韓国 50年ぶりに酒税見直し

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国内には2018年11月現在、4万店近いコンビニがある。人口対比店舗数は日本の1・5倍で、産業通商資源部によると売り上げは好調だ。商品を「1+1(1個買うと1個無料)」で販売したり、アプリの注文1時間以内に食料品を配達するなどサービスが充実しているためだ。

 輸入ビールの影響も大きい。数年前から、酒税の適用ルールの違いで国産より安く販売できる輸入ビールが、好みの組み合わせで500ミリリットル缶4~5本で1万ウォン(約…

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

2019. 7.

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190716/se1/00m/020/066000c

週刊エコノミスト ワールドウオッチ韓国  若者にブーム プチぜいたく品販売増

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週刊エコノミスト Onlineワールドウオッチ

韓国 若者にブーム プチぜいたく品販売増=趙章恩



 韓国の最近のトレンドは「小確幸(ソファクヘン)」である。小さいが確実な幸せの略語だ。 村上春樹著『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』に出てくる造語だ。

 韓国は20年以上就職難が続き、物価は高騰、経済格差も広がるばかり。激しい競争社会の反動か、流れを逆行する20~30代の小確幸の若者が増えている。

 成功を目指して苦しむより、自分が好きなことをする。コンビニでちょっと高級なお弁当を買うとかペットと…

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週刊エコノミスト Onlineルドウオッチ韓 

若者にブム プチぜいたく品販売増=趙章恩20181015

 https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20181023/se1/00m/020/022000c

【AI時代に立ち向かう韓国】超スマート社会の一歩は教育革命から #4 子どもたちの日常の中にあるAI

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いよいよ始まった5G

IT強国を自負する韓国では毎月のように全国各地でIT展示会が開催されている。4月末にはソウル市内にある展示場COEXで、主に韓国の通信事業者とスタートアップのITサービスとデバイスを展示する「World IT Show」が開催された。会場は韓国が世界初スマートフォン向けサービスを始めた新しい超高速モバイルネットワーク「5G」と「AI」に染まっていた。

韓国では2018年12月1日に企業向け、2019年4月3日にスマートフォン向け5Gサービスが始まった。5G加入件数は、サービス開始から5日過ぎた4月8日時点で10万件、5月26日には60万件を突破した。6月末には100万件を突破する見込みで、予想より速いスピードで5G加入者が増えている。

韓国の5G料金プランは通信事業者ごとに若干違いはあるものの、平均的に月約8,000円で150GB分が使え、月約1万3,000円でデータ使い放題である。料金プランにはデータ+音声通話・SMS使い放題、OTTサービス、メンバーシップ(コンビニやレストランなどでの割引特典)も含まれている。5G対応スマートフォンもサムスン電子の「Galaxy S10 5G」とLG電子の「LG V50 ThinQ」2種類があり、高画質の大画面で超高速、超低遅延が特徴の5Gを経由してOTTやオンラインゲームを楽しめる。韓国の通信事業者LGユープラスは5G基地局にファーウェイの技術を選択した。5Gサービスはまだ首都圏と大都市が中心で、2022年までに全国カバレッジを目指している。

エンターテイメントから工場まで
5Gだからできること

World IT Showでは視聴者が好きなアングルを選択できる野球やゴルフなどのスポーツ中継、eスポーツ中継、自動運転シャトルバス、VR、ホログラム、ドローンを使った防災・セキュリティ、遠隔診療、ヘルスケアなど幅広いジャンルのサービスを体験できた。5Gは現在のLTEより伝送速度が最高で100倍(10Gbps)の超高速、LTEの1/10に過ぎない1ミリ秒程度の超低遅延、1km²当たりの接続機器数もLTEより最高100倍(100万台)で同時多重接続可能なのが特徴であり、どの展示コーナーでも5Gだからこそ実現できるという点を強調していた。

スポーツ中継やOTT動画サービスにしても、LTEでは安定した4K高画質のストリーミングは難しかったが、5Gだと再生をクリックすると同時にローディングもなく動画が始まり、途中で低画質に切り替わることなく安定的に4K動画を視聴できた。造船所や中小企業のスマートファクトリーなどLTEから5Gに切り替えるところも増えているそうで、企業ではどのように5Gを利用しているのかも紹介していた。作業員がカメラの前を通る1秒以内に安全道具をちゃんと身に着けているか把握してアラートを鳴らす、360度高画質カメラで転倒や煙発生などを感知して通報する、AIによる外観検査もLTEから5Gに切り替えるとサーバーとの通信速度が上がってよりスピーディーかつ正確になったなど、すでに5Gによっていろいろな変化が起きているのがわかった。

学生たちがアイデアを披露する
「ICT未来人材フォーラム」

展示場の別フロアでは「ICT未来人材フォーラム2019」が同時開催されていた。韓国政府と複数の大学が共催したイベントである。全国30以上の大学にある「ICT研究センター」で大学生らが研究開発したホログラムコンテンツ、頭にヘッドフォンのようなものを付けてモニターを見ながら脳波を使って遊ぶ空を飛ぶゲーム、より軽くて長く飛べるドローン、建物の入り口に設置し出入りする人から花粉や埃を払うIoTエアーシャワー(空気洗浄機)、自動運転シミュレーションなどが展示してあった。会場内には学部生から博士課程まで学生らが自分の研究を紹介、学生が立ち上げたスタートアップを紹介するプレゼンテーションコーナーもあった。二十歳前後の若い大学生が、積極的に自分がしていること、したいことをアピールする姿に感動してしまった。

