ソウル地下鉄駅名を大型眼科医院が9億ウォンで落札

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 ソウル市の地下鉄を運行するソウル交通公社は財政難を改善するためソウル地下鉄の駅名を販売している。駅名に企業名や機関名を併記する代わりに費用をもらう事業である。

 2022年6月に行われた「駅名併記有償販売事業」では7号線・論峴(ノンヒョン)駅の駅名を大型眼科病院が過去最高額の9億ウォン(約9400万円)で落札、9月から駅名に「ノンヒョン駅(江南(カンナム)ブランド眼科)」と病院名を併記することが決…

残り339文字(全文564文字)

週刊エコノミスト

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

 

2022.  7 .

 

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220719/se1/00m/020/064000c

BTS 実は2年前に予定していた活動休止

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K-POP

 社会にメッセージを発信し、K-POPやアイドルの枠を超えて活動を展開してきたBTS。グループとしての活動休止も、次へのステップの新たな挑戦かもしれない。

韓国内で広がる共感 始まったソロ活動=趙章恩

 世界的に活躍する韓国の7人組人気グループBTS(防弾少年団)が6月14日、ユーチューブの公式チャンネルで公開した一本の動画の内容が、世界をニュースとして駆け巡った。デビュー10年目に突入したこの日の動画では、メンバーたちがテーブルを囲んで和やかに食事。今後の活動に話題が及んだ時、メンバーたちが「個人の成長のため当分、ソロ活動に重点を置きたい」との意思を示したのだ。

 これを受け、韓国国内メディアだけでなく、AP通信や米『ニューヨーク・タイムズ』、英BBCなど海外メディアもこぞって「BTS活動休止」と報じた。その影響は株式市場にも及び、BTSが所属する韓国取引所・有価証券市場(KOSPI)上場の芸能事務所HYBEの株価は翌日、25%も下落。時価総額が2兆ウォン(約2000億円)も吹き飛んだ。

 報道の中には、スケジュールがハードなK-POP(韓国エンターテインメント)産業の厳しさを批判するものもあったが、動画の中で明かされたメンバーの率直な思いや、「ARMY」(アーミー)と呼ばれる熱心なBTSのファンの反応などを見ていると、K-POPやアイドルの役割を次のレベルへ引き上げる新たなステップと位置付けているように感じられる。

「メッセージ」を重視

 BTSは現在27歳のRMさんをはじめ、24~29歳のメンバーで構成。デビューは2013年6月で、HYBEを創業した音楽プロデューサー、パン・シヒョク氏の肝煎りのプロジェクトとしてメンバーが選抜された。ヒップホップを主体に洗練されたダンスで徐々に人気を集め、14年には日本でもデビューするなど海外でも早くから活動していたが、他のグループと大きく異なるのは作詞・作曲にメンバーが関わることだ。

 個性を抑圧される若者の苦悩や葛藤を代弁した「DOPE」(15年)などが同世代の共感を呼び、米国を中心に世界へファン層が拡大。歌詞をすべて英語にした「Dynamite」(20年)のほか、「Butter」「Permission to Dance」、英ロックバンド「コールドプレイ」とのコラボ曲「My Universe」(いずれも21年)は立て続けに米ビルボードのシングルチャート1位になった。

 BTSはまた、SNS(交流サイト)などを活用したファンとのコミュニケーションにも優れる。現在の登録者数約6900万人のユーチューブ公式チャンネル「BANGTANTV」では、ダンスの練習動画やライブの舞台裏などをアップし、日本語や英語などの字幕も付ける。また、HYBE独自のファンとのコミュニティープラットフォームサービス「WEVERSE」もその手段の一つだ。

 WEVERSEは19年、HYBE所属アーティストとファンとの交流の場として開設。21年末時点で世界238カ国3700万人以上が会員登録しており、アクセスの90%が海外からという。WEVERSEに集まったデータを分析し、曲作りや次の活動を企画する際に活用する。アルバムなどの作品だけでなく、関連グッズなど物販の接点にもなっている。

「止まってもいいよ、何の理由も知らず走る必要はない」「夢がなくても大丈夫」──。18年発表のアルバム収録曲「Paradise」の歌詞のように、BTSの楽曲にはありのままの自分を肯定し、周りの人を愛し、希望を持とう、というメッセージが込められる。若い世代だけでなく中年層にも響き、韓国では「善の影響力を持つアイドル」として好感度が高い。

