書籍案内 : HDR制作解説書Ver.2 

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HDR制作解説書Ver.2 
世界の映像クリエーター、技術者による解説
HDR制作解説書Ver.2

 

<ハリウッドのHDRカラーグレーディングから>
●米映画スタジオ技術部門から見たHDR制作とテレビ画質/米ソニー・ピクチャーズエンタテイメント 高島芳和
●Netflixオリジナル作品『Marvel アイアン・フィスト』/EncoreシニアカラリストTony D’Amor
●ドルビーのHDRコンテンツ制作/Dolby Lab.ディレクターThaddeus Beier

<HDRの運用と課題>
●HDR運用の基本と概況/ソニービジュアルプロダクツ 小倉敏之
●ドルビービジョンのライブ放送サービスへの適用/ドルビージャパン 真野克己
●大相撲8K/SHV・HDR(HLG方式)生中継/NHK 藤井達也

<HDR制作に挑む>
●HDR・SDR一体化制作の取り組み~NHK土曜時代ドラマ/NHK 前田貢作
●4K制作、2K/SDR変換・放送とHDR編集の取り組み~メーテレドラマ/神道俊浩・江口聡・田中博昭
●WOWOWの4KとHDR制作経験/WOWOW岡野真紀子・篠田成彦
●カンテレ初の8K/HDRオリジナル作品/関西テレビ放送 矢野数馬
●フルスペック8Kの技術特性とコンテンツ制作/NHK技研 瀧口吉郎
●フルスペック8Kが切り拓く新しい映像の世界/ロボット 諸石治之

<特別報告>
●大分朝日放送の4Kへの挑戦~経営と制作現場の視点/OAB上野輝幸・塩川秀明
●4K/HDR制作による地域のデジタルアーカイブと新たな創生の提案/凸版印刷 高橋隼人
●世界初 韓国の地上波による4K放送とHDR制作/ITジャーナリスト 趙章恩

 

140ページ 定価1,500円(本体価格1,389円/送料別)

詳細



韓国 若者にブーム プチぜいたく品販売増=趙章恩

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韓国の最近のトレンドは「小確幸(ソファクヘン)」である。小さいが確実な幸せの略語だ。 村上春樹著『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』に出てくる造語だ。

 韓国は20年以上就職難が続き、物価は高騰、経済格差も広がるばかり。激しい競争社会の反動か、流れを逆行する20~30代の小確幸の若者が増えている。

 成功を目指して苦しむより、自分が好きなことをする。コンビニでちょっと高級なお弁当を買うとかペットと遊ぶ時間を設ける、あるいは公園で自転車に乗るなどの小さい目標を達成し、幸せな気分になり満足する。

残り335文字(全文588文字)

週刊エコノミスト

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

2018.10 .

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20181023/se1/00m/020/022000c

韓国 プラゴミ削減へ 最高20万円の過料=趙章恩

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 世界中で環境汚染防止のためプラスチック製品の使用をやめる企業が増える中、韓国も8月2日から新制度が始まった。カフェやファストフード店で店内利用にもかかわらずプラスチック製カップで飲み物を提供した場合、その店は過怠料が科される。過料は最高200万ウォン(約20万円)で、違反回数と売り場面積に応じて決まる。

 環境部(日本の環境省)の調査によると、2015年の韓国内の使い捨てカップの使用量は260億個で、09年の191億個から大幅に増えたが、リサイクル率はわずか6・1%にとどまった。カップの材質が複数で選別に手間がかかる、企業のロゴがプリントされているとリサイクルが難しいなどの理由で焼却されるためだ。

残り328文字(全文630文字)

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

2018. 8.

