創立50周年迎えたサムスン電子、「システム半導体世界一」実現に挙国体制へ

.

2019年11月1日、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は創立50周年を迎えた。そもそもは1969年に設立した「サムスン電子工業株式会社」がその始まりだが、1988年にサムスン半導体通信と合併した11月1日を記念日として毎年式典を行っている。韓国では、サムスン電子にとって半導体が非常に重要であることを示すために設立日を11月1日にした、とみられている。

 1983年にDRAM事業を開始、1992年から1位をキープし続けており、2019年7~9月期には世界市場シェアの47%を占めている。NAND型フラッシュメモリーでも2002年以降世界シェア1位を獲得しており、家電やスマートフォン(スマホ)でも世界市場ランキング上位の座を守ってきた。

 同社は「システム半導体世界1位」獲得に向け、2019年からより一層力を入れている。「半導体ビジョン2030」を発表し、2019年10月29日には“5G、AI、IoT、自動運転分野でも世界市場をリードする”として米カリフォルニア州サンノゼコンベンションセンターで「Samsung Developer Conference 2019」を開催した。この日に初公開したのが、縦型の谷折り式折り畳みスマホの映像とAIスピーカー「Galaxy Home Mini」の実物だった。

 また、IoTプラットフォーム「SmartThings」、AIアシスタント「Bixby」の開発者向け新規機能を公開した。同社はAI投資と世界中からの人材確保に乗り出していることをアピールするため、自社ホームページ内にグループ会社のAIニュースだけをまとめた特設ページも運営している。同社はスマホや家電などを年間5億台以上販売しているだけに、顧客の生活と密接なAIサービスを提供できると自負している。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
日経電子版セット今なら2カ月無料

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2019. 11.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00950/00011/

システム半導体世界一目指すサムスンが独自CPUコアを断念した理由

.

2019年11月5日、韓国メディアは一斉に韓国サムスン電子(Samsung Electronics)がシステム半導体事業の競争力強化のため、米国テキサス州オースティンにある「Samsung Austin R&D Center」で行っていたカスタムCPUコアのアーキテクチャー開発プロジェクト、コードネーム「Mongoose」を中止したと報道した。同社の独自CPUコア開発中止は2019年10月から噂されていたが、現実となった。

 韓国メディアの分析によれば、サムスン電子は2010年から170億米ドル(約1兆8500億円)を投資して進めてきた独自のCPUコア・アーキテクチャー開発の成果が期待を下回ったため、人工知能(AI)時代の核心技術といわれるGPU(Graphics Processing Unit)とNPU(Neural Processing Unit)に集中すべく、独自CPUコアを断念する“選択と集中”を行ったとみられる。同社はMongooseプロジェクトに向けて、2012年には米国の半導体メーカーAMDの元副社長やCPU設計者をスカウトしていたが、開発は思うようにいかなかったようだ。サムスン電子自身も「システム半導体の競争力強化のため、CPUコアの独自開発ではなくGPU、NPUに集中する」とコメントしている。同社では、NPUの研究人員を現在の200人規模から2030年までには2000人に増やすと、2019年6月に発表している。

 Samsung Austin R&D Centerの人員約290人は解雇または米国内にある他の研究所へ配置換えするが、携帯機器向けのシステム半導体を生産するオースティン半導体工場は何も変わらないようだ。同社は2018年末にオースティン半導体工場の生産能力を拡大するため、2億9100万米ドル(約318億円)の追加投資を行っている。

 独自CPUコア開発中止の報道を受けて、韓国内では「(同社の携帯機器向けシステム半導体である)Exynosはどうなるのか」と話題になった。結論から言うとExynosは続く。これまで、ExynosのCPUにはイギリスの半導体設計専門会社であるアーム(Arm)のアーキテクチャーをベースにカスタムした独自コアを搭載していたが、それをやめるということだ。

