し見守る姿は、父親そのものだった。

 J.Y.Parkは歌手活動も続けている。デビュー当時から「60才になっても歌って踊りたい」と語っていた彼は、昨年12月、自身が作詞作曲した曲の中で韓国の音楽チャート1位になった曲が50曲(2019年末時点で55曲)を突破したことを記念し、「Park Jinyoung Concert No.1 X 50」を開催。3時間のステージを1人で歌って踊った。

 J.Y.Parkが手掛けたガールズグループは全て成功し、プロデューサーとしての夢も着実に実現させている。日韓で愛されるNiziUのグローバルな活躍に今後も期待したい。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。


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2020. 7.

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Netflixはいかにして韓国ドラマを世界的ブームにしたのか?

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新型コロナウイルスによる巣ごもり需要を背景に、日本で大ヒットした韓国ドラマ『愛の不時着』と『梨泰院クラス』。これらの韓国ドラマが今、アジアを超えて欧米でも人気を集めている。世界的ブームを巻き起こしたのは、米動画配信サービスのNetflixだ。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

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『愛の不時着』に続き『梨泰院クラス』と、かつての“冬ソナ”ブームを上回る日本での人気ぶりは、韓国でも連日報じられている。黒柳徹子やSexy Zoneの菊池風磨、お笑い芸人や野球選手など、老若男女多くの著名人がSNSやYouTubeでそのハマりっぷりを投稿したことでさらに視聴者が増え、配信開始から数か月経った今も、Netflixの視聴ランキング(「今日の総合TOP10(日本)」2020年7月13日時点)では『愛の不時着』が2位、『梨泰院クラス』は3位と依然上位をキープしている。

 日本だけでなく、東南アジアや欧米での注目度も高い。CNNインドネシアや英国のBBC、ガーディアン、米国のワシントンポスト、TIME誌まで、多くの海外有力メディアが韓国ドラマの人気ぶりを報じ、アジアはもちろん米国でも韓国ドラマはTVショーカテゴリーでトップ10(米Netflixのランキング)に入るほどになった。

 どちらのドラマも、当初韓国では、地上波ではなく「tvN」や「JTBC」といった有料ケーブルテレビで放送された。韓国では、全世帯の9割以上がケーブルテレビやインターネットテレビに加入しており、視聴率は地上波より高い時もある。『愛の不時着』の最高視聴率は21.7%と、有料放送ドラマとしては歴代3位の視聴率を記録した。この強いコンテンツ力にいち早く目を付けたのがNetflixだ。視聴率の高いコンテンツの海外配信権を独占し、全世界に抱える約1億8000万人のユーザーに向けてコンテンツを配信。世界各地で韓国ドラマブームを巻き起こしたのだ。

Netflixが制作費を出資してオリジナルの韓国ドラマを制作する事例も増えている。15~16世紀の朝鮮王朝を舞台にしたゾンビドラマ『キングダム』は韓国でも大ヒットを記録し、その人気は欧米にも波及。ストーリーだけでなく劇中の衣装や小物にも興味を持つファンが急増し、米ニューヨーク・タイムズが発表した「2019年ベストインターナショナルドラマ」にも選ばれるほど話題になった。

『キングダム』の成功以降、Netflixは『初恋は初めてなので』、『恋するアプリ Love Alarm』、『愛しのホロ』と、立て続けにドラマを制作。2020年にも8本のオリジナルドラマを制作する予定だ。その中でも1話あたり2億円以上の制作費を費やしたホラードラマ『Sweet Home』は韓国内で今最も期待されている。

 こうした流れを受けて、韓国のドラマ制作会社もNetflixを無視できなくなっている。世界的な人気に加え、韓国ドラマの制作費が飛躍的に増えているからだ。韓国テレビ局のドラマ制作費は、高くても1話あたり4500万円前後なのに対し、『キングダム』シーズン1の制作費は1話あたり2億円前後と約5倍。テレビ局の予算では制作出来そうにない企画でも、地上波放送終了後にインターネット配信を独占させるという条件でNetflixに持ち込めば、同社が大きく出資してくれるのだ。