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20180828/se1/00m/020/022000c

韓国最大のネット企業NAVER、ユーザーとの会話から学習してAIを高度化

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 LINEの親会社で韓国最大のインターネット事業者であるNAVER社は、2018年3月23日に開催した株主総会で2018年は2つのキーワード、「AIビジネス」と「グローバル市場拡大」のために、投資を拡大する方針だと明かした。同社CEOの韓聖淑(ハン・ソンスク)氏はこの場で、「これまでAIとコンテンツに多大な費用を使ってきたが、今年もAIと欧州市場開拓への投資を計画している。

 AIに関しては有能な人材確保のための投資もする計画だ」、「新しいことを始めないと3年後(NAVER社が)どうなるかわからない」と述べた。韓国金融監督院が公開している企業の資産データによると、同社は3兆ウォン(約2900億円)を超える現金を保有しているので、大規模投資やM&Aの余力は十分あるといえる。同社は2017年7月にもAIを中心とした新技術に今後5年間で5000億ウォン(約490億円)投資すると発表している。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2018.4.

 

-Original column

http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00002/

韓国2大電機メーカーがAI競争、独自開発のSamsung、協業活用するLG

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2018年になり、韓国Samsung Electronics社(以下Samsung社)と韓国LG Electronics社(以下LG社)のAI競争は激しさを増している。両社は、2018年を本格的にAI搭載家電が売れ始める年と見込んでいるようだ。1月に米国ラスベガスで開催された世界最大級のエレクトロニクス展示会「CES 2018」でも、2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2018」(MWC2018)でも、ハードウエアの単純な仕様より「AI搭載でより使いやすくなった」ことを強調していた。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo》

2018.3.

 

-Original column

http://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/mag/15/00150/00047/

平昌五輪で活躍したドローン、ショーや警備・聖火リレーにも登場

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  振り返ると平昌五輪の開会式といえば人面鳥、ではなく1218台のドローンが作った五輪マークだった。開会式は毎回、五輪マークをどれだけ斬新な方法で登場させるかが成功の決め手と言われてきた。

 開会式では、地域住民1000人がLEDで平和を象徴する鳩を作った後、白い風船を飛ばした。白い風船は1218台のドローンに変わり、スノーボーダーの形を作った。その後、五輪マークを作った。五輪公式スポンサーであるインテルのドローンショーだ。

添付画像
開会式でのドローンショー
(出所:インテル)
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、これは現場で行ったパフォーマンスではなく、事前に録画した映像である。開会式場が狭く、風も強かったため、墜落する危険があったからだ。インテルによるとNGはなく、五輪マークは一発で成功したという。ギネス世界記録登載を狙い、ギネスの担当者も撮影現場で見守った。

 韓国で話題になったのは、1218台のドローンを1台のパソコンと一人の操縦士が操作したことである。インテルによると、ドローンをコントロールする自動化プログラムがあるので、ドローンの数は1万台に増えても問題なく操作できるという。

ドローンに期待する韓国

 韓国では農作業や国有地の山林管理、災害予防など、幅広くドローンを使っている。国土交通部(部は省)の統計によると、届け出られた商業用ドローンは2013年の193台から2017年は3735台へと増えている。国土交通部は韓国内ドローン市場規模を2017年の700億ウォン規模から2027年は2兆5000億ウォンに拡大させる目標を掲げるほど、ドローン産業に期待している。

 韓国にはドローン操縦資格試験もあり、地方大学にはドローン学科までできたほどだ。ドローン操縦資格取得者数は2013年の52人から2017年は3736人に増加した。雨後のタケノコのように増えたドローン塾では、ドローン操縦資格さえあれば、農村で仕事がもらえ年俸1億ウォンも夢ではないと宣伝している。

 しかしインテルのドローンショーの技術からすると、ドローンの使用用途に合わせた操縦プログラムさえあればいいので、特別な操縦資格はもういらないかもしれない。それよりも、人が関与しなくてもドローンを操縦できる人工知能のアルゴリズムを考えられる専門家を育てる必要があるだろう。また韓国メディアは、インテルのドローンショーのようにドローンを使って美しい演出ができる芸術家を育てる必要があると強調していた。