 Samsung Austin R&D CenterのCPUプロジェクトの成果は、同社が2015年11月に公開した「Exynos 8 Octa 8890」に初めて搭載された。当時のサムスン電子の説明によると、同製品はアームの64ビットコア「ARM v8」アーキテクチャーをベースにカスタムしたコアを搭載したLTEモデム内蔵の統合チップで、従来品に比べ30%の性能アップと、10%の消費電力削減に成功したとしていた。同社は、Exynosの性能は米クアルコム(Qualcomm)の携帯機器向けシステム半導体「Snapdragon」に負けないとアピールし、自社スマホ「Galaxy」シリーズの韓国向け端末にはExynosを搭載してきたものの、不穏な空気は既に漂っていた。

 2019年8月に発売された「Galaxy Note10」の場合、韓国向けは「Exynos 9825」、その他の国向けには「Snapdragon 855」が搭載されている。米国の複数のスマホ性能比較サイトが「同じGalaxy Note10でもSnapdragon 855を搭載した端末の方がアプリの駆動速度もグラフィック性能も優れている」という結果を発表したのだ。一般ユーザーが使って気が付くレベルの差ではないと考えられるが、専門家などによる比較では違いが明らかになった。2つのCPUはいずれもArm Cortexプロセッサーをベースにしているが、Snapdragon 855は「Cortex-A76」4つと「Cortex-A55」4つを組み合わせており、Exynos 9825はサムスン電子のカスタムコアである「M4(Mongoose 4)」コア2つに「Cortex-A75」2つ、「Cortex-A55」4つを組み合わせている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
日経電子版セット今なら2カ月無料


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2019. 11.

-Original column

対韓輸出管理発動後3カ月、自動車部品や電池はどうなるのか?

.

日本政府が対韓輸出管理強化を始めてから3カ月が経過した。日本政府は2019年7月から半導体・ディスプレー材料3品目の対韓輸出管理を厳格化し、2019年8月からは韓国を輸出管理上の優遇対象国から除外する処置をとっている。これに対し韓国は2019年9月18日に戦略物資輸出入告示を改訂し、日本を戦略物資輸出の優遇対象国から除外した。

 2019年10月1日、韓国産業通商資源部(部は省)貿易投資室長のパク・テソン氏は「日本の対韓輸出規制発表3カ月経過に関する立場」を発表した。日本は政治的目的で韓国のみを差別する輸出制度を運営しており、WTO二国間協議で解決したい、というのが主な内容だった。「日本政府は韓国には個別輸出許可しか認めておらず、世界4大輸出統制体制に加入していない国より韓国を差別する制度を運営しています」、「これは善良な意図の民間取引を阻害してはならないという国際輸出統制体制の基本精神と原則に逆らうものです。このような処置は輸出制限のようなもので、我が国だけを特定した一方的で不当な差別処置です。そのためWTO規範に完全に合致するという日本政府の立場に韓国政府は全く同意できません」、「(韓国政府は)政治的目的で輸出統制制度を悪用する事例が再発しないよう、9月11日にWTOへの提訴の手続きを開始しました。今後行われるWTO二国間協議を通じて問題が解決するよう、日本政府の転向的な立場の変化をもう一度促求(「促す」の意味)します」。

 日本の対韓輸出管理強化以降、韓国の半導体とディスプレー業界は不確実性を避けるため材料や生産設備の国産化や輸入先の多様化を急ぎ、予想より早く国産化が進んでいる。韓国サムスン電子(Samsung Electronics)に続いて韓国SKハイニックス(SK hynix)も、2019年10月1日から日本産の代わりに韓国ラムテクノロジー(RAM TECHNOLOGY)の液体フッ化水素(エッチング液)を生産ラインで使い始めたと発表した。

 韓国産業通商資源部によると、フッ化水素、フッ化ポリイミド、フォトレジストの3品目の対韓輸出管理強化が始まってから2019年10月2日までに、7件の許可が出たという。財務省の2019年8月の貿易統計によると、半導体製造に使うフッ化水素の韓国向け輸出は数量も金額もゼロだった。前年同月は3378トンだった(日本経済新聞 電子版の関連記事)。なお、フッ化ポリイミドとレジストの輸出量については、統計上の分類方法により正確には把握できないため不明である。韓国企業からすると、日本から材料を輸入したくてもいつ許可が出るかわからない状況が続いており、国産化に注力せざるを得ないというわけだ。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.10 .