学生らの資料は韓国語と英語で用意してあって、英語も堪能だった。World IT Showは外国人も来場する有名な展示会だからかもしれない。学生のスタートアップは政府も支援しており、随時優秀なアイデアを募集していて、企画書が通れば政府のインキュベーションセンターに入居できるほか、アイデアをビジネス化できるよう専門家のアドバイスも受けられ、国内外の投資家の前でピッチできるチャンスももらえるのだとか。

また展示と研究発表を熱心に聞いている見学者の中には制服を着た高校生も多かった。韓国政府が力を入れている特性化高校(科学高校、情報通信高校など、特定分野の科目を重点的に教える高校)の学生たちで、先生と一緒に見学に来たそうだ。年齢の近い先輩が活躍する姿を見られる展示会はモチベーションアップにつながるだろう。

遊びも勉強も
子どもの日常に浸透するAIスピーカー

教育に関する展示で面白かったのは、通信事業者が提供するディスプレイ付きAIスピーカーである。韓国では子育て中の家庭の多くがAIスピーカーを使っている。子どもの学習サポートのためである。歌を歌ってくれる、絵本を読んでくれるといった機能よりもよく使われているのが、会話機能。AIスピーカーは子どもの「○○って何?」「何で?」「どうして?」と果てしなく続く質問攻撃に忍耐強く付き合ってくれるので、保護者にとっては大助かりである。

韓国のAIスピーカーは韓国の企業が開発したAIを搭載し、韓国語の自然語認識率が高いことを売りにしている。質問の意図を把握して答えてくれるので、とんちんかんな答えをすることもなかった。質問ではなく「今日は友達とたくさん遊んで楽しかった」と話しかけると「よかったね、君が楽しいと私もうれしい」と答えてくれたり、子どもの話し相手にもなってくれる。外国語も話せるので、英語や日本語、中国語の会話練習の相手もしてくれる。クイズ大会やしりとりゲームもできる。IBMが開発したAI「Watson」に韓国の学習塾が保有しているデータを学習させ、子ども一人ひとりに科目ごとにぴったりの学習サポートを行い、データ分析を繰り返して弱点を補い成績を上げる、というサービスも登場した。

展示場にあったSKテレコムの7インチディスプレイ付きAIスピーカー「NUGU nemo」は、AIスピーカーの機能に加え、今や韓国だけでなく米国の子どもたちにも大人気の歌「サメのかぞく」をヒットさせたPINKFONG社のアニメや学習コンテンツを搭載している。動作認識機能で子どもとじゃんけん遊びもできる。面白いのは、子どもの顔がディスプレイから15cm以内にあると、絵本や動画の表示をストップして「もっと離れて」と表示することだ。子どもの視力保護のため、5分おきに距離を確認し近づきすぎないようにする。またディスプレイをスタンド照明として使うこともでき、ナイトモードにすると灯りがだんだん消えて睡眠を誘導する機能もある。さらに、家族の写真を飾るデジタル額縁にもなる。


展示場にはなかったが、LG電子もAI搭載ホームロボット「CLOi」を子ども用学習サポートロボットに改良して3月からテレフォンショッピング経由で販売を開始した。大手学習塾もAIで学習をサポートする機能を搭載しただけでなく、子どもを褒めて学習意欲を高める会話機能まで付いたディスプレイ付きAIスピーカーの販売を始めた。韓国の親たちは子どもの教育のためにはお金を惜しまないだけに、AIスピーカーやロボットも大人向けよりは子供向け+大人も使える機能を搭載した方が売れるのかもしれない。通信事業者3社によると、2019年末には全世帯の4割がAIスピーカーを保有する見込みである。このように、子どもの日常の中にもしっかりAIが入ってきている。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

HUAWAVE

2019.6.

 

-Original column

【AI時代に立ち向かう韓国】 超スマート社会の一歩は教育革命から #3 子どもの未来のために学校で「しなくなった」こと

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小学校ではVRを使った授業も行われている。安全教育の一環でVRを使用している様子

韓国の教育現場はAI導入、AI時代に向けたクリエイティブな人材育成を目指し変わり続けている。最も大きな変化を迎えたのは小中高校である。AI時代を生きることになる今の子どもたちに何を教えたらいいのだろうか。その悩みから、学校では新たにするようになったことと、しなくなったことがある。

教科書だけでなくすべてをデジタル化
学級SNSで遠隔授業参観も

まずするようになったのは、教室のデジタル化とスマートラーニング導入、ソフトウェア教育である。

韓国は1990年代からデジタル教科書研究が始まり、デジタル教科書を使ってみたいと申請した一部の学校を研究学校に指定して、10年以上かけてデジタル教科書の導入と、デジタル教科書を使って授業をするための校務情報化、学校情報化、教育向け電子資料開発、デジタル教室、Eラーニングといった環境作りに励んできた。デジタル教科書で授業をして紙でテストをするのではなく、授業も評価もオンライン上で実施し、学校で生徒と先生が行うことすべてを情報化するための変化である。