 ただ、まさに分刻みのスケジュールの中で、BTSが重視していた世の中に発信するメッセージの方向性を見失っていったようだ。RMさんは6月14日の動画の中で、「どんなメッセージを投げかけるのかが重要で、生きる意味でもあるのにそれがなくなった。どんな話をすればいいか分からない」「K-POPもそうだし、アイドルというシステムそのものが、人を熟成するように放っておかない」と語っている。

 BTSメンバーらの話によれば、本来は20年にデビュー7周年を記念するアルバム「Map of the Soul 7」を発売してワールドツアーを行い、BTSとしての活動にひとまずの区切りを付ける予定が、新型コロナウイルスの感染拡大によりツアーの中断を余儀なくされた。その後に発表した「Dynamite」などの曲が本人たちの予想以上に人気が出て、計画が思うようにいかなくなったという。

 アイドルとして率直すぎるともいえる心情の吐露であり、HYBEの一般株主からはメンバーが兵役に就くまで活動を継続するべき、との恨み節も一部にあった。しかし、韓国内のARMYなどではむしろ、ここまでの実績をたたえたうえで、BTSの決断に共感を示す人が多い。BTSの活動の根幹を支えているのが、世の中に発信するメッセージであることを、多くの人が理解しているからだ。

所属事務所は依存度を引き下げ

 そうしたメッセージは、アイドルとしての活動の枠を超えて、17年にはユニセフ韓国委員会と児童・青少年暴力根絶のためのキャンペーンを後援。国連では18年、20年に続き、21年も総会で演説し、「若い世代を道に迷ったという意味で『ロストジェネレーション』と呼ぶと聞いたが、コロナ禍でも変化を怖がらず、何でもウエルカムという『ウエルカムジェネレーション』が似合う」と述べて大きな反響を集めた。

 今年5月には米ホワイトハウスを訪問し、米国で増えるアジア系住民への憎悪犯罪(ヘイトクライム)について、「私たちは、異なる国籍、文化、言語を持つ世界中のARMYのおかげで今、ここにいる」などとメッセージを発信。その後に面会したバイデン大統領は「皆さんがやっていることは大きな変化を作り出す。嫌悪を根絶すべきと語るのはとても重要だ。自らを過小評価しないでほしい。感謝している」と語った。

 BTSは当面、グループとしての活動からは距離を置くが、RMさんは「(今年6月の新曲)『Yet To Come』(まだこれから)というタイトル通り、(動画の中で) 本当に話したかったのは絶対、今が終わりではないということ」とWEVERSEに長文を掲載。メンバーのJung Kookさんは6月24日、米シンガー・ソングライター、チャーリー・プースさんとのコラボ新曲を発表するなど、ソロ活動も早速始まっている。

 株価が大幅に下落したHYBEも、BTS依存の経営から脱しつつあった。19年まではアルバム売り上げの大半をBTSが占めていたが、20年10月の上場に前後してM&A(企業の合併・買収)を活発化。昨年4月にはジャスティン・ビーバーさんら世界的なアーティストが所属する米芸能事務所の買収も発表し、その後完了した。HYBEで相対的にBTS関連の比重が下がっていたこともソロ活動を後押しした可能性がある。

 これまでK-POP産業の一員として、アイドルとして挑戦を続け、さまざまな常識を覆してきたBTS。今回の休息とソロ活動も、新たな挑戦の一つにすぎないのかもしれない。

(趙章恩・ジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

 

2022.  7 .

 

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220719/se1/00m/020/056000c

韓国企業でAI・オンライン面接が加速 ソウル市が就活生に面接練習設備を無料開放

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2020年以降、非接触型社会が定着した韓国では企業の採用活動に人工知能(AI)面接とオンライン面接が追加された。最終面接は対面で行い、書類審査と対面面接の間にAIとオンライン面接を挟む企業が多い。AI面接は求職者の基本的な性格を把握するために簡単な質問などを行い、オンライン面接では意思表現能力や表情の変化などをAIで分析するため、5分以上カメラに向かって話す方式で行う。

 韓国でAI面接が登場したのは19年。AI面接の関連機能を開発している企業らによると、22年8月時点で大手企業630社が導入済み、93%が継続して利用しているという。一方、求職者側からは不満の声も聞かれる。対面面接の場合は相手の反応をみながら質問に答えられるが、AI面接は一人でしゃべり続けないといけないので、どのように答えれば良い評価を得られるのかが分からないというのだ。

残り112文字(全文486文字)

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト

 

2022.  9 .