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00009/

日本を「ホワイト国」から除外した韓国、焦る企業が少ない理由

.

 韓国の産業通商資源部(部は省に当たる)は、2019年9月18日0時より改訂した戦略物資輸出入告示を施行したと発表した。同部は、「戦略物資輸出統制制度は国際輸出統制体制の基本原則に沿って運営されるべきであるため、基本原則に沿わない制度を運営するなど国際共助(国際協力)が難しい国に対する輸出管理を強化するため、戦略物資輸出地域区分を変更する改訂を行った」とした。

 主な改定は、告示第10条にある戦略物資輸出地域分類の新設である。改訂前は4大国際統制体制―ワッセナー・アレンジメント、原子力供給国グループ(NSG)、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)―に全て加入している29カ国を「カ」地域とし、そうでない国を「ナ」地域に分類、「カ」地域は戦略物資輸出入優遇国として扱っていた(「カ」「ナ」は日本語の50音順のようなもの)。改訂後は、4大国際統制体制に全て加入した国であっても国際統制体制の原則に違背して制度を運営する国を「カの2」に分類し、「カの1(既存のカ地域)」よりは厳しく、「ナ」地域よりは優遇するという。「カの2」に分類されたのは日本のみ。これで「カの1」地域に分類されたのは米国、英国、ドイツ、フランス、オーストラリアなど28カ国になった。

 いわば「韓国による日本のホワイト国除外」である。ただし、韓国内では、産業通商資源部の告示改訂は日本企業にも韓国企業にもそれほど影響がないと見られている。既に損得は計算済みで、日本の経済に影響を与えたいというより、日本が韓国を信頼できないとしてホワイト国から除外するのであれば韓国も日本を信頼できないとそっくり同じ言葉を返し、「今までとは違う」「日本に引きずられない」「韓国は変わった」ということを日本に示すための「象徴的」意味を持つとみられているのだ。

 その根拠として、改定の内容を詳しく見ていこう。改訂により、韓国政府が指定した戦略物資1735品目のうち、武器転用などの恐れが比較的弱い「非敏感戦略物資」1138品目を日本に輸出する企業は、原則として包括許可を受けられなくなった。以前は輸出申請書の提出のみで3年間有効な輸出許可を得られたが、2019年9月18日からは輸出する度に申請書、戦略物資判定書、営業証明書、最終荷受人陳述書、最終使用者誓約書(最終荷受人と最終使用者が同じ場合は誓約書のみ)を提出し、許可をもらう必要が生じる。許可手続きにかかる期間も5日間から15日間になった。「敏感戦略物資」597品目はもともと「カ」地域の優遇国に輸出する場合でも個別に許可が必要だったので、改訂による変更はない。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019. 10.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00008/

サムスン・ハイニックス・LGが進める国産フッ化水素採用、ホワイト国除外で意外な企業の株価急騰

.

韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は2019年9月4日、東京都品川で予定通り「Samsung Foundry Forum 2019 Japan」を開催した。同フォーラムは「世界でもっとも信頼されるファウンドリーになる」というキャッチフレーズで、同社が取引先企業に向けて半導体受託生産事業の新技術を紹介するイベントだ。2016年に始まり、2019年は5月に米国、6月に中国、7月に韓国、9月には日本で開催されており、10月はドイツでの開催が予定されている。日韓関係の悪化により参加者が減少するのではないかとみられたが、むしろ例年より増えたという。同社は7月に開催された韓国でのフォーラムで、どのようなリスクがあっても2030年にシステム半導体1位を達成するという意志を見せたが、東京でも同じだった。