韓国では1998年に一般家庭でもブロードバンドを使えるようになると、政府が全国の学校のホームページを開設、「家庭通信文」と呼ばれる保護者向けの案内事項を書いた配布物をホームページに掲載することでペーパーレスにした。先生全員の名前と写真、学校の年間スケジュール、給食の献立、学校で行ったイベントの写真など、学校で何をしているのかが保護者たちに見えるようホームページに公開するようになった。


1998年頃から全国の学校がホームページを開設し、学校の情報を公開するようになった。家庭通信文もホームページに掲載し、ペーパーレスに。どの学校のホームページも構成は同じで、生徒数や先生の紹介など全般的な情報、年間スケジュール、学習計画、給食メニュー、学校イベントの写真、電子図書館、教育関連情報サイトリンク、政府サイトリンクなどがある

現在は学校ホームページに加えてクラス別に学級SNSがあり、担任の先生が認証した学生と保護者だけが会員登録できるようになっている。予習しておくべき資料の案内、その日の授業内容や宿題の告知、子どもたちが自宅でやった宿題の登録、授業中発表した内容などを掲載し、子供の成長記録にもなっている。

小中高校ではデジタル教室が普及したこともあり、今は子どもたちが授業中討論した結果をその場でパワーポイントにまとめて発表する授業が頻繁にあるため、授業で子どもたちが作成したパワーポイントの資料もすべて学級SNSに掲載し、学級SNSを電子黒板とつないで資料を開いて発表するようになっている。先生によっては子どもたちが発表する様子を動画で撮影して学級SNSに載せてくれることもあるので、保護者にとっては会社や自宅にいながら授業参観ができてしまう。

学級SNSには保護者から先生へコメントを書き込めるようになっている。取材した仁川市の小学校によると、先生への頼みごとやクレームの書き込みはほとんどなく、「今日もお疲れさまでした」「いつも楽しい授業をありがとうございます」といった感謝のコメントが多く寄せられるという。確かに今までは先生に感謝の気持ちを伝える場もなかった。最初は学級SNSなんて余計な仕事が増えただけだと嫌がる先生もいたが、今は保護者との距離も縮まり、子どもたちも学級SNSにどんな写真や動画が載るか楽しみにしているので負担にならないそうだ。

2011年には政府が「スマート教育推進戦略」を発表し、モバイルラーニング環境を前提にしたスマート教育活性化のための著作権法整備、教育関連法整備、教授学習法先進化などを本格的に進めた。デジタル教室もノートパソコンからタブレットPCへ、デジタル教科書は2Dから3DやVR、ARまで使うようになった。学級SNSもパソコン向けからスマートフォン向けに切り替わった。

子どもの教育のためならICT導入もいとわない
教育格差もデジタルデバイドも解消

韓国が目指すスマート教育は、1990年代にデジタル教科書の研究を始めた時と同じく、「希望のはしご」を作ることである。過疎地域に住んでいても、障害があっても、塾に通えなくても、本を買うお金がなくても、みんなに均等な教育のチャンスを与えるため、いつでもどこでも好きなだけ学びたいことを学べる環境をつくることが政府の役割であり、それをうまく活かして子どもたちを導くのが学校や先生、保護者の役割という考え方である。

学校で情報化の推進に力を入れた影響からか、韓国ではデジタルデバイドが大きな問題になることはなかった。子どものためなら何でもする親心から、保護者たちは子どもの学校のホームページにアクセスするためブロードバンドに加入したり、スマートフォンを買ったりと、積極的だった。

取材先の小学校で、「家でインターネットを使えないからプリントのままでいい」という保護者はいなかったか聞いたところ、「いない。ホームページから見られる方がプリントをなくす心配もなくていいから」ときっぱり。韓国では自宅でブロードバンドを使うとしても、工事費やルーターのレンタル費込みで月2,000円以下、低速のインターネットは月1,000円以下で、家計の負担が大きくなく、低所得層の場合は無料でインターネットが利用できることも影響しているだろう。

デジタル化で社会性や幸福感が向上
人文と科学の両輪で育てる融合型人材

韓国政府傘下のデジタル教科書研究機関が2013年、1年間デジタル教科書を使った学生20人と紙の教科書を使った学生20人の脳機能の活用状態を比較したところ、デジタル教科書を使った学生の方がより広範囲に多様な情報処理を行う脳の領域が相互作用を起こす傾向があり、宿題をする時のストレスが低いという特徴があった。デジタル教科書を使った学生の方が社会性が高く、先生との関係満足度、学校にいる時の幸福感が若干高いという実験結果もあった。デジタル教科書は多様な資料を使える分、先生や学生同士のコミュニケーションも活発になるからかもしれない。

デジタル教科書からステップアップし、韓国政府は2015年、「クリエイティブで融合型人材」を養成することを目標に教育課程を全面改訂した。韓国政府が求める融合型人材とは、「人文学で想像力を育て科学技術で創造力を供えた人材」を意味する。この改定により、2018年から中学校で、2019年から小学校で、正規科目としてソフトウェア教育が始まった。高校では2018年から選択科目になった。もちろん、現職の教師と教育大学に在籍している未来の先生を対象にソフトウェア教育を行い、教える先生がいないという問題も解消した。