 Netflixにとっても、今や韓国ドラマは同社の収益を支える重要な存在だ。Netflixは、『愛の不時着』を制作した韓国の制作会社「スタジオドラゴン」の2番目の大株主でもあるが、Netflix側に不利な資本提携だったにも関わらず、株主になることを選んだ。2020年1月の決算発表でも、同社のテッド・サランドスCCO(最高コンテンツ責任者)は「韓国制作者のレベルの高いコンテンツが途方もない影響を作り出すだろう」と話し、株主に宛てた文書では「Made in Korea作品に投資し続ける」と書いたほど、韓国ドラマに熱を入れているようだ。

 韓国ドラマは、Netflixの配信を前提にしているからこそ、海外ドラマと競争しても負けない面白いドラマを多く制作できた。豊富な資金力を背景に、今後も第2、第3の『愛の不時着』が生まれるのは時間の問題かもしれない。

【趙章恩】
ソウル在住ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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2020. 7.

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綾瀬はるかと熱愛説ノ・ミヌ 中高生にロック広めたスター性

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これまで決定的なスキャンダルもなく、クリーンなイメージで抜群の好感度を長年維持してきた女優の綾瀬はるか(35)に、約2年にわたり極秘交際している恋人がいることが7月1日スクープされた。その相手とされるのは、韓国の俳優ノ・ミヌ(34)だ。韓国でこの熱愛報道はどう受け止められたのか? そして、ノ・ミヌはこれまでどのような芸能活動をしてきたのか? ソウル在住ジャーナリストの趙章恩さんが解説する。

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 綾瀬はるかとノ・ミヌの極秘交際が報じられると、韓国ではテレビやSNSなどで瞬く間に話題になった。

 韓国メディアは一斉に「日本の国民的女優」との熱愛を報じ、韓国の大手コミュニティサイト「theqoo」では、報道から1時間も経たないうちに記事のリンクが相次ぎ投稿された。「想像もしなかった組み合わせだけどお似合い」、「この2人が友達ということだけで驚き」、「ツーショット写真が公開されない限り信じない」、「どうやって出会ったのか不思議な縁」など、さまざまなコメントが寄せられた。

 ノ・ミヌの母親が代表を務める個人事務所「MJ DREAMSYS」は、韓国メディアの取材に対し即座に「友人であり交際はしていない」と報道を否定したが、同事務所のホームページにはアクセスが殺到。一時サイトが表示されないという事態にまでなった。

 綾瀬はるかは、韓国でも広く知られた女優だ。2018年公開の映画『今夜、ロマンス劇場で』は韓国でも公開され、『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)や『義母と娘のブルース』(TBS系)などの日本ドラマも、韓国のケーブルテレビや動画サイトで配信され評判になった。名前までは知らなくても顔を知っている人は多いはずだ。

 対するノ・ミヌは、日本では積極的にファンミーティングやライブを開催している印象だが、韓国では数年に一度ドラマにキャスティングされるくらいの印象。個人的な意見だが、誰もが知る「スター」というよりはドラマで観たことあるなという感じで、「ノ・ミヌとはどんな人?」などと報じる韓国メディアもあったほど。今回の報道が韓国で大きな話題を呼んだのは、綾瀬はるかの知名度によるところが大きかったと思う。

 だが、若い頃ミヌの大ファンだった筆者は、今回の報道で懐かしい過去を思い出した。2004年、ビジュアル系ロックバンド「TRAX」のドラマーとしてデビューし、当時「Rose」という名前で活動していたミヌは、その名前にふさわしく、「長身」「金髪ロングヘア」「美少年」と三拍子揃ったスター性抜群の存在。演奏の技術も高く力強くドラムを叩く姿は、筆者を含め多くの若者の「カリスマ的」存在だっ

また、TRAXが所属していた韓国の大手芸能事務所「SMエンターテインメント」は、東方神起やBoA、少女時代、SUPER JUNIORなど韓国を代表するアイドルを育成した会社だ。その会社からビジュアル系ロックバンドが誕生したということで話題性も申し分なく、アイドル好きの中高生たちがロックを聞くきっかけとなったことは間違いない。今でもTRAXの初期アルバムは「聞き飽きない名曲」として音楽配信サイトで根強いファンに愛されている。