 

-Original column

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220913/se1/00m/020/063000c

「サムスンがエヌビディアにHBM3供給」一斉報道のインパクト、車載事業も強化へ

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 2023年9月1日、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が第4世代の超高速DRAM技術「HBM3」を使ったメモリーを米NVIDIA(エヌビディア)に納品することが決まったと、韓国メディアが一斉に報じた。同サンプル品の性能テストは完了しており、契約手続きが終わり次第、早ければ10月から本格的に納品を開始する。エヌビディアの「H100 GPU」に搭載される見込みという。このニュースに株式市場が敏感に反応した。サムスン電子の株価は同年8月31日の終値6万6900ウォンから同年9月1日には7万1000ウォンへと約6%アップとなり、その後も7万ウォン台を維持している。

HBM=High Bandwidth Memory。広帯域幅メモリー。DRAMのダイを積層(垂直に積み上げ)して、全体のデータ転送速度を高速・広帯域化するメモリー技術。

 HBMは韓国SK Hynix(SKハイニックス)が開発で先行し市場をリードしている。2022年6月にはHBM3の量産を開始、エヌビディアに納品していた。この市場にサムスン電子が参入し、SKハイニックスを追いかけるかのようにシェアを獲得していく構図になった。今回、エヌビディアへの納品が決まったことでサムスン電子のHBMとメモリー事業の成長が見込まれて株価が上がっている。

 スマートフォンの需要鈍化などでメモリー製品の不況が続く中、AI(人工知能)向けメモリーの需要が立ち上がり伸びた。特にHBMの市場拡大に懸けるサムスン電子とSKハイニックスの期待は大きい。HBMはより⾼度の技術が必要で、価格も⾼くできる付加価値ビジネスである。これまではHBMで優位に立つSKハイニックスが高く評価され、エヌビディアとの取引により売り上げが伸び、株価も上がり続けていた。エヌビディアは生成系AIブームを支えるサーバー向けGPUの需要の高まりを受けて、予想を上回る利益を出している。そんなエヌビディアにサムスン電子もHBM3を納品するようになったことで、メモリー事業の収益が回復に向かう可能性が高い。

 サムスン電子はSKハイニックスと差別化するために、GPUとHBM3をパッケージングするサービスを提供しようとしている。現在、エヌビディアは台湾TSMC(台湾積体電路製造)にパッケージングを委託している。サムスン電子がHBMの設計から生産、パッケージングまで一気通貫の生産体制を整えたことは他社にはない同社だけの強みとなる。韓国証券業界はTSMCが抱えきれないほど需要があるためサムスン電子にもパッケージングを任せる可能性を踏まえ、HBM3とパッケージングまで提供することでサムスン電子が2023年に4~5社だったAI半導体関連新規顧客を2024年には10社前後にまで増やせるだろうと展望した。

 サムスン電子は同日、12nmプロセスによる業界最大容量のメモリー「32Gb DDR5 DRAM」の開発も発表した。生成系AIが日常的に使われる将来にわたって、必要となる大容量のDRAM需要に対応できることを示した格好になった。2023年末までに量産を開始する計画で、省エネ・大容量DRAMのニーズが高いデータセンターなどIT企業に最適なDRAMであると技術力をアピールした。

 サムスン電子の猛追に対し、SKハイニックスも負けてはいない。同社は2023年8月21日、世界初となるAI向け第5世代HBM(HBM3E)の開発に成功したと発表した。既にエヌビディアなどの顧客へサンプル提供中という。顧客の性能テストを経て2024年に量産を始める。SKハイニックスのHBM3Eは1秒当たり最大1.15Tバイトのデータを処理できる。これは第4世代に比べて40%ほど高速化している。放熱性能は第4世代より約10%向上した。一方のサムスン電子は2023年後半にも第5世代HBM(HBM3P)を公開する計画を発表済みである。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

 

 

(NIKKEI TECH)

 

2023. 9.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00094/

韓国24年度予算は2次電池・半導体・ディスプレーなどへ集中投資、研究開発は減額に

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 韓国政府は2023年8月29日、2024年度予算案を議決した。この後、2023年12月の国会審議を経て確定する。注目に値するのは、1991年以来となる国家研究開発(R&D)予算の削減である。2024年度は前年度比13.9%減の25兆9000億ウォンとなった。科学技術情報通信部(「部」は日本の「省」に当たる)の説明によると、満遍なく投資するのではなく、国家戦略技術に集中投資する方向で予算を見直したという。