五輪の警備でもドローンが活躍

 ドローンは開会式のショーだけでなく、五輪の警備にも使われている。韓国軍と駐韓米軍が協力してドローンで五輪競技場を航空偵察し、映像をセキュリティ管制センターに送信するものだ。警備やテロ防止に役立てており、HD映像のカメラや熱感知カメラを搭載したドローンが平昌を訪問した外国首脳の警護にも使われていた。

 聖火リレーでも5Gネットワークで制御するドローンが登場し、短い距離だが聖火を運ぶパフォーマンスを行った。聖火リレーでは人が乗って操縦する大型ロボットも走者として参加した。

添付画像
聖火リレーに登場したドローン
(出所:KT)
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章恩(ITジャナリスト)

 

NIKKEI X TECH

2018.2.

 

-Original column

http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00167/022100003/

平昌五輪の裏で目立った、AIやARの案内技術

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韓国で大きなスポーツ大会があると、必ずといっていいほど盛大なパブリックビューイング、いわゆる街角応援が繰り広げられる。しかしこの冬のソウルは連日氷点下10~15度の大寒波に襲われたため、寒すぎて街角応援ができなかった。

 その代わり、駅構内や特設イベント会場など、室内に大型テレビを置いて2017年5月から始まった4K地上波本放送を流し、応援できるようにした。地上波放送局3社とLG電子が提携し、LG電子の4Kテレビを購入して地上波4K放送を受信している世帯限定で、3月まで無料で「TIVIVA」というテレビ向け4K放送アプリを使えるようにした。テレビのメニューからTIVIVAを選択すると、全ての五輪競技を4Kで視聴できる。時間の関係上、地上波放送局が中継しなかった競技も見られるので、スポーツファンには嬉しいサービスである。

添付画像
4K地上波放送を楽しめるTIVIVA
(出所:LG電子)
[画像のクリックで拡大表示]

 仁川空港第1ターミナルの地下には横15メートル、縦3.8メートルの曲面パノラマ大画面Ultra Wide Visionがあり、五輪競技の中継を行っている。

 この他にも空港内に平昌五輪会場で使われている5Gメディアサービス「シンクビュー」や「オムニポイントビュー」などの体験や、VR(仮想現実)でスキージャンプやボブスレーを楽しめるコーナーがあった。

AIチャットボットによる案内が登場

 仁川空港第2ターミナルの出発ロビーではロボットがコーヒーを入れて無料でふるまってくれる。出発ロビーと到着ロビーには案内ロボットと掃除ロボットがいる。案内ロボットはAI(人工知能)チャットボットのように利用者の言葉を理解して道案内をしたりゲートを案内したり、目的の場所までエスコートしたりする。掃除ロボットは人や物がある場所をよけ、後で掃除をしに戻ってくる空間認識機能を搭載した。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

NIKKEI X TECH

2018.2.

 

-Original column

http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00167/021900002/

平昌五輪の最新IT、5Gで実現する面白い視聴体験

 2018年2月9~25日の日程で、平昌五輪が開催されている。平昌は2010年冬季五輪の開催誘致から始まり、3度目の正直で2018年の冬季五輪開催地に選ばれた。それだけに、韓国人にとって平昌五輪は「ついにこの日が来たか!」というぐらい開催が待ち遠しかった。

 平昌に行ってみると、寒い。全ての川がカチカチに凍っている。韓国のテレビでレポーターが「脳が凍るほど寒い」と言っていたのが印象的だったが、それは大げさではなかった。オリンピックスタジアムに近づくほど風が強く、今までに体験したことがない強風で体が勝手に動いてしまうほどだった。

 平昌では五輪競技を観戦するのも楽しいが、平昌が目指したITオリンピックを体験できる場所もたくさんあるため、展示場を回るだけでも楽しかった。平昌五輪の競技場は雪の上で行う種目は平昌市、氷の上で行う種目は江陵市、と車で50分ほど離れている。平昌市と江陵市にはそれぞれ、韓国のロボットや地上波4K放送、5Gテストサービス、VR(仮想現実)、AI(人工知能)通訳といったITサービスを体験できる。