 当時筆者は、アルバムは全部持っていたし、いつもTRAXの曲を聴いていた。15年以上も前の話だが、ミヌは「Cyworld」(韓国のSNS、現在はサービス終了)という、自分の部屋やアバターを作って、着せ替えしたり音楽を流したり、日記や写真を掲載して交流するサイトで、「オズのアリス」というニックネームでファンと交流していた。その当時はファンのことを「ファンジャ(患者)」と呼んでいたっけ…。そのミヌが大人になって、日本の国民的女優と熱愛報道が出るなんて、「やったね!」と心から応援したい気持ちだ。

 ミヌは、2006年にTRAXを脱退し、2010年にはSMエンターテインメントに対し訴訟を起こすなどの問題もあったが、その後も音楽活動を続けている。2008年にインターネットテレビ向けに制作された韓国映画『Story Of Wine』では、収録された全7曲をミヌが作詞・作曲。このうち6曲はミヌ本人が歌っており、美しいメロディーの曲もあれば、気分が上がる軽快な曲もあり、才能に溢れた感受性豊かなアーティストであることがわかる。

 その後俳優としても活動し、2019年には高視聴率韓国ドラマ『ジャスティス2-検法男女』にメインキャストの一人として出演、「多重人格者の救命医」という難しい役を見事に演じきった。日本でもコアなファンが多く、素晴らしい才能の持ち主だけに、今回の熱愛報道で知名度をさらに上げ、活躍の幅を広げていってくれることを期待している。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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2020. 7

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BTSオンラインコンサート、75万人熱狂の演出 囁く声も話題

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新型コロナウイルスの影響が少しずつ落ち着き始め、最近は韓国でも社会的距離を保ちながら映画館や劇場などが営業を再開し始めた。しかし、一度に数万人が集まるコンサートではそうはいかない。K-POP業界は、3月以降全てのコンサートの延期または中止を余儀なくされている。

 そんな中、韓国の人気アイドルグループBTS(防弾少年団)は6月14日、無観客の有料オンラインコンサート「BANG BANG CON The Live」を実施。有料オンラインコンサートとしては世界最大規模となる、107の国・地域の人々約75万人が集結した。オンラインならではの仕掛けも用意され、多くのファンを熱狂させた同公演を、ソウル在住ジャーナリストの趙章恩さんが解説する。

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 BTSのコンサートといえば、秒速でチケットが完売し、サーバーがダウンするほどの騒ぎになる。だが、「BANG(韓国語で「部屋」の意味)で楽しむBANG TAN(防弾)コンサート」という意味で名付けられた今回の「BANG BANG CON」は、その名の通り、全世界のファンが、自宅にいながら「特等席」でBTSのコンサートを楽しめて、座席が売り切れる心配もない。SNSでは、ファンクラブ会員でない人も「あのBTSのコンサートを一度は観てみたい」とチケットを求める人が続出した。

 コンサートは、約100分間全12曲にわたって行われた。オープニングとなる1曲目は「DOPE」。リーダーのRM(25)が部屋の扉を開けて、「ようこそ、BANG BANG CONは初めてだよね」と語りかけながらコンサートの幕が開いた。「Boyz With Fun (フンタン少年団)」とアップテンポな2曲が続き、トークを挟んで緩やかなテンポの「いいね!」を披露。続く「Just One Day」では椅子に座ったまま歌うパフォーマンスでリラックスムードを演出し、衣装替えとCMが終わると、2~3人ずつユニットを組んで再登場。ジン(27)、J-HOPE(26)、ジョングク(22)が「Jamais Vu」を情熱的に歌う姿は美形すぎて言葉を失った。

 次のユニットでは、90年代風のスーツに身を包んだRMとSUGA(27)が「Respect」を披露し、同い年のジミン(24)とV(24)は学ランのような制服姿で登場。手をつないで「Friends」を熱唱する微笑ましいパフォーマンスでユニットコーナーを終えた。その後、「Black Swan」、「Boy With Luv(リミックスバージョン)」と続き、「GOGO」、「Anpanman」でクライマックスに向けて熱気を帯びていく。最後のアンコールは、多くの人が聞き覚えのある「Spring Day」。「またファンと直接会える日を信じて」というメッセージを意識させる選曲で締めくくった。

 曲ごとにセットの雰囲気ががらりと変わり、デビューして間もない頃の歌が聴けたり、ユニットでのパフォーマンスなど時間を感じさせない構成となっていて、「え?もう終わり?」と思うほどあっという間の100分だった。画面に映し出されるメンバーに見惚れて「あ~イポ~(かわいい)」と数千回唱えたのは私だけでないはずだ。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2020. 7.