 韓国政府は「技術主権の確立」をキャッチフレーズに、もっぱら次の分野を国家戦略技術として指定している。「半導体」「ディスプレー」「2次電池」「先端モビリティー」「次世代原子力」「先端バイオ」「宇宙航空海洋」「水素」「サイバーセキュリティー」「人工知能(AI)」「次世代通信」「先端ロボット製造」「量子」である。これらの研究に関して、2024年度予算では前年度比6.3%増の5兆ウォンを配分した。


 グローバル市場をリードできるよう、より規模の大きい研究プロジェクトを推進し、海外の著名な研究機関との共同研究を支援するグローバル協力、研究インフラ投資、実証・商用化促進のための中小企業向け低利融資、若手研究者育成に予算を使い、波及効果のある成果を創出するという。

 このうち若手研究者の育成には、先端分野の企業と大学が契約して、企業の採用を前提にオーダーメード型の実務教育を行う契約学科を増やしていく。修士・博士課程の学生支援も増額する。半導体に続き「二次電池特性化大学」を新設する。現在は首都圏に集中している特性化大学を地方にも拡大する。2次電池、次世代ディスプレー、バイオヘルス、航空宇宙分野は大学内に短期集中教育課程を新設する。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. 9.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00093/

生成AIブームを支える超高速メモリー、サムスン電子とSKハイニックスの競争過熱

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)と韓国SK hynix(SKハイニックス)が超高速DRAM技術「HBM†」を採用するメモリー世界市場シェアのトップ争いを繰り広げている。もともとは高性能なグラフィック処理向けに開発されたHBMだが、生成AI(人工知能)の需要拡大に伴って、大量のデータを一度に処理できるハイスペックなメモリーが求められるようになったことから、サーバーやデータセンターでHBMのニーズが高まっている。HBMは高性能なだけに一般的なDRAMより6~7倍ほど価格が高く、サムスン電子とSKハイニックスは半導体部門の赤字を改善するためにもHBMに力を入れている。

†HBM=High Bandwidth Memory。広帯域幅メモリー。DRAMのダイを積層(垂直に積み上げ)して、全体のデータ転送速度を高速・広帯域化するメモリー技術。

 AIのデータ処理に使うGPU(Graphics Processing Unit、画像処理半導体)にはサーバー向けよりさらに高性能のHBMを搭載する。2023年8月、米NVIDIA(エヌビディア)はAI向けGPU「GH200 Grace Hopper Superchip」をベースにした次世代のNVIDIAプラットフォームを発表したが、このGH200にはSKハイニックスから調達したHBM3eを搭載した。HBM3eメモリーは第5世代に当たり、既存の第4世代HBM3より50%高速という。NVIDIAの「A100」や「H100」といったGPUにもSKハイニックスのHBM3を搭載している。複数の韓国メディアによると、ファブレス半導体メーカーの米AMDが2023年6月に発表したGPU「MI300X」にはサムスン電子やSKハイニックスから調達したHBM3を搭載するとのことだ。

 HBMにおいてはサムスン電子よりSKハイニックスの技術力が高いと評価されている。SKハイニックスは2013年に世界初となる第1世代のHBMを開発、2022年6月には第4世代に当たる8層の16GバイトHBM3の量産を開始、2023年4月に12層のHBM3を開発した。一方のサムスン電子は一歩遅れて2015年に第2世代のHBMから本格的な開発に入り、2023年8月時点で12層の24GバイトHBM3のサンプルを顧客に提供している。両社は第5世代に当たるHBM3e、第6世代となるHBM4の量産も準備中で、第5世代のHBM3eをサムスン電子は「HBM3P」、SKハイニックスは「HBM3+」とそれぞれ称している。SKハイニックスは一足早く第5世代のサンプルを顧客に提供していて、サムスン電子は2023年内に公開するとしている。米Micron Technology(マイクロンテクノロジー)も2023年7月26日(現地時間)、8層で24Gバイトを実現した「HBM3 Gen2」のサンプル出荷を開始したと発表したが、韓国内では第1~2世代のHBMから開発を続けている韓国勢の技術には及ばないという声がある。