前回紹介したように、ソフトウェア教育はプログラミングができる人を育てたいというよりは、論理的に問題を解決していく考え方を身につける、コンピュテーショナルシンキング(computational thinking)を教えるのが狙いである。同時に小学校では教室の外で行う体験授業を拡大し、新たに芸術性を高めるため地域の芸術団体と連携して演劇教育の時間を増やすようになった。

中1の1学期はテストなし!
自分と向き合うための「自由学期制度」

一方で、AI時代に備え、学校でしなくなったこともある。

中学校1年の1学期は中間テストも期末テストをしなくなった。自由学期制度といって、自分は将来どんな人になりたいか、自分にとって楽しいことは何か、どんなことなら楽しく続けられそうか、学校の授業から離れて自分のことだけをじっくり考える時間を中学入学と同時に与えている。学校には行くが、スポーツをしたり、外部の講師を行う講演を聞いたり、体験学習に行ったり、自分と向き合う時間を重視する。

自由学期制度は2014年3月に全国42の中学校が導入し、その効果が認められ2016年から全国の中学校で行われている。2018年からは校長先生の裁量で、約半数の中学校が1年の1学期だけでなく年間まるごと自由学期にしている。

今の韓国は就職が大変厳しく、名門大学に入学しないと就職ができず所得も思うように得られない。大学入試に向けた受験レースはどんどん年齢が低くなり、幼稚園児から大学受験に備えた英才教育をするほど過熱するばかりだ。少子化といっても、その分AIに仕事を取られますます就職の競争率が上がるのではないか、どんな仕事なら人間を必要とするのか、という悩みもある。誰も予測できないのが未来だが、自分がしたいことは何かのヒントが見つかれば、時代がどう変わろうと希望を持てるだろう。

高校では、学校側が時間割を決めて授業を行うのをやめようとしている。大学と同じように好きな科目を選んで一定の単位を取ったら卒業できる「高校学点制度」に変える方針で検討が行われている。目標としては2025年から全面的に導入する計画で、現在は一部の高校を先導学校に指定し、実証実験をしている。この制度も同じく、大学入試がすべてだった高校生活を変えようという動きである。

次回も韓国が目指すAI時代の人材、学校の変化について続けて紹介する。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

HUAWAVE

2019.4.

 

-Original column

https://huawave.huawei.com/articles/detail/139

【AI時代に立ち向かう韓国】 超スマート社会の一歩は教育革命から #2 教育を変えたい教師たちの情熱から生まれたデジタル教科書

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幼稚園でのコーディング教育。2016年から通信事業者SKテレコムは幼児向けにロボット「アルバート」とスマートフォンを使ったコーディング教育を実施している。論理的思考を身につけるのが狙いだ

教育とAIの出会い

ここ数年日本では、ソサエティ5.0、AI-Readyな社会、人間中心のAI社会原則など、AIが社会に浸透することを前提にした政策や制度の変化について有職者が集まり議論する場が増えている。教育の現場でもAI時代の子育て、AIに置き換えられない人の育て方、AIを使いこなせる人材に育てるなど、AI時代の人材をテーマにしたイベントが数多く行われている。

世界の流れを見ると、パリにあるユネスコ本部では2019年3月、日本政府の支援により「持続可能な開発のためのAIの役割」をテーマに世界中から教育と技術の専門家と各国の政府関係者を集めて議論するイベントが行われた。毎年ユネスコが開催するモバイルラーニングウィーク期間中の目玉イベントとして、AIの開発・発展に伴う倫理的・社会的・法的課題について議論された。「教育におけるAI使用に関する機会と脅威は何か」に焦点を当てた複数のイベントが開催され、特にAIに仕事を奪われると不安が広がる中、教育現場でのAI利活用と学習強化、教育における公平なAIの使用、AI時代のスキル開発などがテーマとなっていた。

90年代後半、インターネットが一般家庭にも普及し、教育現場でもインターネットやパソコン、電子黒板、デジタル教材、VRコンテンツなどを使うICT利活用が進んだ。教育とICTの組み合わせは先進国の教育の質の向上に限らず、開発途上国の教育の機会と質を高める効果も大きかった。教育現場にICTが導入されたことで、学校のあり方、教室のあり方、教師の教授法なども大きく変わるしかなかった。では、今起きている教育とAIの出会いはどのような変化をもたらすだろうか。

すでに始まっているAI導入

韓国では教育現場のAI利活用がすでに始まっている。韓国政府は2019年下半期から小中高校でAIを使って学習アドバイスを行う「知能型学習分析プラットフォーム」と小学校低学年向けの「数学AI」を導入することにした。

これに先立ち2018年からは中学校で、2019年からは小学校で正規科目としてプログラミングを教えている。学校でプログラミングを教える目的はプログラミングができる人を育てたいというよりは、論理的に問題を解決していく考え方を身につける、コンピュテーショナルシンキング(computational thinking)ができる人を育てることである。これからはどんな場面でもAIの利活用が欠かせないと想定し、AIに問題を理解させ解決策を導く方法の基礎を学ぶのがプログラミングというわけだ。 2018年からは卒業後すぐ就職する学生が多い工業高校や商業高校でインダストリー4.0に関連する科目を新設、スマートヘルスケア、スマートファクトリー、自動運転などAIの登場によって起きている産業界の変化をある程度学べるようにした。

