[日本と韓国の交差点] 韓国で、国民IDを含む個人情報がまたも大量流出

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韓国のクレジットカード会社3社(KB国民カード、ロッテカード、NH農協カード)が1月20日、住民登録番号(国民ID)や金融機関の口座番号を含む顧客の個人情報が外部に漏れていたと発表し謝罪した。

 各クレジットカード会社が確認したところ、各社ともほぼすべての個人情報――KB国民カード5300万人分、ロッテカード2600万人分、NH農協カード2500万人分――が流出。重複している分を除いても、その数は約2000万人分に上る。クレジットカードを使っているほとんどの韓国人の個人情報が盗まれたと言える。これまでにも氏名、住民登録番号、電話番号、住所といった個人情報が漏れる事件が何度もあったが、口座番号や金融信用等級といった個人の金融情報まで流出したのはこれが初めてである。

 この事件は、ハッキングではなく、クレジットカード会社の内部から漏れた。クレジットカード3社が使用する不正使用検知システムの構築を担当したセキュリティ会社の社員が、2012年10月から2013年12月まで1年以上にわたって顧客の個人情報を盗み、ブローカーに売却。ブローカーは個人情報を貸出募集人やマーケティング会社に転売した。

 韓国の銀行は貸出募集人を雇用している。これは、獲得した貸出の額に応じて歩合で給料がもらえる非正規職員だ。貸出募集人は不法なものと知りながらも、個人情報や金融情報を購入してお金を必要としている人を探し、電話やメールで勧誘する。クレジットカード会社も同様。非正規職のカード募集人がいて、カード申請枚数に応じて給料を受け取る。勧誘のため、個人の金融情報を手に入れたがる。

 この社員は顧客の個人情報を容易に盗むことができた。クレジットカード3社は個人情報を暗号化していなかったからだ。この社員はシステムを開発するふりをして顧客の個人情報のデータベースにアクセスし、自分のUSBメモリーに個人情報をコピーして持ち出した。

解約と再発行の申し込みが殺到

 各クレジットカード会社は、個人情報が流出したかどうか顧客が自分で確認できるホームページを用意している。筆者も確認してみたところ、クレジットカード番号と暗証番号を除いて、クレジットカード会社が持っているすべての個人情報が流出していた。具体的には、氏名、住民登録番号、住所、自宅電話番号、携帯電話番号、勤務先の名称と住所・電話番号・役職、クレジットカード使用可能額、金融信用等級(信用格付け、クレジットカード使用額や銀行の貯金額などから格付けする)、クレジットカード決済口座の番号などだ。

 筆者の個人情報を知り尽くした振り込め詐欺の電話が2度もかかってきておかしいと思っていた矢先だった。ここまで個人情報が流出すれば、筆者になりすますことができる。いつどこでどんな犯罪に巻き込まれるとも限らない。なんとも不安だ。

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[日本と韓国の交差点] え、サムスン製のテレビなのに米国で買った方が安い?!

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韓国の企画財政部(部は省)、産業通商資源部、関税庁は1月13日、輸入品の高すぎる価格を是正するため、2014年3月から並行輸入の拡大を促すと発表した。並行輸入できる品目と業者を増やすことで、輸入業者間の競争を起こし、輸入品の価格を今より下げることが狙いだ。

 並行輸入は、海外の小売店やディスカウントショップなどで販売している商品を買い付け、韓国で販売する方法。1995年から合法となった。それまで、韓国に進出している海外ブランドのほとんどが、韓国内で独占販売権を持つ正規輸入業者を指定し、並行輸入品は「正品」ではないと宣伝していた。正規輸入業者は、FTA(自由貿易協定)によって関税が安くなってもウォン高になっても、「ブランド本社の方針」だと主張して値下げをしてこなかった。企画財政部は輸入品流通の独占構造をなくし、並行輸入品市場が定着するよう後押しすることを決めた。

 企画財政部は並行輸入を拡大させるべく、次の措置を取る。「該当商品の本社ではなく、米ウォールマート・ストアーズや米コストコなど米国の大型ディスカウントショップから大量輸入することで値段を安くする」「並行輸入業者を認定する際の基準を緩和する」「輸入品の通関のために必要な検査手続きを簡素化する」。