 基調講演を行ったファウンドリー事業部 社長のチョン・ウンスン氏は、「サムスン電子は全世界でファウンドリーフォーラムを開催し、顧客パートナー社と透明で信頼できる協力関係を構築している。日本での活動も変わらない」とし、EUV(極端紫外線)7nmプロセスで製造したモバイル機器向けのアプリケーションプロセッサー「Exynos 9825」(「Galaxy Note10」搭載)、MRAMブロックを埋め込んだ「eMRAM」(embedded MRAM)、業界初となるEUV5nmプロセス、2020年に本格的稼働する予定の華城工場のEUV専用ライン、次世代技術とするGate-All-Around採用の3nm世代プロセスを主に紹介した(関連記事)。フォーラムでは8インチウエハー受託生産とパッケージングの新技術、自動車電装機器に関するEUVソリューションも紹介した。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019. 9.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00002/

Galaxy Fold発売に沸く韓国、影で日本材料メーカー脱落か

.

韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は2019年9月6日に韓国で折り畳みスマートフォン「Galaxy Fold」を発売した。開くとスマートフォンとしては最も大きい7.3インチのディスプレー(QXGAに相当するHDR10+表示対応の「Dynamic AMOLED」)となり、畳んだ状態では前面の4.6インチのディスプレー(HDに相当する「Super AMOLED」)を利用する。ディスプレーの開閉を繰り返しても、使用中のアプリがそのまま表示され途切れることはない。韓国では「5G時代の新しい経験を提供する」と大々的に宣伝している。韓国では5G対応モデルのみを販売し、英国、フランス、ドイツ、シンガポール、米国などでは順次LTEまたは5G対応モデルを販売するという。

 Galaxy Fold は2019年2月初めに公開し、本来は同年4月に発売する予定だった。ところが、先行レビューアーらがディスプレーの表面に貼られた透明ポリイミドフィルムを、出荷時に貼られた傷防止用の一時的な保護フィルムと間違えて剥がしてしまうというトラブルが発生した。さらに「ディスプレーの曲げ伸ばしによるシワが気になる」「ヒンジ部分からホコリが入ってディスプレーが故障しやすそう」といった指摘も加わり、急きょ発売を取りやめ改良した。2019年9月中旬発売の予定だったが、前日の9月5日に端末を公開して予約を開始、6日から販売を開始した。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.9 .

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00001/


米中貿易摩擦で漁夫の利得たサムスン、EUV7nm品採用のGalaxy Note10発売で攻勢

.

半導体材料3品目、「フッ化ポリイミド」「レジスト」「エッチングガス(高純度フッ化水素)」の対韓国輸出管理の厳格化が始まって約1カ月半がたった。2019年8月8日に厳格化以降初めて、サムスン電子向けのEUVレジストについて輸出許可が出たのに続き、同月19日にもサムスン電子向けにEUVレジスト6カ月分の輸出許可が出たと、韓国の複数メディアが報じている。また、日本の材料メーカー各社が海外拠点を利用するなどして供給を続けようとしているとみられる(関連記事「対韓輸出管理で大きく動く韓国、大手企業に歩み寄る政府、規制も緩和、働き方改革にも特例」)。

 こうした流れの中、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は、「Galaxy史上もっとも偉大なパワー」をキャッチフレーズにしたスマートフォン(スマホ)、6.3インチの「Galaxy Note10」(以下、Note10)と6.8インチの「Galaxy Note10+」(以下、Note10+)の予約販売を2019年8月に韓国で始めた。グローバル市場ではLTEか5Gかを選択できるが、韓国市場では5Gモデルのみ販売する。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.8 .

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00004/

対韓輸出管理で大きく動く韓国、大手企業に歩み寄る政府、規制も緩和、働き方改革にも特例

.

日本の経済産業省は、2019年7月4日に半導体材料3品目、「フッ化ポリイミド」「レジスト」「エッチングガス(高純度フッ化水素)」の対韓国輸出管理の厳格化を始めて以来、初めてとなる輸出許可を2019年8月8日に出した。これは韓国サムスン電子(Samsung Electronics)に輸出するEUVレジストで、韓国にはまだ輸送されていないという(2019年8月16日時点)。