しかしある日突然学校にAIがやってきたわけではない。学校の情報化、教師の情報化、教育の情報化の地道な積み重ねでここまできたといえる。

社会全体に危機感をもたらしたAlphaGoショック

韓国では政府や有職者によるAI議論より前に、全国民が「AI時代到来!」と衝撃を受けた出来事があった。2016年3月の「AlphaGoショック」である。これをきっかけに、「AIの登場で韓国は今までとはまったく違う社会になる。しかも変化のスピードは予想以上に速い」「AI社会とは他人ごとではなく自分の身に起きていること」と全国民が身に染みて思い知らされた。

AlphaGoはGoogle DeepMindが開発したコンピュータ囲碁プログラムで、ハンディ―キャップなしで人間のプロ囲碁棋士に勝った最初のAIである。2016年3月、AlphaGoは世界トップレベルのプロ囲碁棋士である李世乭(イ・セドル)と対戦した。李世乭棋士はコンピューターには負けないと自信を見せたが、結果は4勝1敗でAlphaGoが勝利した。当時韓国ではAIが人間と囲碁対決をして勝つにはまだ時間がかかる、AIはまだそこまで優秀ではないと思われていたため、ショックが大きかった。

その後2017年に発表されたAlphaGoの新バージョンであるAlphaGo Zeroは、人間の対局データを学習するのではなく自分自身と対局して学習し、以前のAlphaGoよりさらに囲碁に強くなった。AlphaGo Zeroは人間から学習しないことで、逆に学ぶ知識を制約されなかったのが特徴といえる。人間がAIを学習させるのではなく、AIが自分で学習してどんどん進化していく様子を目の当たりにした韓国では、「このままではだめだ」という認識が子どもからお年寄りにまで広がった。

20年前にはデジタル教科書がスタート

AlphaGoショックの20年前にあたる1997年、韓国では「19世紀の教室で20世紀の教師が21世紀の子どもを教えている」という危機感から、情報化時代に合った教育の改革を求める声が大きくなった。そこで1997年から学校の情報化、教師の情報化、校務の情報化、教科書や学習資料の情報化などの取り組みが進んだ。当時は「サイバー学習教材」という名前でデジタル教科書の研究がスタート。2004年には小学校の社会と理科で初の「電子教科書」が完成、一部の学校で使用を開始した。デジタル教科書の目標はすべての子どもを包容する教育、地域や所得の格差などに関係なく、勉強したい意欲のある子どもに十分な学習機会を与えることだった。

韓国教育部(日本の文部科学省にあたる)によると、デジタル教科書とは「既存の紙の教科書の内容に用語辞典、マルチメディア資料、テスト、補習・深化学習資料など豊富な学習資料と学習サポートおよびマネージメント機能を追加し、EDUNET・T-CLEARなど外部資料とも連携できる教科書」である。

EDUNETは1996年に教育情報総合サイトとして教育部がオープンした総合学習情報サイトで、幼児・小学生・中学生・高校生・保護者・教師向けに入口を分けて情報を提供している。T-CLEARは2016年に教育部がオープンした教師に必要な教育課程、学習・評価・教育政策の資料をまとめて提供するサイトで、教師の間で学習資料を共有したり情報交換したりできるコミュニケーション機能もある。


EDUNETはデジタル教科書とデジタル教材を提供する政府のサイト

デジタル教科書はインターネットに接続していればどこからでもアクセスできるため、学校では備え付けのタブレットパソコンを使って学習し、自宅では家のパソコンから予習復習できる。デジタル教科書に自分が書き込んだ内容や先生のコメント、テスト結果、学習履歴なども読み込める。インターネットにつながってさえいればどこでも学習できることから、長期入院している子どもや、障害がある子どものためにも使われている。


総合教育行政情報システム(NEIS)のサイト。教育の情報化に先立ち韓国政府が真っ先に進めたのが教師の情報化と校務の情報化だ。NEISでは全国の学校と教育委員会、教育部(庁)の資料を連携、学生の成績や学校生活の記録を一括管理し、保護者と学生はいつでも自分の記録にアクセスできる。転校や進学の際に紙の資料を持ち運ぶ必要がなくなったうえ、校務の情報化で教師の書類作業が大幅に減り、授業準備に集中できるようになった

「教師は教える人ではなくコーチに」

2005年にはタブレット端末向けの小学校の算数の電子教科書が完成し、一部の学校で使用され始めた。だがこの時はまだ紙の教科書をPDFにして、ハイパーリンクをクリックすると写真やアニメが登場するといった程度のものだった。

2007年、教育部は教育環境の変化に伴う「デジタル教科書常用化推進方案」を発表。各自が自分の学習レベルにあった教科書を使い「自己主導学習」できるようにするためのデジタル教科書開発を後押しした。自己主導学習とは、日本でも2013年前後話題になった反転学習に近いものだ。