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一晩で19億円突破 BTSオンラインコンサートが成功した理由

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韓国でも日本と同様、コロナ禍で「巣ごもり消費」が定着している。自宅でドラマや映画を楽しめる動画サイトや、全国各地からお取り寄せグルメを利用する人が増え、テレビでは「コロナ太りに気を付けましょう」とキャンペーンされるほど。そんな中、巣ごもり需要をもっともうまく活用し成功したのが韓国エンターテインメント業界だ。ソウル在住のジャーナリスト・趙章恩さんが解説する。

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 3月以降、BTS(防弾少年団)やTWICE、東方神起など、K-POP業界の全てのコンサートが中止または延期を余儀なくされている。コンサートだけでなく年内の活動の見通しも立っておらず、内需が小さく海外市場に重点を置くK-POP業界にとって、厳しい状況が続いている。そんな中、BTSの所属事務所であるビッグヒットエンターテインメントが初の試みとして積極的に行っているのがオンラインのイベントやコンサートだ。

 4月18、19日の2日間にかけて開催したBTSのオンラインイベント「BANG BANG CON(BTS ONLINE CONCERT WEEKEND)」は、YouTubeのBTS公式チャンネル「BANGTANTV」で、過去のコンサートやファン・ミーティングの模様8編を無料で公開。世界中から約224万人が同時視聴し、大きなニュースとなった。

 さらに6月14日には、無観客の有料オンラインコンサート「BANG BANG CON The Live」を開催。「自宅で楽しむBTS(韓国ではBANGは「部屋」、BANG TANは「防弾」の意)」という意味で名付けられた同コンサートは、ファンと直接接触できる機会が無くなった代わりに、オンラインならではの試みを積極的に行った。

 例えば、特設された2つのステージと5つの部屋では、視聴者が画面越しにメンバーの自宅リビングや部屋に招かれるような空間を演出し、視聴者が6つのアングルを楽しめるマルチビューにも対応。メンバーがスマートフォンカメラで自撮りをしながらトークしたり、メンバーと目を合わせて15秒間瞬きせず我慢するゲームなど、約100分間にわたるコンサート時間の中で、ファンを楽しませるためのさまざまな仕掛けを盛り込んだ。

 だが、もっと話題になったのはこのオンラインコンサートのチケット売り上げだ。チケットの金額は、ファンクラブ会員は約2600円、一般は約3500円。世界107の国や地域から視聴者が集まり、最終的なチケット購入者数は75万6600人にのぼった。最低でも、単純計算で19億円以上を一晩で稼ぎ出したことになる。BTSが通常行うコンサート1回あたりのチケット売り上げは約6.7億円なので、通常の3倍を超える売り上げに匹敵する。

 コンサート開催以降、有料ファンクラブ会員は1万人以上増加し、BTSの公式カラーであるパープルのフォトカードやキーホルダーなど、ファンクラブ限定記念グッズも60万個以上売れた。これらの売り上げを足すとさらに記録は伸びそうだ。ビッグヒットエンターテインメントは今回のコンサートを、「有料オンラインコンサートとしては世界最大規模になった」と話した。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

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2020. 6.

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ポストコロナを見据えたAI活用が続々、SamsungやLGは知能化ロボットで攻勢

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韓国疾病管理本部の発表によると、2020年4月22日の新型コロナウイルス感染者数は11人、このうち6人が海外からの入国者だった。同日までのPCR検査者数は累計57万7959人、感染者は1万694人、完治者は8277人、死者は238人と、状況はだんだん落ち着いてきた。

 現在、全ての入国者は14日間の外出禁止となり、スマートフォンに隔離者専用アプリをインストールし、保健所に健康状況を毎日2回報告する必要がある。感染経路が不明な人は4%程度にすぎない。検疫法や、感染病の予防と管理に関する法律に基づいて携帯電話の位置情報、クレジットカード使用履歴、防犯カメラの映像といったデータを集めて感染者の動線を分析し、接触者を探し出す。濃厚接触者は、検査結果が陰性でも14日間隔離される。

 このような大量検査による早期発見と隔離、徹底した感染経路解明などの施策によって、韓国では市民の不安が解消され、企業は工場を休業せずに済んだ。感染者が出ても、動線のデータから生産ラインへの出入りがないことを確認できれば、必要な場所だけ消毒と封鎖の対象にして生産ラインの稼働を続けた。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 5.