米国サイトで買えば関税もマージンもなし

 韓国政府が輸入品の価格を下げようと動き始めた背景には、国境を越えたネットショッピング、いわゆる「直購」の拡大がある。

 韓国では2012年から、海外から商品を直接取り寄せる人が増えた。特に人気なのは、米国のネットショッピングサイトである。韓国にいながら米国のネットショッピングサイトで商品を注文し、韓国に海外配送してもらう。これを「直購」と呼ぶ。

 海外配送をしていない商品は、米国内に住所がある配送代行事業者のところへいったん届けてもらう。配送代行事業者は商品を受け取り、韓国にいる注文者の住所へ送る。配送代行事業者は現在、検索サイトに登録されているだけで150社を超えた。

 配送代行事業者大手のモールテール社の売上高は、2011年には114億ウォン(約11億円)だったものが2012年には211億ウォン(約20億円)に伸びた。2013年は400億ウォン(約39億円)を超えそうだという。配送代行事業者の多くは米国だけでなく日本にも進出している。韓国で購入するより日本で購入した方が安い有名ブランド品もあるからだ。

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[日本と韓国の交差点] 韓国の北端にある田舎の祭りが大ヒット

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 ソウルから車で北へ3時間。北朝鮮との休戦線(38度線)から近い江原道(道は日本の県にあたる)華川(ファチョン)郡が今、韓国で大きな話題になっている。「韓国で最も早く川が凍りつく」ことぐらいしか自慢するものがないこの地域に、韓国内外から100万人を超える観光客が集まるようになったからだ。

 華川郡は山岳地帯で、郡面積の90%が山と川。残り10%に畑と住宅がある田舎である。韓国人にとっては「何もないところ」というイメージが強い。年平均気温は摂氏10.8度、冬は氷点下10度ぐらいの日がずっと続く。このような環境ゆえ農業で生計を立てるのは難しい。企業誘致も困難だ。華川郡の人口は約2万4000人。華川郡に駐屯する軍隊に所属する軍人は約3万人で、住民より軍人の方が多い。住民のほとんどは農業の傍ら軍人向けの食堂やコンビニなどを営んでいる。

 華川郡は地域経済を活性化させるべく、2003年からサンチョンオ(山川魚、日本ではヤマメ)祭りを開催し始めた。1月第1週目の週末から3週間ほど続ける。サンチョンオという川魚を釣る氷釣りが祭りのメインだ。華川郡を流れる華川川が凍ると、そこに穴をあけてサンチョンオを釣る。

 2003年に開いた第1回に訪れた観光客は22万人だった。これが徐々に増え、2006年からは毎年100万人を超えるようになった。東亜日報によると、地域住民の間では「華川郡にこんなに人が集まったのは、韓国戦争(朝鮮戦争)の時に中共軍が攻めてきた時以来」と言われている。住民たちもサンチョンオ祭にこれほどの人が集まるとは思っていなかったようだ。

 2014年のサンチョンオ祭りは、1月4日の初日に15万人の観光客が訪れ、華川川の上は足の踏み場もないほどだった。この様子を、米ウォールストリート・ジャーナルのオンライン版が「冬の名物」として写真入りで掲載した。(Photos of the Day: Jan. 5 の3番目の写真

 華川川の水深は2メートルほど。氷の厚さは40センチにもなるので、氷が割れて人が溺れる危険は少ない。サンチョンオは冷たくて奇麗な川にしか住めない魚なので、今は天然ものが獲れなくなってしまった。このため、祭りの間は、養殖のサンチョンオを1日3回、川の下に流す。平日は約2.5トン、週末は10トンほどだ。

 会場に入るには入場料が必要。大人1人1万2000ウォン(約1200円)を払うと、5000ウォン(約500円)分の買い物券が付いてくる。買い物券は、会場内の売店で売っている華川郡の農産物を買ったり、郡内のお店で買い物したりするのに使える。会場には素手でサンチョンオを捕まえるイベントや、幼児向けのソリもあり、家族全員が楽しめる。獲ったサンチョンオはその場で食べられる。バーベキュー場に持っていき1匹当たり1500~2000ウォン(約150~200円)払うと、焼き魚や刺身にしてくれる。

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[日本と韓国の交差点] 朴大統領が就任後初の記者会見~景気回復と南北統一を強調