2007年に韓国のデジタル教科書見学で訪れたソウル市と仁川市の小学校では、小学校5年生が社会科のデジタル教科書を使って自宅で予習し、授業中は予習したことをグループで討論、討論の結果をその場でパワーポイントを使ってプレゼン資料にまとめ発表していた。先生は参考になる資料を紹介したり討論を導いたり、子どもたちの発表内容を聞いて質問する役になっていた。授業内容や子どもたちのプレゼン資料、学校で行われていることはすべて「学級SNS」という担任教師・学生・保護者だけが参加できるSNSに掲載、保護者もコメントを書き込むなどして積極的に子どもの教育に参加しているのも印象的だった。デジタル教科書で授業をしていた先生が「これから教師は教える人ではなくコーチのような存在にならないといけない」と言っていて、とても新鮮だった。

教師の情熱と使命感が学校教育を変える

さらに、全国の小学校教師らがデジタル教科書開発のためボランティアで研究グループに参加したり、どのように討論を導いたらいいのかアイデアや経験をSNSで共有したり、デジタル教科書と一緒に使うとよい著作権フリーのマルチメディア資料を教えあったりするのも驚きだった。

「学校教育も時代に合わせて変わらないといけない。今のままではだめ」という教師の情熱がなければ、韓国の学校情報化もデジタル教科書も、AI導入も実現できなかったのではないかと思わずにいられない。韓国で教師は最もなりたい職業の一つであり、採用試験の倍率は地域と科目によって差はあるが、2019年度新規教師採用試験では最高43倍を記録したほどである。定年まで安泰の職業なので保守的で変化を恐れると思われがちだが、実際は違った。ものすごい競争を経て教師になったからか、使命感に燃えていたのだ。

次回は教育現場でのAI導入、AI時代に向けたクリエイティブな人材育成を目指して学校では何をしたのか、何をしなくなったのか、について紹介する。


趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

HUAWAVE

2019.3.

 

-Original column

https://huawave.huawei.com/articles/detail/85

トップ若返りの韓国LGグループが投資加速、AIチップを開発、スマート製造でグーグルと協力

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 4代目となるク・グァンモ(具光謨)氏が持ち株会社LG社の会長に就任してからちょうど1年を迎えた韓国LGグループ。

 2019年5月15日に公正取引委員会が公開した韓国の公示対象企業集団(財閥)資産総額ランキングによると、2018年末時点でLGグループは財界4位、資産総額129.6兆ウォン(約11.91兆円)である。

 ちなみに1位はSamsungグループ(414.5兆ウォン、38.08兆円)、2位はHyundai Motorグループ(223.5兆ウォン、20.53兆円)、3位はSKグループ(218.0兆ウォン、20.03兆円)、5位はLotteグループ(115.3兆ウォン、10.59兆円)だった。ク氏は1978年生まれで、韓国の財界ではもっとも若い会長である。そのため韓国では若き会長がリードする「新しいLG」が注目されている。

 従来、LGグループは控えめで保守的とみられていた。控えめすぎる広報が逆に話題になるほどで、SNSでは見かねたユーザーが韓国LG Electronics社製品を宣伝する「#仕事せよLG広報チーム」が流行したこともある。

 ところが、ク氏が会長に就任してから雰囲気が変わり始めた。広報にも積極的で、国内外でのAI(人工知能)とロボット研究に集中投資しながらシリコンバレーにベンチャーキャピタル会社を設立し、さらに自動運転、モビリティーサービス、次世代Liイオン2次電池、VR(仮想現実)、車両用AIセンサ、マイクロLEDなどの先端技術を保有する海外スタートアップに投資した。韓国内ではク氏が大規模な吸収合併で同グループの競争力を高めようとしているという報道もある。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.6.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00031/

韓国で絶好調のGalaxy S10 5G、発火被害を訴えるユーザー登場

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 2019年4月3日、韓国で世界初のスマートフォン向け5G(第5世代移動通信システム)サービスが始まった。5月23日時点で通信キャリア3社の5G加入件数は60万件を突破した。6月末には100万件を突破する見込みである。韓国サムスン電子(Samsung Electronics)の発表によると、4月23日時点で、同社のスマートフォン「Galaxy S10」シリーズの販売台数は韓国だけで100万台を超え、そのうち5Gに向けた「Galaxy S10 5G」は23万台を占めた。


絶好調の「Galaxy S10 5G」
産業用途や自動運転などに注目が集まる5Gサービスだが、韓国では一般ユーザーを対象とするスマートフォン向けサービスが人気。対応端末であるサムスン電子のGalaxy S10 5Gも絶好調だ(写真:Samsung Electronics)

5Gの好調、その理由は?

 韓国内での5Gのサービス提供範囲は、現時点では首都圏と大都市中心である。そのため、5G加入件数は伸び悩むのではないかと思われていたが、予想を裏切った。要因はいくつか考えられる。通信キャリア間の競争により5Gの料金プランがLTEとそれほど変わらないことに加えて、野球中継やeスポーツ中継、アイドルの360度高画質VRストリーミング番組など、5G加入者だけが利用できる目玉コンテンツが話題になった。さらに、Galaxy S10 5Gに続いて韓国LG電子(LG Electronics)の5G向けスマートフォン「LG V50 ThinQ」が登場し、サムスン電子とLG電子の間で割引と特典の競争が始まったことなどが後押しし、加入件数が急増したものとみられる。