 特に興味深いのは五輪期間中しか体験できない、5Gテストサービスだった。5Gは超高速、超連結、超低遅延が特徴の新しい通信ネットワークである。現在のLTEよりも20倍以上速く、より大量のデータを送受信できるため、韓国のキャリアは「データがガソリンの役割をするインダストリー4.0の時代には欠かせないインフラ、通信の高速道路」と宣伝している。

5Gは何がすごいのか?

 5Gで何ができるのか。分かりやすく面白いのは、競技を中継する「インタラクティブ・タイムスライス」「オムニポイントビュー」「シンクビュー」「360度VRライブ」といったサービスだった。

添付画像
インタラクティブ・タイムスライスを体験している様子
(出所:KT)
[画像のクリックで拡大表示]

 テスト用の端末にはサムスン電子のタブレットPCを使っていた。5Gテストサービスのため、臨時の電波承認をもらったタブレットを手作業で100台ほど作り、それをソウル、平昌、江陵に置いた。試作品だからかとても重かった。

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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

NIKKEI X TECH

2018.2.

 

-Original column

http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00167/021600001/

韓国大統領選ネット上でも大激戦

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先の韓国大統領選挙戦は、まれに見る盛り上がりぶりだった。選挙に国民の関心が向くこと自体は歓迎すべきだが、その陰ではソーシャルメディアを中心に大量のフェイク(虚偽)ニュースが飛び交い、大きな混乱が生じていた。スマートフォン時代の選挙で起こった事態の顛末を紹介したい。

大統領選挙戦での熱狂的
支持活動の裏側では…… 



 2017年5月10日、波乱の選挙戦を制し、文在寅(ムン・ジェイン)第19代韓国大統領が誕生した。

 韓国社会世論研究所が同日、19歳以上の男女1044人に行った世論調査では、回答者の83.8%が文大統領に期待すると答えている。

 大統領選挙期間中の選挙運動では、文候補(大統領)支持者の熱狂ぶりは特にものすごく、街角演説に自作のうちわやプラカードを持ち込み、まるでコンサート会場のような盛り上げ方で派手な応援をしていたのが印象的だった。

 文候補の所属政党「共に民主党」も、こうした熱心な支持者に応えようと、演説が終わった後に応援に駆け付けた現役国会議員らが壇上に上がって、歌ったり踊ったりして大いに場を盛り上げた。

 だが、筆者の目が釘付けになったのは、むしろ、国会議員らが客寄せパンダになって踊っている間、「共に民主党」の職員たちが支持者の周りにテーブルを置いて、「文候補が大統領になったらこういうことをしてほしい」という要望を聞いてパソコンに入力していたことだ。こういう光景は初めて見たのでとても新鮮だった。

 一方、さまざまなオンラインコミュニティサイトでも、政党関係者だけでなく、各候補者を支持する人たちの書き込みがあふれていた。

 候補者の公約や経歴を写真入りでまとめたものから、パロディあり、お笑いネタありでユニークな応援をする人も多かったので、ネット上もまた、お祭りさながらの大騒ぎだった。

 ――ところがこの後ほどなく、有権者たちがお祭り騒ぎに興じているわけにも行かなくなる事態が発生する。今回の大統領選挙戦でも、ソーシャルメディアを中心に拡散するフェイク(虚偽)ニュースが大問題になったのだ。

Googleの調査(注1)によると、韓国のスマートフォン普及率は90%以上となっており、そんな国民の大半がスマートフォンを持つという国の実情を反映してか、ソーシャルメディア経由でのフェイクニュースの流通が大激増。各党の選挙対策は、専ら「虚偽情報や誹謗中傷の火消し」が最重要業務となってしまった。