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2014年年明け早々韓国で話題になっているのは、就任2年目を迎えた朴槿恵大統領が1月6日、就任以来初めて記者会見を行ったことである。野党の民主統合党や正義党はずっと「朴大統領は自分と違う意見を持つ人とは話したがらない」「朴大統領は不通(話が通じない)大統領だ」と批判してきた。

 記者会見は、朴大統領の国政構想に関する発表から始まった。朴大統領が強調したのは、景気回復と北朝鮮との統一だった。朴大統領は「統一は、韓国経済が一層跳躍できるチャンスである」と述べた。「経済革新3カ年計画を成功させ、3年後には潜在成長率4%、1人当たり国民所得4万ドル、雇用率70%を達成する」「統一時代を切り開くための基盤を構築する」。

 「経済革新3カ年計画の推進戦略として、(1)財政・税制改革、(2)創造経済による革新経済の創造、(3)内需を活性化して内需と輸出のバランスが取れた経済を進める」

 財政・税制改革の具体策は、政府補助金の不正受給をなくすことと、公共企業の放漫な経営をなくすことだ。革新経済の創造は、既存産業にICT(情報通信技術)と科学技術を融合して新しい製品・サービスと雇用を生み出すことを指す。環境とエネルギー問題を解決することも重要だ。内需を拡大し、輸出とのバランスを図るため、5大有望サービス産業――保健医療・教育・観光・金融・ソフトウェア――を集中的に育成する。中小企業の輸出競争力強化し、投資を増やすため、投資関連規制をすべて白紙に戻して再検討することも進める。

 「2015年で(南北)分断から70年になる。韓国が世界で一段階上に跳躍するためには、南北の対立と戦争威脅、核威脅から抜け出し、韓半島(朝鮮半島)統一時代を切り開かないといけない。そのための準備を始めるべきである」「(南北に分かれた)離散家族が再会できるようにする。これが南北間の対話のきっかけとなることを希望する」

円安に対する特別な施策は取らない

 朴大統領は記者会見の質疑応答で「円安ウォン高に対する措置」「統一に向けた具体的な措置」「日本、中国との関係」などについて答えた。

 円安ウォン高で価格競争力が落ちている韓国企業に対する特別な支援は考えていない。「企業が原価節減とリストラで競争力を高め、より積極的に海外市場を開拓すれば危機をチャンスに変えられる。円安が韓国経済の負担要因であるのは事実だが、韓国はFTA(自由貿易協定)強国なので、企業はFTAを活用して輸出競争力を確保してほしい。政府は中小企業・中堅企業が輸出を拡大できるよう支援する。内需を拡大して内需と輸出のバランスを取る」と説明した。

 統一に向けた具体的な措置に関しては、「統一費用がかかりすぎることから、『統一をする必要があるのか』と考える国民が多いようだ。しかし私は、統一はデバク(韓国の流行語で最高、大ヒット、大儲けするという意味がある)だと思っている。統一は韓国経済が一層跳躍するためのチャンスである」

 「韓半島の平和と統一の準備のために必要であれば、北朝鮮の指導者といつでも会う。この立場は変わらない。ただし、会談のための会談になってはならない」

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[日本と韓国の交差点] 朴大統領のピンチを靖国参拝が救った?

 韓国メディアが安倍晋三首相の靖国神社参拝を一斉に報じた。駐日米国大使館が「失望した」との声明を出したことを受けて、「米国はやっぱり韓国の味方」「日本が歴史問題について謝罪しないかぎり首脳会談しても意味がないという朴大統領の外交戦略は正しかった」といった記事が相次いでいる。

 韓国の保守派を代表する朝鮮日報は12月27日、朝刊1面に安倍晋三総理の写真を大きく掲載し、「軍国の心臓を参拝。安倍、一線を超えた」という見出しを付けた。同じく保守の東亜日報も27日朝刊で、「韓国人の胸に釘を打った(韓国人の心を傷つけた)」と報じた。その他の進歩派の新聞や地上波テレビ局のニュース番組も、安倍総理の靖国神社参拝を強く非難するニュースをトップに据えた。

 朝鮮日報は28日朝刊でも1面の3分の1を割いて、「一人ぼっちになった安倍」という記事を掲載した。その下には、「安倍総理は『靖国神社参拝に反対するのは韓国と中国だけだ』と言うが、米、ヨーロッパ、ロシアも安倍総理の靖国神社参拝を非難する声明を発表した」と伝えた。韓国政府が、米・中・東南アジア諸国と協力して、靖国問題に対応する方針であることも報じた。