制限を潜り抜けて取り引き続ける日本企業

 2019年8月8日付の日本経済新聞電子版での報道(「対韓輸出、一部許可も安定輸出は見通せず」)のように、対韓輸出管理の強化が始まってから、日本の半導体材料企業も市場シェアを落とさないため、中国やベルギー、韓国にある生産拠点を利用して韓国企業へ納品を続ける計画を立てている。

 韓国の新聞「マネートゥデイ」は2019年8月12日、日本の半導体材料企業がサムスン電子の役員らに「我々が(日本)政府を説得するので取引を続けてほしい」と依頼したと報道した1)。同紙は業界関係者の声として、「(日本の半導体材料企業が)世界最高レベルの技術力を持っているとしても、サムスン電子のような大口取引先がない限り世界市場で淘汰される懸念がある」、「サムスン電子が材料の輸入先を多角化し始めたのを見て、最大の顧客をなくすわけにはいかないと動き始めたようだと」と解説した。

1)https://news.mt.co.kr/mtview.php?no=2019081213322811350&type=1

 韓国では、サムスン電子が不確実性を減らすため、日本からは一切半導体材料を輸入しない方針で動いているという報道が相次いでいた。現実には、サムスン電子も選択の幅は広い方が有利であり、日本企業を排除するということはあり得ないだろう。実際、サムスン電子と韓国SKハイニックス(SK hynix)は韓国メディアの「脱日本」報道を否定している。

 証券業界では、日本の対韓輸出管理が始まって1カ月が過ぎ、韓国半導体業界は落ち着きを取り戻しており、着々と日本に代わる輸入先を見つけ、国産化の準備をしながら日本依存度を減らし続けていると評価した。半導体供給過剰によって2019年5~6月に下落していたサムスン電子とSKハイニックスの株価は上がり続けており、「半導体株を買うなら今」という説も聞こえる。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019. 8.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02749/

5Gで盛り上がる韓国のIoT・ロボット展示会、日本の輸出管理強化が製造設備の国産化を後押し

.

.


本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

2019年10月23~25日に、韓国産業通商資源部(部は省にあたる)が主催する「第22回韓国産業大展(Korea Machinery Fair)」と、韓国科学技術情報通信部が主催する「第6回IoT振興週間(IoT Week Korea)」に関連するイベントなどが開催された。

 日本でいえば、経済産業省と総務省が似たような展示会を同日程で開催したようなものだ。

 今年は5G商用サービス開始以降初とあって、いずれも5Gで既存のサービスがどう変わったのかをアピールする内容が多かった。韓国では2019年4月3日に世界初のスマートフォン向け5Gサービスが始まり、加入者は2019年9月末に300万人を突破、年内には500万人を超える見込みである。

 韓国産業大展は27カ国725社が展示に参加し、約6万人が来場した。韓国Doosan Robotics社、韓国Hyundai Robotics社などの協働ロボット、韓国Kia Motors社の自動運転車、韓国通信キャリアであるKT社の5Gスマートファクトリーが目玉だった



この記事は日経Robotics購読者限定です

韓国大手が日本離れ、サムスンは新半導体の量産計画変更なし、LGは韓国産材料を試験し「問題ない」

.

日本政府が2019年7月4日0時に半導体やディスプレー製造に欠かせない3品目、「フッ化ポリイミド(透明ポリイミド)」、「レジスト」、「フッ化水素」の韓国輸出管理を発動してから、韓国でも半導体、ディスプレー、その他産業に与える影響を分析するニュースや韓国政府関係者の発言一言一言が毎日速報で報じられている。

 7月4日以降、上記3品目の対韓国輸出の手続きに時間がかかると見られたが、韓国産業通商資源部(省)の発表によると7月19日時点で「輸出許可が出たという話はまだ聞いていない」という。これを受け韓国メディアは「事実上輸出禁止」と報道している。

 上記3品目は日本への依存度が非常に高い部品で、半導体やディスプレーの製造に欠かせない。しかし日本経済新聞に報道されたように(日経新聞電子版の該当記事1記事2)、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)は中国からフッ化水素を輸入する方向でテストを開始、韓国の部品会社の間でも“思ってもいなかったチャンス到来”という声が上がっている。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.7 .

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00950/00006/