 メーカーと通信キャリアによる販促キャンペーンには、かなり力が入っている。例えば、サムスン電子は同社の対応スマートフォンをセットするタイプのヘッドマウントディスプレー(HMD)「Galaxy Gear VR」、ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds」などの周辺機器をプレゼントする。一方、LG電子はスマートフォンを2画面化できる補助ディスプレー付きカバーと、1年間1回までのディスプレー破損無償修理を提供する。

 通信キャリア3社は、2年以上の長期契約を結ぶユーザーに、端末購入補助金または約定割引(毎月料金25%割引)を提供する。通常の端末購入補助金は3~4万円程度だが、5Gではシェア獲得競争が勃発したおかげで、最も高い“使い放題プラン”(約1万3000円)を2年契約した場合、約7.8万円の端末購入補助金がもらえる。約14万円のGalaxy S10 5Gを半額以下で買えることになる。しかも、通信キャリアとは別に販売代理店が端末購入補助金の15%以内の金額を追加支援金として出すことができるので、交渉次第でさらに安くなる。

 こうした、LTEのままスマートフォンを買い替えるより5G新規加入の方が“断然お得になる”という事情もあり、5G加入件数は右肩上がりで増え、Galaxy S10 5Gの販売台数も伸び続けているというわけだ。

Galaxyからの発火報道

 ところが、2019年4月30日、韓国の公営放送KBSはGalaxy S10 5Gが自然発火したと主張するユーザーがいると放送した。

 済州島に住む20代の男性は、KBSの取材に対し「購入して6日目にGalaxy S10 5Gから火が出て爆発した」と答えた。午前11時ごろ、自宅の庭にあるテーブルに端末を置いて他の作業をしていたところ、端末の周辺から焦げる臭いがし始めた。端末を手に取ってみたもののあまりの熱さに地面に落とし、その後発火したという。

 同日午後4時ころ、近所のサービスセンターを訪問して発火した端末を預けた。サービスセンターではソウルで検査をすると言われたためだ。そして2週間後、2次電池周辺にユーザーの過失とみられる破損があったため、交換も返品もできないと言われたという。KBSの取材に対し、サムスン電子側は端末の内部的な原因で発火したのではなく、外部から強い衝撃を受けた痕跡があったと説明した。2次電池部分に強い衝撃が加わると、圧力によって発火することがあるとする。

 この男性は、ポータルサイトNAVERにあるサムスン電子スマートフォンコミュニティに激しく燃えた端末の写真を投稿し(現在は削除)、「サムスン電子のサービスセンターが回収して検査すると言ったが、2週間後、端末自体の欠陥はないとしてそのまま返された。交換も払い戻しもしてくれない」、「サムスン電子側は外部損傷による発火というが、スマートフォンから変な臭いがしたので手に取って調べようとしたところ、あまりにも熱くて驚いて落とした時にできた損傷だ。高価なスマートフォンなので、傷がつかないよう大事に使っていた」と不満を漏らした。この男性とサムスン電子との話し合いはまだ続いているようだ。この男性の他にGalaxy S10 5Gの発火を訴える人は現時点ではいない。

参考文献
KBS NEWS
http://news.kbs.co.kr/news/view.do?ncd=4191134

よみがえるNote7の悪夢

 発火といえば、サムスン電子では2016年8月に発売したスマートフォン「Galaxy Note7」が相次いで発火事故を起こし、生産を中断した前例がある。当時テレビのニュースでも報道されており、Galaxy S10 5Gを購入したユーザーが「もしかして…」と不安になるのは当然かもしれない。


「悲運の名機」とも呼ばれる「Galaxy Note7」
特に期待を集めた機種だったため、発火事故のインパクトは大きかった(写真:Samsung Electronics)

 Galaxy Note7は発売から5日目に韓国で自然発火を訴えるユーザーが登場、相次いで燃えた端末の写真や動画がSNSに投稿された。さらに米国でも発火事故が発生した。2016年9月に米国消費者製品安全委員会(CPSC)がGalaxy Note7は電源を切って使用しないことを勧告、世界各国の航空会社が同機種の機内持ち込みを全面禁止にした。結局、サムスン電子は10月に生産中断を発表し、交換と払い戻しを行うに至った。

 SNSでは「Galaxy S10 5Gの発火事例はまだ1件しかない。自然発火というのは男性の主張にすぎず、様子を見るべきだ。Galaxy Note7のときは全国各地で発火事故が起きていた」と慎重な意見がほとんどだ。ただし、一部では「Galaxy Note7のときも、最初は“ユーザーの使い方がおかしい”と言っていたのに、生産中断になった」、「外部衝撃による発火だなんて、Galaxy S10 5Gは火打石なの? 誰でもスマートフォンを落としたりぶつけたりすることはある」と外部からの強い衝撃による発火という説明に納得できないという意見も出ていた。


もう1台の“問題機種”に注目

 もっぱら、韓国ではGalaxy S10 5Gより折り畳みスマートフォン「Galaxy Fold」の発売可否の方が話題になっている。2019年2月の公開当時は“画期的なスマートフォン”として脚光を浴びた。ところが、「ディスプレーの片方だけ電源が入らない」「ディスプレーの折り目から部品が出てきた」「端末を受け取って2日目で故障して使えなくなった」――。発売前にレビュー用端末を受け取った米国のマスコミ関係者らが、ディスプレー関連の不具合を次々に報道したのだ。