 他の韓国メディアも、欧米メディアの記事を引用しながら、「安倍総理が靖国神社に参拝したことにがっかりし、怒りを感じるのは韓国と中国だけではない」ということを強調している。

 実際、駐日米国大使館は12月26日、安倍総理の靖国神社参拝について「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」と声明を発表した。韓国のメディアも日本のメディアも、これを異例のことと分析した。27日には米国務省も日本に失望したという内容の声明を発表した 。

 韓国メディアは、小野寺五典防衛相とヘーゲル米国防長官が12月27日に予定していた電話会談が米の意向で中止になったことについても、安倍総理の靖国神社参拝が影響していると報道。「日本は米国が自分の味方になってくれると思ったようだが、それは誤算」だと分析した。また、国家安全保障局の初代局長に内定している谷内正太郎氏が米ワシントンを訪問する予定で、今回の靖国神社参拝問題をなんとか収拾しようと慌てているとも報じた。

 菅義偉官房長官は27日の記者会見で、「安倍政権の歴史認識や外交姿勢に変化はない。総理自身が謙虚に礼儀正しく誠意を持って関係各国に説明し、理解を求めていく」と話した 。

韓国の主張は正しい~韓米関係が一気に改善

 日本の総理や政治家が靖国神社を参拝することに韓国が反対するのは、靖国神社が第二次世界大戦のA級戦犯を合祀しているからだ。靖国神社以外にも戦没者を追悼できる場所はあるのに、わざわざ靖国神社を「首相参拝」したのは、「韓国人と第二次世界大戦で被害を受けた人の心を傷つけるためだ」と思ってしまう 。

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[日本と韓国の交差点] 2013年韓国の流行語は「創造経済」

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韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が掲げる国家経済戦略は「創造経済」である。同大統領は数々の新規政策を発表している。そのすべてが「創造経済」という枠の中で動いている。

 朴大統領は創造経済を担当する新官庁として、「未来創造科学部」を2013年4月に立ち上げた。同大統領が「未来創造科学部に韓国の未来がかかっている」と発言したため、韓国の全省庁の中で「未来創造科学部」が最もパワーのある省庁とみなされるようになった。韓国の主な経済政策にはすべて未来創造科学部が関与している。

 未来創造科学部は創造経済を次のように定義している。

「創意力を経済の核にして、新しい付加価値・雇用・成長動力を生み出す経済」 「国民のアイデアとICT(情報通信技術)・科学技術を融合することで、イノベーションが起こり、新しい市場が生まれ雇用が増えること」

 朴大統領は、「韓国は今まで先進国を追いかける立場だったが、これからは他の国をリードする立場になる」ことを目指している。このため大手企業に対して追いかけるのではなく世界市場をリードするよう要求している。それを後押しするための政策が創造経済というわけだ。

 朴大統領のスローガンに合わせて、他の省庁や自治体も、政策名に「創造経済」の文字を入れるようになった。「創造経済実現のための○○政策」という具合だ。大学も「創造経済フォーラム」「創造経済に向けた○○研究」という名前をつけることが増えた。民間企業まで「創造経済のための新商品開発」と謳うようになった。「創造経済」は流行語といっても過言ではないくらい韓国中に広がった。

 野党は「政策の中身はそのままで名前だけ創造経済に変えた」「創造経済という言葉だけが一人歩きしている」と批判的だが、産学官が「創造経済」をキーワードにしてここまで一致団結するのはすごいことだ。

国民からアイデアを募集

 こうした動きがある一方、国民の間には「創造経済と言われても、それが何なのかよく分からない」という意見が多かった。こうした指摘を受けてのことだろうか、未来創造科学部は2013年9月にサイバー展示館をオープンさせた。「創造経済とはこういうものだ」という事例――電子政府、ヘルスケア、スマート教育、スマート電力など――を紹介している。

 創造経済の柱は国民のクリエイティブなアイデアだということで、未来創造科学部は創造経済に参加するよう国民にも呼びかけている。未来創造科学部は、「創造経済タウン」と呼ぶウェブサイトを運営し始めた。国民がアイデアを書き込むと、それを選別してビジネスにできるよう支援するものだ。