 台湾のリサーチ会社TrendForceによると、2022年末時点でHBMのサプライヤー別世界市場シェアはSKハイニックスが50%で1位、サムスン電子が40%で2位、マイクロンテクノロジーが10%で3位だった。今後のシェア見通しでは、2023年にSKハイニックスが46~49%、サムスン電子が46~49%、マイクロンテクノロジーが4~6%とする。2024年には韓国2社のシェアがさらに拡大して最大95%となり、マイクロンテクノロジーは最大5%のシェアを占めると展望している。TrendForceは世界のHBM需要は2025年まで年平均45%成長を続けると予測している。2022年まではクラウドサーバー向けのHBM2の需要が最も多かったが、2023年以降はAI向けHBM3とさらにハイスペックのHBM3eの需要が拡大するという。

 韓国証券業界は、HBMの特需でサムスン電子とSKハイニックスのメモリー事業の実績が大幅に改善するというリポートを出している。背景にあるのは、米Google(グーグル)や米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)がAIサービス強化のために自前のAIチップ開発を進めていること。このチップにHBMを搭載するとなると、サムスン電子かSKハイニックスから調達するしかないからだ。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. 8.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00092/

Z世代のGalaxy離れを食い止められるか、iPhone人気の若年層獲得にサムスンが注力

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香港の調査会社Counterpoint Technology Market Researchがまとめた2023年4~6月期の世界スマートフォン出荷台数によると、シェア1位は22%を占めた韓国Samsung Electronics(サムスン電子)だった。同社は1~3月期に続いて首位を維持した。2位は17%の米Apple(アップル)、3位は12%の中国・小米科技(Xiaomi、シャオミ)だった。

 世界のスマホ出荷台数は2021年7~9月期以降、減少が続いている。端末の性能向上により機種変更の周期が長くなったことや、中古端末の売買も盛んになったことが影響している。こうした状況の中、サムスン電子はフラッグシップモデルの「Samsung Galaxy S23」シリーズとエントリーモデルの「Galaxy A」シリーズが好調で、毎年着実にシェアを伸ばしてきた。2023年7~9月期もサムスン電子は1位の座を死守すべく、折り畳み(フォルダブル)スマホ「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」を2023年7月26日に発表した。そして今回、その発表の場として、これまで欧米各地で開催されていた新機種公開イベント「Galaxy Unpacked」を初めて地元ソウルで開催した。

 世界で最も売れているサムスン電子のGalaxyシリーズだが、同社のお膝元である韓国では異変が起きている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .8

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00091/

業績好調の韓国電池3社が参加、官民共同の協議体で「2030年に次世代電池で世界1位」

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2023年7月13日、韓国で「2030年に次世代電池で世界1位の国家になる」ことを目指した「次世代二次電池官民協議体」が発足した。この協議体は「国家戦略技術育成に関する特別法」の具体策として2023年4月に発表された3大主力分野の超格差研究開発戦略によるものである。世界的に技術覇権競争が熾烈(しれつ)になる中、先端産業の発展と安全保障のために国家の総力を結集して対応する必要があるとして、韓国政府は「半導体」「ディスプレー」「二次電池」を研究開発の3大主力分野に指定、今後5年間に官民合わせて160兆ウォンを投資する。さらに、産業界のニーズと意見を反映して積極的に新規研究開発を進め、人材養成と国際協力の基盤をつくるため、それぞれ協議体を発足して産学官が力を合わせることにした。

 次世代二次電池官民協議体は、韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)、Samsung SDI(サムスンSDI)、SK On(SKオン)のいわゆるKバッテリー3社と、科学技術情報通信部(「部」は日本の「省」に当たる)、産業通商資源部、韓国バッテリー産業協会、韓国電気化学会など、産学官を代表する企業と機関が参加する。科学技術情報通信部は「協議体の発足により産学官が常時協力し、次世代電池の世界1位国家を2030年よりも前倒しで実現できることを願う。政府も戦略的に研究開発支援を強化する」とコメントした。

 発足に当たっての記念イベントではLGエナジーソリューションのソン・グォンナム次世代電池開発センター長が開発状況について発表した。同社は、高容量リチウム硫黄電池や高分子系半固体・全固体電池の開発に重点を置いており、2030年までの商用化ロードマップを発表済みである。例えば、2028年には液体電解質を最小限にした高分子系全固体電池を量産、2030年には硫化物系全固体電池を実用的な水準に高めて商用化する。