 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00053/

韓国の半導体用レジスト調達に米国が助け舟、日本の輸出管理厳格化に対応

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 2019年7月に日本政府による対韓半導体・ディスプレー材料3品目の輸出管理厳格化が始まってから、韓国企業は材料・設備を日本に依存しすぎていたとして、国産化を進めるとともに日本以外の国からの調達に切り替えていた。安定的な材料・設備調達のために韓国産業通商資源部(韓国の部は日本の省に相当)のソン・ユンモ長官が“セールスパーソン”となって米国シリコンバレーで説明会を開催するなどの“営業”を続けた結果、2020年1月9日に米デュポン(DuPont)が半導体の材料として使われるEUV(極端紫外線)リソグラフィー用フォトレジストの開発・生産施設を韓国の天安(チョナン)市に新設すると発表した。

 新施設では、同社が世界市場でシェア8割を占める半導体製造用CMP(化学機械研磨)パッドも生産する。天安市には同社の韓国子会社(ローム・アンド・ハース電子材料コリア)の工場がある。この韓国子会社は現在、回路基板用材料を生産している。フォトレジストとCMPパッドの韓国での生産に向けて、デュポンは2800万米ドル(約30億5000万円)を新施設に投資する。フォトレジストは半導体製造に欠かせない材料で、日本が韓国に輸出管理を厳格化している品目の1つである。

 デュポン・エレクトロニクス・アンド・イメージングの社長であるジョン・ケンプ氏は、韓国政府機関に投資申告書を提出した場で、「フォトレジストの開発・生産のために、これから韓国内の主な供給先と製品の実証テストを進めるなど緊密に協力する計画」であると述べた。これを受けて産業通商資源部のソン長官は「政府は核心材料や部品、設備に関する技術競争力の確保と供給先の多様化を今後も継続して推進する」と返答した。ソン長官は、米国の半導体メーカーや自動車メーカー、再生エネルギー企業、ベンチャーキャピタルなどを招待して韓国政府の戦略や外国人投資向け支援策を解説するなど、かねて熱心に営業をかけてきた。

 韓国のサムスン電子(Samsung Electronics)とSKハイニックス(SK Hynix)は、輸出管理厳格化の前までフォトレジストの9割を日本企業から輸入していた。そのため、輸出管理厳格化が始まってから代替調達先を見つけるのに苦労した。デュポンの工場誘致は、日本企業以外の調達先を確保して半導体製造を問題なく継続させようと走り回った韓国政府の努力の結果でもあることから、韓国内で高く評価されている。日本では「韓国向け輸出管理厳格化を一部緩和した」との報道もあるが、韓国企業の立場からすると、不確実性を減らすために今後も日本企業以外の調達先を見つけるしかない状況は続いている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 2.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00950/00018/

韓国 大寒波で「アヒル」が人気者に=趙章恩

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 韓国首都圏は1月6日から約1週間、氷点下19度近い大寒波に見舞われた。35年ぶりの寒さに加え大雪注意報まで発令され、道路は混雑、配達アプリがサービスを一時中断するほどだった。酷寒とは裏腹に、SNSでは雪を楽しむ人々の写真があふれた。ポータルサイトの検索キーワードやSNSのハッシュタグ(同じキーワードの投稿を探したり共有したりできる機能)として最も使われた言葉は「ヌンオリ(雪アヒル)」だった。

 ヌンオリは、プラスチック製のおもちゃ。積もった雪をぎゅっと挟むと、小さくてかわいいアヒルが作れる雪玉製造機だ。500円程度で数年前から販売されている。K-POPアイドル「BTS」のメンバーの一人が公式ツイッターに雪アヒルの写真を投稿したことで一躍話題になった。ネット通販のGマーケットではヌンオリの販売数が前年比1890%増に上っている。


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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

2021. 1.

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210202/se1/00m/020/065000c