 未来創造科学部は12月、「創造経済博覧会」も開催した。創造経済タウンに投稿されたアイデアをから生まれたビジネスの製品などが体験できる。博覧会には朴大統領も出席し、「創造経済を実現するための戦略をより具体化し、持続的に支援する」と強調した。

 未来創造科学部はサムスン電子と共同で、高校生と大学生を対象に「Tomorrow Solutions」というコンテストも始めた。これは官民が協力して創造経済を実現するためのアイデア発掘と人材育成を目指すものである。

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[日本と韓国の交差点] 韓国の観光産業は中国人依存

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先日、日本のポータルサイトでニュースを読んでいて驚いた。海外から日本を訪問した外国人観光客数が、2013年に史上初めて1000万人を突破しそうだという記事があったからだ。とっくに年間1000万人を超えていると思っていた。日本には東京ディスニーランドや京都など観光名所が多くある。レベルの高いおもてなしも提供している。

 日本政府が進める「外国人観光客年間1000万人誘致」目標に関する報道は、外国人観光客が増えた要因として共通して以下を挙げている――円安と格安航空会社の日本路線増加、東南アジアに対して観光ビザの発給要件緩和。

 確かに円安と格安航空会社の影響を強く感じる。格安航空会社の早期予約割引を利用すれば、ソウル・東京の往復チケットを2万円前後で購入できるようになった。飛行時間は1時間40分程度で時差もないので、国内旅行と変わらないほど気軽に日本に行くことができる。日帰りだって可能だ。

 韓国のあるバラエティー番組は、うどんを食べるためだけに東京へ、ラーメンを食べるためだけに札幌へ日帰り旅行に行く韓国のお金持ちを紹介していた。円安なので、食べ物については、韓国より日本の方が安く感じられる時もある。牛丼280円なんて韓国では想像もできない安さだ。

 日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客数」統計によると、2013年1~10月までに日本を訪問した外国人観光客は全体で約866万人。中国人観光客は減少したものの、アジアからの観光客が総じて大きく伸びたことがこれを補い、日本を訪問した外国人観光客数は前年比23.4%増えた(関連情報)。

 内訳を見ると、日本を訪問する外国人観光客数の1位は韓国だった。約866万人のうち約210万人を占めた。2位は台湾からの観光客で約188万人、3位は中国人観光客で約112万人だった。

市民ボランティアが観光客をお手伝い

 日本政府観光局(JNTO)が公開している外国人観光客数が多い国ランキング(2012年)を見ると、日本は835万8000人で33位、韓国は1114万人で23位だった。日本を訪れる外国人観光客数より、韓国を訪れる外国人観光客数の方が多いことにまた驚いた。韓国統計庁のデータを見ると、韓国を訪問する外国人観光客は2013年も1100万人を超える見込みだ。

 外国人観光客を増やすため、韓国政府はかなりの予算を注ぎ込んできた。文化体育観光部(部は省)は毎年、外国人観光客と海外の旅行代理店を対象にアンケート調査を実施し、韓国旅行の不満を改善してきた。

 韓国では2011年、外国人観光客が増えたのにホテルの数が追い付かず問題になったことがある。例えばテレビのニュース番組がこんな報道をした。ある中国人団体ツアー客がソウルを訪れた。しかしソウル市内のホテルが満室で取れなかったことから、ソウル郊外のホテルに宿泊。毎日バスで片道1時間以上かけてソウル観光に出かけた。このままでは外国人観光客が韓国に来たくても来られないと指摘した。

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[日本と韓国の交差点] 韓国TPP交渉への参加~「実質的には韓日FTA」との批判も

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韓国政府が11月29日、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加への関心を表明した。関心表明に至るまでは長い時間がかったが、決めたら後はパリパリ(早く早く)精神が稼働。韓国政府はTPP交渉に参加するための手続きを猛スピードで進めている。

 具体的には、既にTPP交渉に参加している国との2国間予備協議を始めた。12月3~6日にはインドネシアで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議の場で、12月7日からはシンガポールで開催されているTPP閣僚会議の場で、いくつかの国と接触した。韓国がTPP交渉に参加するためには、先にTPP交渉に参加している12カ国の同意を得る必要がある。