 高容量リチウム硫黄電池に関しては、2027年に重量エネルギー密度が500wh/kgのセルを開発し、アーバンエアモビリティー(都心航空モビリティー)に適用する計画である。プラスチック素材の高分子を活用した全固体電池は既存のリチウムイオン電池の製造工程をほぼそのまま活用できることから、新規工程開発の負担が軽くなる。高分子固体電解質と酸化物系固体電解質をハイブリッド化することで性能向上を狙った取り組みもあり、液体電解質を一部混ぜた半固体電池を開発中である。安定性を高めるため液体電解質の割合を減らす研究を進めているという。

 全固体電池の商用化に向けて素材の研究にも力を入れていて、固体電解質の価格をより安くするために様々な企業と協力している。バッテリー分野のスタートアップに投資するバッテリーチャレンジや、世界の大学や研究機関を対象に開発費を支援するバッテリーイノベーションコンテストも実施している。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .7

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00090/

サムスンが米韓の自社イベントで2nmプロセスの細部にわたるロードマップを初披露

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は、2023年6月27・28日に米シリコンバレー、7月3・4日には韓国ソウルのそれぞれで、「Samsung Foundry Forum(SFF) 2023」と「Samsung Advanced Foundry Ecosystem Forum(SAFF) 2023」を開催した。

 Samsung Foundry Forumは半導体ファウンドリーの顧客向けに半導体技術と今後のロードマップを公開したり、パートナー企業が技術展示を行ったりするイベントである。一方のSamsung Advanced Foundry Ecosystem Forumは、サムスン電子のファウンドリーに協力しているパートナー企業が半導体エコシステムの発展に向けて集うフォーラムである。サムスン電子は両フォーラムを毎年秋に開催していたが、2023年は早期に顧客を誘致するためか6月末から7月初めに前倒しして開催した。同社は2022年6月に世界初とうたう「GAA(Gate-All-Around)」技術による3nmプロセスの先端半導体の量産を開始した。2024年には第2世代の3nmプロセス量産、そして2025年からは2nmプロセスの量産を目指している。

2nm以下プロセス量産のロードマップを発表

 サンノゼで開催されたSamsung Foundry Forum 2023では、「Innovating Beyond Boundaries」をテーマにAI(人工知能)時代の最先端半導体の限界を克服するとして、2nm以下プロセス量産のロードマップを重点的に発表した。

 サムスン電子は2025年にモバイル向け2nmプロセス(SF2)の量産を始め、2026年にはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けの量産、2027年に車載向けの量産を開始するという。最先端となるSF2プロセスは現在のSF3プロセスに比べて性能は12%、電力効率は25%向上し、面積は5%減少する。同社が2nmプロセスのロードマップを細部にわたって公開したのはこれが初めてである。その次となる1.4nmプロセスは既に発表している通り、2027年に量産を始める。韓国ではサムス電子が既に顧客を確保していて技術に自信を持ったということから、今回のロードマップ公開に至ったと分析する意見がある。

 2nmプロセスはサムスン電子以外に、台湾TSMC(台湾積体電路製造)が2025年の量産、米Intel(インテル)が2nm世代の「20A」を2024年上半期、続く下半期に1.8m世代の「18A」の量産をそれぞれ予定している。日本のラピダスは2025年に2nmプロセスの試作品生産と2027年の量産を目標にしている。

 このほかサムスン電子は2025年に8インチGaN(窒化ガリウム)の生産を始める。コンシューマーやデータセンター、車載向けである。次世代のパワー半導体とされるGaNは、現在のシリコン半導体の限界を克服し、システムの高速スイッチングと省電力を大幅に高められる。

 現在商用展開中の5G(第5世代移動通信システム)の次世代となる6Gに向けては、5nmのRF(Radio Frequency)プロセスを開発し、2025年上半期に量産する。5nmのRFプロセスは既存の14nmプロセスに比べ電力効率は40%以上の向上が見込め、面積は50%減少するとの期待がある。現在量産中の8nm、14nmのRFプロセスをモバイルや自動運転など様々な応用先に広げていく。

 サムスン電子はプロセスの拡大、2023年下半期の平沢(ピョンテク)工場第3ラインファウンドリーの稼働、2024年の下半期には米テイラー市の半導体工場第1ラインの稼働、現在造成中の韓国システム半導体国家産業団地の中に生産拠点を追加するなど、絶え間ない設備投資で安定した生産能力を確保、顧客の需要に積極的に対応するとした。サムスン電子の半導体を製造するクリーンルームの規模は2027年には2021年の7.3倍になる見通しである。