 早くからインターネットが普及している韓国では、1990年代後半から選挙の度に、「インターネット世論を制する者が選挙を征する(=当選する)」と言われてきた。従来はパソコンでインターネットを見る人が圧倒的だったので、ポータルサイトニュースのコメント(「デッグル」=答えの言葉)欄こそが世論を盛り上げる重要な場だった。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領が誕生した2012年12月の大統領選挙では、国家機関である国家情報院と国軍サイバー司令部が、与党を擁護し野党を誹謗中傷するコメントを書き込む「デッグル部隊」を運営していたことが内部告発により発覚。責任者らは二審で有罪となった。

 そんなこともあって、選挙運動期間中は実名を確認してからコメント欄に書き込みをするよう法律が変わった経緯がある。

 今回の選挙では、ポータルサイトになり代わり、スマートフォンでアクセスしやすいオンラインコミュニティやソーシャルメディアが、フェイクニュースの温床となったのだ。

 ソーシャルメディアでシェアしやすいよう「工夫」し、写真と文字をまとめて1枚の画像にしたフェイクニュースが多かったのも新しい動きの一つである。


現役の自治体区長が
フェイクニュースで取り調べ

 2017年5月8日、韓国中央選挙管理委員会サイバー選挙犯罪対応センターが公開した公職選挙法違反行為の摘発状況によると、同年5月6日までに同委員会が摘発したインターネット上の選挙法違反行為は、合計3万8657件に上る。

 このうち、「虚偽事実公表・候補者誹謗」が2万5049件(全体の64.8%)と最大であり、2012年の大統領選挙時に比べて約6.3倍となった。それに続くのが、「世論調査公表・報道禁止違反」の1万1800件(同30.5%)である。

 韓国警察庁も、5月8日までの選挙運動期間中に、ソーシャルメディアで広がった選挙に関するフェイクニュース55件を摘発した。このうち12件を捜査し、9人を立件した。残りの43件は、政府機関の放送通信審議委員会を通じ、フェイクニュースが掲載されているウェブサイトに削除を求めた。

 一体どんな人がフェイクニュースを流すのだろうかと思ったら、なんと現職のソウル市江南区庁長(注2)も混じっていた。文在寅候補を中傷する書き込みを行ったとして、中央選挙管理委員会と同候補から告発を受けていた申燕姫(シン・ヨンヒ)区庁長は、4月に入り、警察から取り調べを受けた。

 同区庁長のフェイクニュースは、これを真に受けた保守派候補支持者のシニア層を中心に、その家族や知人に転送され拡散したことでも問題になった。韓国では、ポータルサイトやニュースサイトの記事をコピーしてソーシャルメディアに掲載すると、自動的に出所とURLが添付される仕組みになっている。

 つまり、こうした出所がないニュースはフェイクニュースである確率が高い。これを知らずに、フェイクニュースを拡散してしまうシニア層が少なくなかったのだ。日本ではそれほど問題視されそうにない話なのだが……なぜ、韓国では問題なのか。


注2 区庁長 日本の「区長」に相当


親族の信頼関係に亀裂も!?
フェイクニュース規制の動き

 家族単位の行事が多い韓国では、おじいさん、おばあさんから孫の世代まで、親戚一同がグループチャットでつながっているケースが多い。

 投票日が近くづくほど、オンライン上のコミュニティサイトには、フェイクニュースは家族仲を険悪にするという嘆きにも似た次のようなつぶやきが、たくさん見受けられるようになっていた。

 「親戚があまりにも多くのフェイクニュースを転送して来るので友だち登録を解除した」「母がフェイクニュースを信じて保守派に投票するよう何度もメッセージを送って来る」 ――などなど。

 いかにも韓国らしいといえば、その通りなのだが。

 こうした事態に、文在寅大統領就任後、大統領の支持者らを中心に「集団知性でフェイクニュースに立ち向かおう」という活動が始まった。

 大統領の日々の動静や談話を、大統領報道官の言葉を中心にウィキ形式で記録・更新するサイトを作り、大統領に関するニュースがフェイクかどうかを参照できるデータベースを作ろうというのだ。