 12月5日には、TPP交渉参加国であるオーストラリアとの間でFTA(自由貿易協定)について合意した。2010年5月以降、交渉が中断していたが、2013年11月から交渉を再開し、1カ月余りで妥結した。韓国とオーストラリアの国会が批准すれば、正式にFTA締結となる。

 オーストラリアとのFTAによって、韓国は牛肉市場を開放する代わりに、自動車と家電をオーストラリアに輸出しやすくなる。産業通商資源部は、交渉が続いているニュージーランド、カナダとのFTAもなるべく早く締結する方針だ。同部は「特にカナダとのFTA交渉はもうすぐ妥結しそうだ」と発表した。

 韓国政府は、TPP交渉に参加している国と韓国がFTAを締結すれば、韓国のTPP交渉参加を断ることはないと判断したようだ。韓国はTPP交渉に参加している多くの国――米国、ペルー、チリと2国間FTAを、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアとは韓=ASEAN FTAを締結している。TPP交渉参加国でFTAを結んでいないのは日本とメキシコだけだ。

中国の反応を慮かってきた

 韓国政府はこれまでTPP交渉に参加するかどうか、なかなか決められずにいた。韓国は、安全保障は米国に、経済は中国に依存している。同政府としては、中国がけん制するTPP交渉に参加することで中国の機嫌を損ねるのではないか、という悩みがあった。

 韓国の複数のメディアは、「韓国政府は2013年3月ぐらいから米国の勧誘を受けて交渉参加を決めた。10月には、TPP交渉に参加することを中国に知らせた」と報道している。

 次のように分析する記事もある。
 「2013年4月、日本がTPP交渉に参加することが承認された。多くの国とFTAを締結している韓国より日本の方が、有利な条件で貿易ができるようになる。これをけん制するために韓国もTPP交渉に参加することにした。このままでは韓国だけ取り残されてしまう」
 「韓米同盟を確固たるものにするため、バイデン米副大統領の訪韓前にTPP交渉参加への関心を表明した」
 「中国が防空識別圏を設定したことを受け、中国に抗議するため、米国が主導するTPP交渉参加への関心を表明した」

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[日本と韓国の交差点] 韓国、この冬のヒット商品はプチプチ

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今週、韓国のテレビニュースで「ポクポギ」、日本では「プチプチ」と呼ばれるエアキャップが話題になった。エアキャップは本来、商品が割れないように包むために使うものである。ところが去年から、エアキャップを窓に貼ると断熱効果があるという話が主婦コミュニティを中心に口コミで広がった。この冬は、エアキャップが飛ぶように売れているという。

 使い方はとても簡単で、窓ガラスに水をスプレーしてエアキャップを貼るだけである。窓ガラスが冷えて室内にまで寒気が伝わるのを防止でき、室内温度が3度ほど高く保つ効果あるそうだ。結露した水滴が床に落ちるのも防止できる。マンションの廊下にある水道のメーターが凍って破裂するのを防止したり、水道管が凍るのを防止したりするためにも使う。

 エアキャップは値段が安く、2000円もあれば4LDKの家中に貼れる。日本ではだいぶ前から、結露した水滴が落ちるのを防止するシートや断熱効果のあるビニールシートがたくさん売られていた。日本の節約の知恵が韓国に広がったのかもしれない。

エアキャップの売り上げ拡大が“けんか”のタネに

 ニュースになったのは、エアキャップがあまりにも売れすぎて、宅配業界とエアキャップを販売するインターネットショッピングモールとの間でトラブルが発生したからだった。韓国ではエアキャップを縦1メートル×横20メートル単位で購入する人が多い。家中の窓にエアキャップを貼るためにはこれぐらいの大きさが必要だからだ。インターネットショッピングモールは、巨大なトイレットペーパーのようにエアキャップをぐるぐる巻きにしてビニールに入れて宅配便で届ける。

 問題は、エアキャップはとても軽いがサイズが大きく、宅配会社の配送トラックの荷台をすぐ埋め尽くしてしまうことだ。韓国の宅配会社は、大きな家電でない限り、距離に比例して料金を設定している(郵便局はサイズと距離の両方で料金が変わる)。サイズの大きいエアキャップでもサイズの小さい本でもソウル市内であれば配送料金は約250円と変わらない。