 同社はファウンドリー事業のパートナー、メモリー、パッケージ基盤、テスト分野の企業を集め、先端パッケージのアライアンスであるMDI(Multi Die Integration)を発足することも発表した。MDIの狙いは、異なる機能を持つ半導体を1つの半導体のように動作させるパッケージ技術である2.5D・3D異種集積パッケージ技術のエコシステムを構築して積層技術のイノベーションを続け、最先端パッケージをワンストップのターンキーサービスで提供することにある。サムスン電子はパートナーと一緒に最先端プロセスと異種集積パッケージ技術で設計の複雑度を最小限にできていると説明した。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .7

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00089/

サムスン半導体工場の設計図が海外流出、韓国産業界は技術流出犯罪の厳しい処罰求める

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 2023年6月12日、韓国大法院(日本の最高裁判所に相当)量刑委員会は同特許庁と同大検察庁が2023年4月に大法院に提出した「技術流出犯罪量刑基準整備提案書」を採択して、営業秘密国外漏洩をはじめ技術流出犯罪の量刑基準を見直すと発表した。

 韓国・全国経済人連合会(全経連)も6月8日、大法院に「技術流出犯罪量刑基準改善に関する意見書」を提出した。意見書は「半導体・二次電池・自律走行車など主力産業を中心に海外への技術流出が持続的に発生し、企業生存はもちろん国家競争力まで脅かしているが、処罰は低い水準にとどまっている」「米国は被害額に応じて最大33年9カ月の懲役刑、台湾は5年以上12年以下の懲役になるのに対し韓国は処罰が軽い」として技術流出犯罪をより厳しく処罰することを求めている。全経連の調査によると、2017~2021年に「産業技術の流出防止及び保護に関する法」の違反で起訴された81件の内、一審判決で有罪になったのは44件、さらにこの内執行猶予付きが32件、財産刑7件、実刑5件だった。

 産業技術保護法には国家核心技術を海外に流出させる目的で営業秘密を国外に漏洩した場合は3年以上の懲役と15億ウォン以下の罰金を併科するという条項があるものの、実際に実刑になる事例は非常に少なく抑止力がないというのが全経連の主張である。検察も産業界が受けた被害を考えるとより厳しく処罰すべきだという意見だった。大検察庁の調べによると2019~2022年に「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(不正競争防止法)、産業技術保護法を違反した技術流出事件の一審判決445件の内、実刑が宣告されたのは47件で、営業秘密海外流出犯罪の平均の量刑(懲役)は2018年が12.7カ月、2019年が14.3カ月、2020年が18カ月、2021年が16カ月、2022年が14.9カ月だった。

 韓国の技術を海外に流出させる事件は後を絶たない状況である。韓国・国家情報院が公開した資料によると、2018~2022年に摘発された産業開発技術の流出事件は93件、被害規模は約25兆ウォンに上る。摘発した事件だけの被害額のため、実際はもっと多いとみられている。

 最近の事例としては、2023年4月、海外企業に転職するため韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の半導体超微細工程技術を流出させたとして産業技術保護法の違反、不正競争防止法違反で起訴されたエンジニアの一審判決があり、当該エンジニアは懲役1年6カ月、執行猶予2年、罰金1000万ウォンとなった。ソウル中央地方検察庁はサムスン電子の被害を考えると量刑が軽すぎるとして懲役5年に罰金1億ウォンを求めて控訴した。

 2023年2月にはサムスン電子の子会社SEMESの機密情報を不正に入手して半導体製造装置を製作、中国に輸出したことで産業技術保護法の違反、不正競争防止法違反で起訴された元研究員らの一審判決があり、主犯格の元研究員は懲役4年、元研究員が設立した法人は10億ウォンの罰金となった。産業界は「数百億ウォンの利益を上げたのに対し罰金は10億ウォン。リスクより利益が大きいままでは技術流出を抑制できない」と反発した。一方で、技術流出の裁判ではほとんどが初犯で技術が海外に渡る前に身柄を拘束されるなど、未遂で終わるケースが多いため刑が軽いという分析もある。

 半導体生産拠点を自国に誘致しようと世界各国が競争する中、産業界に限らず韓国メディアも「処罰が厳しくないから繰り返し流出事件が起きる」と厳しく報じている。サムスン電子半導体工場の設計図をコピーして中国に半導体工場を建てようとした技術流出未遂事件も起こった。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2023. .6

-Original column

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