サムスン電子の「Galaxy Fold」
不具合により発売が延期されている(写真:Samsung Electronics)

 グローバルでの発売日は延期となり、韓国での発売も遅れている。韓国では5G対応スマートフォンとして5月末に発売する予定だったが、製品の品質安定化を理由に6月発売になった。しかし5月31日時点で「発売日程は数週間以内に発表する予定」としており、さらに延期される可能性が高い。

 韓国内ではたとえGalaxy Foldの発売が遅れても、発売後に大きな問題を起こさなければサムスン電子は安泰という見方が増えている。複数の韓国メディアが「米国政府を中心に始まった中国華為技術(ファーウェイ)への制裁で、恩恵を受けるのはサムスン電子」と報道しているのだ。Galaxy Foldと発売日競争を繰り広げるはずだったファーウェイの折り畳みスマートフォン「Mate X」は、米グーグル(Google)のスマートフォン向けOS「Android」を搭載できず、予定通り発売できるかどうか不透明という見方もある。結果として、サムスン電子が折り畳みスマートフォンでも優位になり、世界市場でのスマートフォン販売台数や5G装備でも世界1位をキープできるとして、楽観視されているのだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.6.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02305/

韓国、2時間差で勝ち取った「世界初5G」、低遅延通信で注目高まる軍事テクノロジー

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2019年4月3日、韓国の通信事業者(キャリア)3社は一般ユーザー向けの5Gサービスを開始した。2018年2〜3月の平昌冬季五輪でのテストサービスを経て、2018年12月1日にスマートファクトリーなど企業向けサービスを開始し、2019年4月3日に一般ユーザー第1号加入イベントを開催、4月5日に一般ユーザーの全面的な加入受付が開始された。

 当初、一般ユーザー向けサービスは4月5日に韓国Samsung Electronics社(以下Samsung社)の「Galaxy S10 5G」の発売と同時にスタートする予定だったが、キャリア3社は突然、4月3日夜11時に有名人を対象にした第1号加入記念イベントを行った。

 米国の大手キャリア、Verizon社が米Motorola Mobility社のスマートフォンを使い、4月11日に予定していた一部地域での5Gサービス開始を、「世界初」のために4月3日に前倒しすると発表したからだ。このニュースが韓国のキャリア3社に伝わったのは3日の午後8時だった。「世界初」を譲れない韓国側は、Verizon社のサービスが始まる2時間前に5Gサービスを開始し、世界初の座を守った。

 5Gを利用できるスマートフォンはSamsung社のGalaxy S10 5Gしかないにもかかわらず、韓国の5G加入者は4月5日に6万人、21日には20万人を突破したほどで、関心度は高い。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.5.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00029/

世界初5G商用化の韓国で進む製造業DX、造船世界一の現代重工業も本腰

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2019年3月27日から29日にかけて、韓国ソウルの展示会場COEXで「スマート工場・自動化産業展」が開催された。3回目となる今回は、「Digital Transforming in Manufacturing」をテーマに5G・IoT・ロボット・AI(人工知能)で製造現場がどう変わるのかに焦点を当てた展示だった。韓国Hyundai Heavy Industries(現代重工業)グループ、韓国Hanwha Precision Machinery社などを中心に490社が出展した。

 現代重工業グループでは持ち株会社の韓国Hyundai Robotics社、Hyundai Heavy Industries社、電気システム部門のHyundai Electric & Energy Systems社が参加し、スマートファクトリー総合プラットフォーム「H!-FACTORY」を初公開した。これは自動化設備を導入した工場の最適な運営を支援するプラットフォームであり、モジュール化設計により顧客のニーズに合わせて提供できるようになっている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.4.

 

-Original column

韓国Samsungがロボットビジネスを再開、エンタメ用の人型から実務に向けた協働型へ

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 韓国Samsung Electronics社は、2019年2月19日に米国ラスベガスで開幕した北米最大規模のキッチン・バスルーム関連展示会「The Kitchen & Bath Industry Show(KBIS 2019)」で、「AI(人工知能)ホーム」をテーマにスマート家電とAIを搭載した家庭用ロボットを公開した。

 2019年1月に開催された「CES 2019」で公開したロボットの他に、家庭用ロボットとして調理を手伝うロボット「Samsung Bot Chef」、ロボット掃除機「Samsung Bot Clean」、冷蔵庫型でAIを搭載する野菜栽培機「Chef Garden」の3機種を展示した。

 最も注目を浴びたのはSamsung Bot ChefとChef Gardenである。Samsung Bot Chefはいわゆる“調理お助けロボット”で、調理台上部に6軸ロボットアームが固定されている(図1)。

 アームの先には3指のグリッパがあり、各種調理器具を把持して「切る」「水を注ぐ」「混ぜる」「調味料を入れる」といった作業をこなすという。「主婦の味方として、あるいは手や腕が不自由な人のアシスタントになることを願って開発した」(Samsung Electronics社)。レシピをダウンロードすれば順番通りに作業する機能もある。発売時期は未定だが、家庭のほか、レストランや食品工場でも使えるロボットを目指しているという。



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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2019.3.

 

-Original column

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00024/