 宅配会社の立場からすると、一便のトラックで通常なら100個分の配送料がもらえるところ、エアキャップばかりだと30~40個分しかトラックに載せられない。当然のことながら利益が減る。そのためエアキャップの配送を断る宅配会社や、特別料金を請求する宅配会社が現われたのだ。

 インターネットショッピングモール側は「エアキャップの注文は多い日で1日1万件もある。配送を断るなんて困る」と反発している。韓国の最大インターネットショッピングモール「Gマーケット」によると、11月1~25日の間、エアキャップの販売量は前年比2倍近くに増えたという。大型ディスカウントショップ「EMART」でも11月1~25日までエアキャップが前年比3.5倍も売れたという。

 ニュースは、宅配会社の事情は分かるが、だからといって突然一方的に配送を断るのは問題だ、と結んでいた。

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[日本と韓国の交差点] 虎の飼育場が追い出し部屋!?

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11月24日、ソウル市が運営するテーマパーク「ソウル大公園」内にある動物園で、飼育員が虎に首を噛まれ意識不明の重体になる事故があった。飼育員が飼育場を掃除しようと入ったところ、虎を隔離していた別の部屋のドアが開いてしまい、虎が飛び出して飼育員を襲った。

 事故を起こしたこの虎は、3歳のオスで体重180キログラム。ロシアのプーチン首相(現在は大統領)が2011年、韓国・ロシア修交20周年の記念に贈ったものである。

 この飼育場には猛獣がいるにもかかわらず監視カメラがなく、飼育員が事故に遭ったことに誰も気付かなかった。偶然通りかかった売店の人が見つけて通報したという。

 警察と救急隊が駆けつけた時、虎は飼育場の外にある飼育員が通る通路に座っていた。来場者がいる場所と虎の間には1.4メートルの高さの柵しかなかった。虎が十分飛び越えられる高さだ。もし虎が興奮して柵を飛び越えた場合、ソウル大公園内にいた来場客まで事故に巻き込まれる可能性があった。事故があった11月24日日曜日の午前、ソウル大公園内には既に1092人の来場客がいた。虎は、後から到着したパトカーのサイレンに驚いて自分の足で飼育場に戻ったという。

 この事故が報道された時、韓国メディアの記事やそれへのコメント欄には、「虎が飼育員を襲ったのは、飼育員が掃除のため飼育場に入る際にマニュアル通りに行動しなかったからではないか」とする意見が多かった。利便性を優先するあまりマニュアルを守らない韓国人の仕事ぶりを問題にするものだった。しかし、11月25日にソウル大公園が記者会見を開いたのを契機に、非難の矢はソウル大公園に向けられるようになった。

研修もなく虎担当に異動

 記者会見でソウル大公園長と動物園長は以下の説明を行った。

 事故に遭った50代の飼育員は、1987年ソウル大公園に入社し、昆虫飼育場を26年間にわたって担当していた。昆虫研究で博士号を持つほどの専門家であった。本人は昆虫の飼育担当を続けたいと希望したが、ソウル大公園側はこの飼育員を2013年1月から虎の飼育場へ異動させた。

 ソウル大公園側は、「入社27年目の飼育員は動物園のことは何でも知っているはずだ」として、虎を扱うための安全教育を行うことなく、人事異動の翌日から虎の飼育場で仕事をさせた。虎の飼育係用のマニュアルはなく、前任の飼育員が虎の好む餌について口頭で説明しただけだった。韓国には飼育員資格制度がないため、何の教育もしないまま猛獣の飼育を担当させても法律違反にはならない。

 虎の飼育場に入る際には2人1組で行動することになっている。しかしこの日、飼育員が足りないという理由で、被害に遭った飼育員は1人で虎に餌をあげ掃除をしていた。

 ソウル大公園側は、飼育員を襲った虎を隔離することなく、事故後も展示場に入れて一般に公開していた。来場客から抗議を受けて、やっと虎を飼育場に戻した。ソウル大公園は記者会見で、猛獣が飼育場を飛び出した場合を想定した避難マニュアルはなく、来場客向けの避難所もないと明かした。虎が飼育場を飛び出して公園内に出た場合、来場者は公園の外へ逃げ出すほかに方法がない。ソウル大公園動物園は韓国で最も大きな動物園で、面積は242万平方メートルもある。逃げ切れる保証はない。

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