 ドイツでは今年4月、ソーシャルメディア運営会社がフェイクニュースが掲載されていることを認知してから一定時間内に削除せず放置した場合、最高5000万ユーロの罰金を賦課する内容の法案が閣議決定された。

 韓国でも、既に何度も国会でフェイクニュース対策に関する討論の場が設けられている。専門家の意見を聞きながら、「フェイクニュースとは何か」「フェイクニュースは表現の自由に相当するか」といった所から話し合い、徐々に議論を深めていくようだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

ダイヤモンド online

「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」

2017.5.

 

-Original column

http://diamond.jp/articles/-/129681


韓国スマホ専用銀行kakaobankが大人気 口座急増の理由はフィンテック

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<ネット先進国の韓国だが、意外にもネット銀行は今年4月に第1号が誕生したばかり。ところがこの7月からネットベンチャー大手がネット銀行に進出、急速に契約数を伸ばしている。その秘密とは?>

7月27日営業開始したスマホ専用銀行kakaobankが、韓国で爆発的な人気を誇っている。営業開始から1ヵ月の8月27日午前7時時点で口座数は307万件突破、チェックカード(日本でいうデビットカード)発行件数は216万枚、預金1兆9580億ウォン(約1960億円)、融資1兆4090億ウォン(約1410億円)を記録。営業開始2カ月目の9月27日時点ではペースダウンしたものの、口座数390万、チェックカード発行280万枚、預金3兆1200億ウォン(3,072億円)、融資2兆5000億ウォン(2,462億円)と順調に規模を拡大している。

韓国の大手銀行が提供するモバイルバンキングアプリ経由で開設した非対面口座数(銀行の窓口に行かずスマホ経由で書類を提出して口座を開設した数)は2016年の1年間15万5000件しかなかったことを考えると、1ヵ月で307万件はすごい数字である。また、韓国最大手銀行KB(国民銀行)が2017年1月から8月11日まで行った個人融資は1兆900億ウォンで、それを超える金額をkakaobankは1ヵ月で融資した。kakaobankより一足早くスマホ専用銀行第1号として営業を開始したKBANKはここまで旋風を巻き起こせなかった。

kakaobankは実店舗がなくアプリとATMを使ってすべての業務を行う銀行である。kakaobankのアプリをインストールして個人情報を入力し、写真付き身分証をカメラで撮影して本人確認する。開設したkakaobankの口座にKAKAOから1ウォンが振り込まれ、振り込んだ人の名前を表示するところにキーワードが書かれていて、このキーワードをkakaobankのアプリにもう一度入力すると本人確認完了。すぐ口座を利用できる。平均で5分、遅くても10分ほどで口座を開設できる。ログインは指紋認証やスマホのパターン認証も利用できる。

kakaobankの口座数が急増したのは、何よりも手軽にお金を借りられる個人向け信用貸しサービスに理由がある。

19歳以上であれば誰でも担保なしで300万ウォン(約30万円)まで借りられる「へそくり貸出」は、6時から23時の間に申し込めば数分でお金が口座に振り込まれる。金利は金融業界が共有する個人信用評価レベルに応じて年3.348%〜15%が適用される。

会社員向けの「マイナス貸出」は、審査に数日時間はかかるが、担保なしで最大1億5000万ウォン(約1500万円)を金利2.88%(最安の場合)で借りられる。一般の銀行では、金利は個人信用評価レベルで決まるが最低でも3%以上、金額も担保なしでは数千万ウォンしか借りられない。手続きに必要な住民票や所得証明といった書類も借りる人が用意しないといけないが、kakaobankは「同意」ボタンにタッチするだけで、kakaobank側が書類を揃えてくれる。

預金は1日だけ預けても年1.2%、1年定期預金は年2%と他の銀行より高い金利がもらえる。チェックカードも特典がある。スーパーやコンビニなどの加盟店で支払いに使うと、平日は決済した金額の0.2%、週末と公休日は0.4%をキャッシュバッグする。全国銀行とコンビニのCU・セブンイレブンにある11万4000台あまりのATMが使え、年末まで時間外手数料も無料だ。また、チェックカードに韓国では大人気のKakaoTalkのキャラクターが描いてあることも好評だ。

海外の銀行口座宛ての送金も5000米ドルまでは送金手数料5000ウォン(約500円)だけで送金できる。銀行だと送金手数料、仲介手数料、電信料などが賦課され数万ウォンはするが、kakaobankは送金手数料だけ払えばいい(ただし、今のところは22カ国にしか送金できない)。

kakaobankは店舗なしで運営する銀行なので、店舗維持費を節約できる分、既存の銀行より預金金利は高く、融資金利は低く、各種手数料も無料もしくはうんと安く設定した。それに今時のサービスらしく、人工知能で個人のネット上の活動やビッグデータ分析から信用度を評価し、一人ひとりに適用する金利を変える独自の信用評価モデルをkakaobank企画段階から開発しているという。


kakaobankは、アプリが単純で直観的に使いやすいことも評判がいい。その理由は韓国の国民的人気メッセンジャーアプリKakaoTalkをベースにしているからだ。人口5000万人の韓国で約4000万人がこのアプリを使っている。KakaoTalk上で友達登録してある人同士なら、kakaobank経由で24時間リアルタイム、しかも手数料なしで送金ができるので、割り勘やお祝い金を送金する時に便利である。KakaoTalkのID宛てにお金を送金すると受取人にメッセージが届き、そのメッセージを見て口座情報を登録すればお金が振り込まれる仕組みだ。

韓国では年長者が支払いをする、友達同士だと順番でおごることが多かったが、最近は割り勘文化が定着したため、現金の持ち合わせがなくてもその場で手数料なしで割り勘ができるのは助かる。お祝い金をあげたいけど口座番号を聞くのは気が引ける、というときも便利だ。

日本の銀行は他行宛てに15時以降に振り込むと、相手の口座には翌日お金が振り込まれるところが多いが、韓国は全銀行が24時間いつ振り込んでもすぐ相手の口座にお金が入る。ただし、一般の銀行だと相手の口座番号または携帯電話番号を知らないと送金できない。手数料がかかる場合もある。ところがkakaobankは相手のKakaoTalkのIDさえ知っていれば無料で送金できるという違いがある。

韓国のインターネットバンキング、モバイルバンキング、ネット決済は、独自のセキュリティプログラムをインストールし、公認認証書と呼ばれるネット上の本人確認プログラムを経由しないと取引ができないようになっている。これがとても手続きが面倒で、さらに韓国語以外のOSをインストールしたパソコンや海外からアクセスするとうまく利用できない時もある。複雑な認証を経由したからといって特別安全なわけでもなく、インターネットバンキングやモバイルバンキングのハッキング事件は後を絶たない。

世界中がフィンテックでより便利に、より安全に金融サービスを使わせようと競争しているのに、韓国だけ独自のルールを重視してガラパゴス化していると非難の的だった。そんななか登場したkakaobankは公認認証書を使用しない点でも画期的だった。

kakaobankの人気ぶりに驚いた一般の銀行は、早速手数料や貸出金利の値下げを発表した。公認認証書を使わない新しいモバイルバンキングサービスも検討しているという。kakaobankの登場はただのスマホ専用銀行の誕生に留まらず、韓国の金融サービスを変えるきっかけになりそうだ。


By 趙 章恩

 

Newsweek コラム&ブログ

韓国ソーシャルイノベーション事情

 

 2017年10月

-Original column

http://www.newsweekjapan.jp/cho/2017/10/kakaobank.php